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水沢江利の怪事件簿  作者: 袖利
中学校二年生編
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88/92

File11 学校の七不思議♯1

遅くなりましたが、1周年ありがとうございます。これからも精進して参りますので、よろしくお願いします。

 ギリギリ聞こえるくらいの音量で、主人公が必殺技を叫び、これからというときにCMに入ってしまった。同時にキッズケータイに着信があった。あたしの親友、ユウキからだ。

「やっぱ詠唱ありは詠唱ありでまた違ったカッコ良さがあるわね。あたしでも火吹けそう」

『エリは風龍だろ。早くCM終わんねえかな。続きが気になる』

 放映中はメールでやり取りをしていたので前置きがなくともお互い会話が弾む。土曜の深夜はユウキとアニメをリアタイし、放映中はメールで実況中継、CMに入れば電話するのがルーティンになっている。隣の部屋では翔瑠君が寝ているので、細心の注意を払い、なるべく小さい声で話す。

「てかこの前のあれ見た?あのカットはなくない?原作未読勢に伝わんないでしょ」

『他にももっと魅せるとこあんだろ。カットされてもしゃーなし』

「はぁ?ニワカだろ。」

『んだと?何回読み返したと思ってんだよ』

「いいわ。近々決着を付けましょう」

 そろそろヒートアップというところでCMが終わったため、あたしとユウキは電話を切り、再びメールを再開する。トグル入力もだんだん早くなってきた。そして放送はあっという間に終わり、次回予告になったところで今度はあたしからユウキに電話を掛ける。

『来週まで引っ張るのかよぅ!』

「漫画貸す?全巻持ってるわよ」

『なんか負けた気がするからいい』

「難儀なやつ」

 2人でしばらく今週の少年誌や今二人でやっているゲームの話をぐだぐだといつものように話していると、ふとユウキが思い出したように行った。

『そういやエーリィー、依頼だ』

「燃えてき……、ちょっと待て。本題を割愛するのは卑怯だろ。あたしその日暇?っていう奴は全員詐欺師だと思うことにしてるの」

 先程のアニメの熱さも相まって危うく流されるところだった。

『ちっ、ここは燃え切るところだぞ。それにエリはこういうのに首を突っ込むタチじゃないか』

「あたしはね、自分から首を突っ込んで引っ掻き回すのが好きなのであって、他人から舞台を用意されるのは好きじゃないのよ。そこ、勘違いしないでくれる?」

 そう、なんでもかんでも不思議なことや怪奇現象と噂されることに巻き込まれればいいということではない。そこに重要な要素は自主性と安全性の確保だ。安全地帯から観察することほど面白いことはない。

 それこそ中1の初めは『公安所属』という言葉に惑わされて少々面白かったが、最近は迷い妖怪探しみたいな地味な仕事ばかりだし、大きな依頼が入ってきたかと思えば危ない目にあうし。もっと職員の安全性に気を使うべきだと思うね。

 まぁ、GWに研究室のおかげで念願のドラゴンを見ることが出来たが、それでも翔瑠君との初めてのデート※(始まりの始まり♯4参照)ほど胸をときめかせるような事件ではなかった。なんたって正体があの(トカゲ)だ。

 あいつの言動を思い出しただけでも腹が立ってくる。翔瑠君を虐めて、雨まで誑かしやがって、滅竜魔導士にでもなってやろうかな。

『勝手な奴だなぁ。まあ面白いと思うよ。七不思議って知ってるか?』

「当たり前じゃない。それこそ義務教育よ。花子さんとか、人体模型とか、二宮金次郎さんは銅像自体見たことはないけど。前の学校ではモナリザとしばらく目を合わせるとインフルエンザになるとか訳の分からないことを言ってる奴もいたわ。

 それがなんかしたの?言っとくけど花子さんは、前髪に失敗した同級生の生霊よ」

 これはあたしの私見だが、花子さんや人体模型、二宮金次郎さんはもう人前に出てこないのだと思う。大昔までは、どこかの学校にいたのかもしれないが、有名人になり書籍化までされ冷めた現代っ子たちのマジレスという屈辱に彼らが耐えるれるはずがない。今は引退して未開拓の山奥にひっそり住んでいるに違いない。

『それがおかしなことになってるんだよ。うちの学校って音楽室にベートーヴェンだけ肖像画が置いてあるんだ。それを吹奏楽の一人がたまたま見ていた時に、目が合ったって騒いでいたんだけど、翌日そいつ過呼吸になって病院に運ばれたんだよ』

「怖くて過呼吸になっちゃったのね。お大事にって伝えておいて」

 よくある話だ。

『一人だけじゃないんだよ。そいつの後に、吹奏楽の部員が立て続けに過呼吸になって……』

「きっと入院した子の代わりにコンクールを頑張ろうと思って、トランペットに息を吹き込みすぎたのよ。こういう時こそ冷静にって伝えておいて」

『他にも校舎の鏡に閉じ込められたって証言が何件もせんせーのところに来ているらしいし、期末テストの前だってのに学校の雰囲気が不気味なんだ。過呼吸どころか階段から転げ落ちたり、集会中に倒れたりするのも続出しているんだ』

「最後のは校長が悪いでしょ」

『うちのこうちょーは話が短いって市内でも有名なんだよ』

 最もらしい言い訳が出てこなくなった。

『……あと飛び降りた奴も一人いて』

「えっ。大丈夫なの?」

『命に別状はないって聞いたんだけど、その生徒は前日遅くまで学校にいたら、帰りに人影を見たって言ってたんだよな』

「……受験のストレスとか?」

『思い悩むような性格ではなさそうなんだよな。まだ一年だし、親も教育ママって感じでもないんだよ。40点でも赤点ギリ回避とかってヘラヘラしてたらしいし。まあ人知れず悩みがあったのかもしれないけど』

「これって集団ヒステリーとか建築物上の欠陥とかではないの?駅のタイルの形によって倒れる人が続出したっていうのなにかで見たけど」

『せんせー達はそれを疑ってて、最近工事の人が入ってるんだけど、俺はなんとなく違う気がすんだよなぁ。まさかあの町田が人体模型が動いたって騒ぐと思わなかったし』

 ユウキのクラスメイトだろうか。ユウキは何か思うところがあってあたしに相談してきたのだろう。口には出さないが、薄々あたしが裏でコソコソしていることは勘づいているだろうし。

「仕方ないわね。ちょっとだけなら力を貸してやらなくもないわ」

『マジ?じゃあ来週うちの学校に来いよ。案内するから』

 話を聞くつもりなだけだったのに、いつのまにか現地で調査することになっている。

「いやいやいや、他校の生徒はさすがに無理なんじゃないの?」

『そこは、ほら、上手くやるさ』

 ユウキはこういう適当なところがある。怪談もこれきりに日程は来週決めるということで、あたしは電話を切った。

 ふと、背後から視線を感じて振り向く。そこには隣の部屋で寝ていたはずの翔瑠君がジトっとした目で見ていた。

「お、起こしちゃった?」

「……浮気者。」

「違うってば!ユウキだよ?」

「浮気者。」

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