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義元英雄伝  作者: 日向 守
上洛編

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第七十九話 長慶再起 九


一方、京への街道を北上していた今川義元の本隊に、緊張が走った。

前方、街道の先から土煙を上げ、一隊がこちらへ向かって「逆走」してくるのが見えたからだ。


「……敵か!? 三好長逸の軍勢が回り込んだか!」


柴田勝家が槍を構え、兵たちが身構える。だが、近づいてきたのは水色の桔梗紋。芥川山城を落とした明智光秀であった。


「十兵衛、何故ここに? 二条御所の守りを固めておるはずではなかったか」


「義元公! ……実は、御所にこのような矢文が」


光秀が差し出したのは、小さな文であった。そこには、「長慶健在」とのみ記されている。

義元の傍らにいた竹中半兵衛が、その文を覗き込んだ瞬間、その端正な顔がわずかに強張った。その独特の筆跡に、あまりにも強い見覚えがあったからだ。


(これは……まさか、あの御方が?)


半兵衛は言葉を飲み込んだ。それが誰の手によるものか、確証はある。だが半兵衛はただ沈黙を守った。義元は矢文を一瞥すると、光秀の瞳を見つめ返し、深く頷いた。


「十兵衛。その文の内容、真実だ。元康は今、茨木城の門前で数倍の三好勢を相手に泥を啜っておる」


義元は名刀、宗三左文字の鞘を鳴らし、厳かに命じた。


「十兵衛、命じる。其方は、追撃してくる松永の軍勢を迎え撃て。余が京へ帰還するまでの間、松永勢を断じて通すな。そして必ずや元康を生還させよ。あやつは、これからの今川の法に欠かせぬ男だ」


「はっ! 命に代えましても、元康殿を救い出し、松永勢を食い止めましょう!」


光秀は、主力の脱出を確認するや、孤立している元康を救い、かつ追撃してくる松永軍を食い止めるべく、軍を進める。


街道を逆走した光秀は、義元の背後を執拗に追撃してきた松永久秀・内藤宗勝の軍勢の前に、速やかに軍を展開した。


「ここから先、黄金の法のみを通す道。貴様らを一歩も通しはせぬ!」


光秀率いる明智隊が、追撃の松永勢を正面から押しとどめる。久秀は、突如として現れた光秀に眉をひそめた。


「……水色桔梗、京からの援軍だと?長逸は何をしておった!」


松永軍と明智軍が街道で激しい火花を散らす、その背後から泥にまみれ、傷つきながらも、死地を脱した元康と三河衆が姿を現した。


「元康殿! 無事か!」


「十兵衛殿……! 恩に着る!」


光秀は松永軍の執拗な攻めを冷静に捌きながら、元康の退路を確保し続けた。本多忠勝が光秀の陣を横切る際、無言で力強く頷き、石川数正が負傷者を光秀の陣の奥へと送り届ける。


しかし、三河衆の損害は甚大であった。負傷者を抱え、泥に足を取られる彼らの退却速度は遅い。


「……元康殿、先へ。ここからは某が引き受けます」


光秀は、元康と傷ついた三河衆が完全に後方の安全圏へ退くのを確認すると、改めて迫りくる松永の軍勢へと向き直った。


「松永弾正、内藤宗勝。三河の勇士たちが一人残らず退却を完了するまで、この十兵衛、一歩も引く気はございませぬ。我が覚悟、受けてみられよ!」


ここまで読んでいただき誠に有難う御座います。

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