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水沢江利の怪事件簿  作者: 袖利
中学校二年生編
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File10 地球滅亡の日#8

 大洗海岸の心地よいさざ波が聞こえる。これから地球の発展を賭けた作戦を始めるなんて変な機械を取り付けられた今でも現実味が湧かない。

 弐号の予言が正しければ、この作戦が失敗すればスマホまで開発した人間のデジタル化への歩みは止まる。それどころか洞穴で暗闇に怯える時代に逆戻りしてしまう、らしい。

 俺は子ども用の携帯しか持ってないし、さほど困る気がしないからどっちでもいい。ただ江利がテレビゲーム出来なくなって号泣しそうなので頑張るけども。

「心配することはない。弐号がこの予言をして以来、我々御書でんきはWEUの名誉にかけて、この2年間あらゆる想定をしてきた。その答えに、失敗という結果はないものと俺は信じる。では、各自準備はいいな」

「いつでも」

「アイアイサー!」

 なんで担当も割り振られていないのに荒崎はこんなにやる気なんだろう。黙っていると3人の視線が俺に集まっているのに気がついた。

「……あ、はい」

 俺は小さい声で返事をした。

「コムローイ作戦、開始!!」

 俺はリード線を握っている手に力を込める。するとバッテリーのメーターが激しく揺れ始め、ひし形のランタンが宙に浮かび上がる。

「これより御書弐号及びランタン20機は地球上空400kmに待機する」

「了解!弐号、晩飯までに間に合わせろよ」

「分かった」

 すると弐号が履いているスニーカーが変形し、なんとロケットのようなものになった。

「弐号、発進!!」

 御書(オリジナル)が叫ぶと、ロケットスニーカーから炎が出て、ラケットを引連れ、文字通り弐号はあっという間に宇宙へ飛び立って行った。

「こっからは弐号が太陽の様子を宇宙から送信してくれる」

 御書は机中央のモニターを指さす。モニターは俺に背を向けているので何も見えない。

「すっげー!!これ本物の太陽か?!科学館でもこんな高画像見たことねぇよ!」

 荒崎は大興奮でモニターを見つめている。そんな反応をされたら気になる。俺も見ようと、手すりから手を離しかけたそのとき、

「動くな!!お前がその手すりを離すとき、それは俺達の作戦が失敗したときだ」

 めちゃくちゃ怒られてしまった。怒るなら俺が見えるところにモニターを置いてくれればいいのに。誰のおかげで宇宙に行けたと思っているのか。

「叶都、叶都、こちら弐号。聞こえているか」

 モニターから弐号の声が聞こえる。

「感度良好、ばっちりだ」

「太陽の活動は予定よりも前倒しになっている。そろそろバリアの準備をすべき」

「予定外だが想定内だ。鬼塚、こっから飛ばしてくからバテんなよ!」

「物凄い勢いで吸い取られるのか?!」

「いや、俺には霊感も妖力もないから知らんけど」

 ここに来て不安になってきた。手を離してしまおうか本気で迷い始めたとき、

「ランタンが光出したぞ!」

 またもや荒崎は感嘆の声を上げる。

「バリア形成の準備に写ったんだ。弐号、あと何秒だ?」

「あと128.41秒。60.00秒からカウントを始める。」

「あぁ、頼む。」

「勿体ぶるなよ、もう貼っちまえよ」

 早くバリアを見たい荒崎は御書(オリジナル)を急かす。すると御書(オリジナル)はキッと俺を怒った時のような顔をする。

「馬鹿野郎!不安定な宇宙空間でバリアが長く持つかよ!一瞬しか持たねぇんだよ!」

『だから、太陽フレアと一致するタイミングでバリアを張らなければならない。形成したてが一番強固だから。そして、あと50秒』

「お、いよいよだな!よく見ておけよお前達!御書叶都が人類の発展に名を残す瞬間だ」

『残り30秒』

 カウントダウンをされるとなんだか緊張してきた。手すりを強く握る。

『10秒前。9、8、7、』

「6、5、4、」

 最後のカウントはダブル御書が寸分の狂いもなく息を合わせる。

「「3、2、1」」

「お願いしまあぁぁぁぁぁす!!!」

 夏の名ゼリフと同時に御書(オリジナル)はEnterキーを押した。すると上空で一瞬稲妻が走った。

 その稲妻とともに絶え間なく聞こえていたさざ波の音が聞こえなくなった。遠くで鳴り響いていた暴走族のバイクの音も、下校中の学生の会話も、烏の鳴き声も、全ての音が世界から消えた。作戦は失敗してしまったのだろうか。

『こちら弐号』

 静寂を破り、モニターから途切れ途切れの音声が響いた。

『作戦は成功した。これより地球へ帰還する』

「……成功?成功だって?」

『完璧なまでに』

 御書(オリジナル)の肩はふるふる震える。そしてガバッと顔を上げ、

「「やったぁぁぁー!!」」

 御書(オリジナル)と荒崎は手を取り合いぴょんぴょん飛び跳ねている。

 俺もホッとしてへたり込む。ただ金属を握っていただけで大したことはしてないはずだが、疲れがどっと出た。一息つくために空を見上げると、薄暗くなりつつある夜空にいくつもの流れ星が泳ぎ回っていた。

 あとからダブル御書に聞いた話によると、ランタンは誰にも知られることもなく、地球の上空で跡形もなく消滅するよう設計されているという。流れ星に見えていたものは太陽フレアを防いだランタン達の最期の光だったらしい。

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