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驚愕

「はい。私が今勤務しているバス会社は、父がドライバーとして勤務しています。私が前職を退職した時に、父が事務員で紹介してくれたんです」


「そうだったんだ…」


 正木が三枝を見つめた。


「実は、当社では無理な勤務が横行しています。父もそのうち大きな事故を起こすのではないかと心配で…」


「そういえば、あなたのお勤め先を伺ってませんでしたね」


「『希望観光バス』と申します」


 福寿は、はっとした。瞳と出かけた際、運転士が疲労困憊していたあの会社だ。福寿は三枝に、自分が見た光景を伝えた。


「それ、きっと父です」


 福寿と正木が顔を見合わせた。


「看護師さんに声をかけられた、と話していました。先日父は疲労が祟ったのか、車庫内で軽い物損事故を起こしました。でも父だけではなく、ドライバー全体にもう限界を超えていると思うんです」


「かなり危険な状況ね…ハインリッヒの法則」


「ハ、ハイン…?すみません、先生」


 正木が手を上げた。


「『ハインリッヒの法則』ね。一件の重大事故の裏に、29件の軽微な事故、300件のヒヤリ・ハットが存在するというもののことよ」


「ということは、重大事故は偶然ではないということですか…」


 正木が眉をひそめる。


「そう、必然ということ」


「あの…先生」


 三枝が福寿を見る。


「私は運行管理の補助も行なっているのですが、改ざんを命じられる事もありまして…犯罪に加担しているような気がして」


 そう言うと、三枝は俯いてしまった。


「良かったら、コーヒー飲んで。あなたが私に相談して下さった事、秘密は守るから。安心して」


 福寿が微笑むと、三枝がコーヒーを口に運んだ。


「愛ちゃん、これ食べて」


 正木が皿に盛った茶菓子を運んできた。

 三枝はカバンから、一冊のノートを取り出した。

「先生、これは私が個人的に記録していた父の点呼記録です。例えばこの日、会社の運転日報には『8時間の休息を取った』ことになっています。でも実際には異なります」

 そのノートを福寿が手に取り、ページを捲り、目にした内容に驚愕する。

「え…何これ…」


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