薄白い朝の光
枕元には、近藤勇、土方歳三、井上源三郎 同門の兄弟子3人が残された。
土方がぽつりと言う。
「昼も夜も働かせてしまった。
隊士の面倒、町の警備、稽古……」
言いながら、途中で口を閉じた。
近藤が、かすかに息を吐いた。
「……俺のせいだ」
間が空く。
「…無理をさせた」
静まりきった室内
浅い苦しげな息の音だけが聞こえていた。
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土方は腕を組み、柱にもたれている。いつもの冷徹な副長の顔はない。唇を噛み、視線を伏せている。
「どれくらい止まってやがった……」
答えはない。
井上は静かに経を唱えるように祈っていた。
まんじりともせず、三人は座り続けた。時折、沖田の胸に目をやり、呼吸を確かめる。
浅い。だが、ある。
長い 夜の果てに――ようやく沖田の呼吸が落ち着きはじめた。
布団の上で眠る沖田総司の胸は、まだ浅いながらも規則正しく上下している。
やがて――
障子の向こうが、うっすらと白み始めた。
鳥の声。
そのときだった。
「……ん……」
かすかな音。
三人の顔が同時に上がる。
沖田のまぶたが、ゆっくりと震えた。
「総司!」
近藤が身を乗り出す。
ゆっくりと、焦点の合わぬ瞳が開く。
朝の光が、その黒い瞳に映る。
「……総司、わかるか」
わずかに、うなずいた。
土方が、ふっと息を吐く。
井上の目に、涙がにじんだ。
近藤は沖田の手を取り——
強く、握り締める。
夜が明けた。
長い夜だった。
土方は背を向けたまま、低く言う。
「……良かった」
屯所は、何事もなかったかのように動き始める。
巡察の報告。町方との折衝。奉行所からの呼び出し。
「局長、判断を」
次々と差し出される書状。
隊は止まらない。
近藤は筆を取る。
だが――
指が、わずかに震えている。
奥の部屋では、沖田がまだ熱に浮かされている。
斎藤、原田 永倉 は昨夜に続き、今朝も 巡察にでかけている。
街は常に動いている
奥では、まだ浅い呼吸が続いている。




