File11 学校の七不思議♯8
「お出ましだな雲外鏡!飛んでファイヤーに入る夏の虫とやらだ!」
「でもどっちがどっち?」
「私にも判断できません」
3人はあたしともう1人の偽物を交互に見やる。
「スカートの丈、左のほうちょっと短くないか?」
「そう?私はリボンの色が右の方が少し濃い気がするなぁ」
「右は銀髪が1本多いように見えます」
サイゼの間違い探しじゃないんだから。
『こちらE。観測していたところ、江利さんの反応が2つありますが、どうなってます?』
「偽江利のお出ましだ。どっちが本物か教えてくれないか?」
『それが、やってみているのですが、姿形どころか妖力も同じで』
「「魂レベルでコピーされているってことね」」
人の声に被せてきてイラッとくる。
「犯人を捕捉できたはいいが、これでは手が出せないぞ」
「なにかないの?見分ける方法」
「うーんと、あ!今度江利様Tシャツの新作を造るんです!若殿に協力してもらって江利様百面相をプリントして」
あたしは持っていた木刀をイタチに叩きつけるべく構える。
「待て待て待て!流石に2人同時はヤバいから!」
「イタチ君もなんで怒らせるようなことするの!」
大慌てで雨がイタチを庇うようにして抱える。
「す、すみません。感情なら違いが出るかなと」
「うーんそうだな」
「「この手の質」」「「問は意味ないと思うけど」」
試しに変なところで区切ってみたが、言うタイミングも言葉も一言一句同じだ。
「やってみなければ分からないだろう。どう森でメインで集めていた家具の名前は?」
「「スカンジナビアな家具シリーズ」」
「初めて引っ越してしまった住民は?」
「「ダルマン。泣いた」
「特産物」
「「なし。最終的にはなしを全て伐採してオレンジを移植した」」
「サイハテ村への募金の金額」
「「1円。羽よりローン」」
少し綻びが見えるかと思いや全く一糸乱れることはない。
「全然ダメだ」
「いやどんな会話?」
「「新作が出たから懐古厨な会話をちょっとね」」
「まずさ、せめて自分が本物って主張するべきじゃないのかなぁ?」
「「どうせお互い同じことを言い合うのだから意味ないわ、ほら」」
「このままでは埒が明かないぞ!」
他の2人と1匹もコピーするべく時間稼ぎをされているような気がしてならない。なんとか打開しなくては。
「「じゃあ、一か八かタオの雷をどっちかに落としてみてよ」」
「何を言い出すんだ?!」
「「あたしだったら1歩も動かないわ。偽物なら反撃してくるでしょ。しなくても正体を表すかも」」
「そ、そんな万が一本物に当たったら……」
「「大丈夫よ。信じて」」
「もう!どうなっても知らないからな!」
そう言うとタオは持ってきていたでんでん太鼓を鞄から取り出して、右側にいたあたしに向ける。
『雷神の霆!!!』
右側にいたあたしの上に一筋の稲妻が走る。そっちは偽物だ。一瞬偽江利が動揺の顔を浮かべたのをタオは見ていたらしい。このまま雷が偽江利に直撃と思いきや、また別方向からそれを打ち消すように稲妻が光った。
「もう1人のコピー!!」
あたしは爆風を偽江利とタオに浴びせる。が、偽タオのほうが速かった。こちらにでんでん太鼓を向け、瞬時に雷が落ちる。間一髪でイタチが前に飛び出し鎌で空間を切り裂き、稲妻はその隙間に落ちていった。
「江利様!ご無事ですか!」
「なんとか!」
もう真似する必要もなくなり、偽江利は口を開かなくなった。
「私まで真似するとはな、しかも私より使いこなしているし」
「下がっていて、2人とも。見ていると、妖力は凛君の足元にも及ばない」
「それあたし達が弱いって言ってる?」
「ち、違っ!凛君はほら!現人神だし人間と比べて違うというか……」
雨はごにょごにょと言い訳を並べているが、要するにそういうことだろう。確かに人間の真似はできるかもしれないが、神に近い存在であればまた話は変わってくるはずだ。
「雨、頼んだぞ」
「うん」
雨は肌身離さず持っているドラゴンのキーホルダーを両手で握りしめる。
「凛君!」
キーホルダーは黄金の光を放ち、やがてその光が龍の形を造る。
「前にも見たけど、神々しいな……。ほんとにこれはあの貴船さんちのバカ息子なのか?」
「同感」
翼を大きく広げ、水が空中で集まる。鏡の入口から現世の水を集めているらしい。そして、咆哮を上げるとかき集めた大量の水を偽物2人に向けて放つ。
「やったか!」
フラグを立てるんじゃないと思った矢先、突如暗闇から偽雨と龍が現れ、同じように大量の水を放った。イタチが再び空間を切り裂いたが、水力は衰えない。
「間に合いません!」
あたし達は一気に水に飲まれた。
「ぽぽかららせ!!」
遠くでタオの叫び声が聞こえた。




