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水沢江利の怪事件簿  作者: 袖利
中学校二年生編
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File11 学校の七不思議♯2

 調査当日。大洗駅近くの指定されたオフィスビルの屋上であたしはタオの迎えを待っていた。周りの建物が低いだけにビルは異彩を放っている。ちなみに翔瑠君は誘ったけど丁重に断られてしまった。まぁ、怪談話も苦手だから、あんまり近づきたくないのもあるのだろうし、別の用事もあるらしい。

 タオの名前を出すと受付のお姉さんにあれよあれよという間に屋上に連れて行かれたが、タオはどんな登場をするつもりなのだろうか。でっかいリムジンで専属の執事を伴ってー名前は確か先崎さんー迎えに来た以上の驚きは無いと思うが。

 感覚的に10分経った。タオは一向に姿を見せない。これなら歩いた方が早かった。何が面白くて屋上にぽつんと取り残されなければならないのか。ヘリコプターの音まで聞こえてきたし。するとだんだんヘリコプターの音が近付いてきた。というかこちらに向かってきている。

「すまーん!遅くなった!委員会の仕事が長引いてしまってな!飛ばしてきた!どうした?鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして」

「……もうどこから突っ込んでいいのか分かんねぇわ」


「先崎さんも大変ね。リムジンの次はプライベートジェットなんて」

「えぇ、まぁ」

 先崎さんは、タオの無茶ぶりの度に数々の免許を取得しているらしい。ヘリコプターの操縦なんて朝飯前だろう。

「先崎!このまま雨のところまでかっ飛ばしてくれ!」

「お言葉ですが、恭子お嬢様、航空法というものをご存知ですか?」

「……どんなに金に困ってもタオの執事にだけはならないわ」

「むぅ、なんだぁ?私を我儘お嬢みたいに。他のお嬢に比べたらまだ私は可愛いものだ。三流のお嬢は毎日ブランド店に行って、箱買いして満足しているからな」

「使用人達に服のオーダーメイドもなかなかだと思うけど」

「作った方が安いんだからな」

 先崎さん達の苦労が伺える。

「それにしても水臭いじゃないか。お前に男友達がいるなんて聞いていないぞ」

「友達じゃなくて親友(・・)ね」

「イケメンか?!」

 考えたこともないから期待を込めた目で見られても。

「いや知らないけど。何人かに一人は刺さるんじゃない」

「恭子お嬢様、到着しました」

「ありがとう。やはりヘリは早くていいな!信号待ちもないし。先崎、帰りも頼む。……あ!今日寿司食いたい!回って新幹線が来るやつ!ドクターイエローがいいな」

「貸切の手配をいたします。いってらっしゃいませ」

 こういうところがあるから憎めないんだよな。


 ヘリコプターから降りると雨は校門前に立っていた。電話の後、雨もユウキと同じ学校だったのを思い出して、連絡をとったのである。度肝を抜かれた顔をしている。

「遅れてすまない!」

「あれヘリコプターだよね?!誰の?!」

「パパ上の。時間が押していたから手配したんだ」

「タオちゃん、やっぱりちゃんとしたところで教育を受けたほうがいいよ。帝王学とか」

 同感だ。

「ユウキからは聞いてる?あいつ女子とまともに話せないんだけど、ちゃんと伝わった?」

「うーん、3メートル離れたところからすっごい小さい声で言われて。町田君が糸電話持ってきてくれなかったら分からなかったよ」

 また町田だ。

「ユウキからは集団ヒステリーが学校に蔓延してて、飛び降りまで出しちゃったって聞いたけど」

「そうなんだよねぇ」

 雨は生徒達の間で蔓延している不可解な症状を話し始めた。ユウキから聞いたのと同じようなものだ。ということは、あれから数日が過ぎても何の進展もなかったらしい。

「建物の欠陥じゃないかって話も出たって聞いたけど」

「そうそう。傾きとか二酸化炭素とかを測っていたらしいんだけれど、何にも出ないねって先生達が話していたの」

「やはりこれは認めざるを得ないな。怪異の仕業だ!」

「なんでもかんでも妖怪のせいにしてんじゃないわよ」

「逆に江利はどうして毎回そういう態度なんだよ」

「テケテケしかり、こっくりさんしかり毎度犯人に仕立て上げられるなんて可哀想でしょうが」

 狐狗狸さんには一度会ったことがあってめちゃくちゃいい(ひと)だったというのもあるが。

「そんなの冗談みたいなものじゃないか」

「じゃああんたは、何かある度に、またお前が犯人かって言われても平気なの?冤罪だって判明しても日頃の行いが悪いって責められるのよ」

「それはちょっと嫌だよね。凛君も自分のせいじゃない時もお爺様に叱られてるし」

「そうでしょう。あとミステリーで超常現象と双子はご法度なんだからね」

「前提として私達は素人探偵ではなく、超常現象を解決する研究員なんだがな」

 遠くから「おーい」と叫び声が聞こえたので、あたし達は会話を中断し、声が聞こえたほうを向く。ユウキが校門の前に走ってきた。

「遅い!罰金!」

「まあまあまあ」

 ユウキは遅れてきたにも関わらず全く悪びれる素振りもない 。親友の証として握手を交わし、拳を数回打ち合わせる。これをやるのも久しぶりだ。

「えーと、佐々木君だよね?私の時と態度が180度違うんだけど。浮気として報告したほうがいい?」

 雨が口を開いた瞬間、ササッとあたしの後ろに隠れた。

「右から雨、そして隣がタオよ」

 ユウキがか細い声で耳打ちする。めんどくさいな。自分で喋れよ。

「俺は佐々木祐希。今日はよろしく、だって」

 ユウキがまたも耳打ちする。もっと丁寧に話せだって?

「桃原恭子だ。好きに呼んでくれ」

 タオは傍から見れば挙動不審のユウキに臆することなく、一歩進み手を差し出す。ビビったユウキは数歩後ずさりしてしまった。見兼ねたあたしはユウキの代わりにタオと握手をする。

「こいつ女子恐怖症でさ。半径3m以内に近づかれるの無理なんだって」

「私は江利と握手するつもりじゃなかったのに」

 そんな深々とため息をつくことはないじゃないか。

「でもなんで江利は平気なんだ」

「知らないわよ。ユウキに聞いてくれ」

「こいつが大洗の水沢江利?ちんちくりんで独りでお化け屋敷で騒いでるタイプだろ。俺そういう女子が一番嫌いなんだよね。」

 後ろからまた男子生徒がやって来た。会って早々なんて失礼なやつだ。

「あ?おい、ユウキ。誰だこいつ。言っとくけどあたしもお前が嫌い。」

「独りでわーきゃーやってる奴だろうが、妙ちくりんだろうが、一件落着できれば万々歳だろ。あと好き嫌いは良くないぞ」

 男子が増えて中和されたのか、ユウキはタオ達から少し離れたところでようやく自分の口で話し始めた。

「お前だって女子が嫌いでまともに話せねぇじゃねぇか」

「嫌いじゃない。苦手なだけ。こいつは町田 。クラスメイトだ。今回の騒ぎに一番近いやつだから、俺が知らないことも知ってるかもしれないぞ」

「ちっ。興味本位で来やがって。くだらないことし始めたらつまみ出すからな」

 こちらは頼まれたから来てやっただけで、そう言われる筋合いはないのだが。町田に生意気な態度を取られているにも関わらず、タオはグランドを駆け回る野球部の顔面偏差値の測定に夢中だし、雨は空模様を気にしている。互いに人選ミスったなと思いながら、来てしまった以上、ユウキと町田に伴われて校舎の中に入った。

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