第838話・サンオイルにうってつけの日 ≪キャラ挿絵≫
南の海辺に来た一行。
男三人が水着に着替え終わってからしばらくして、浮き輪を持った雛季が簡易更衣室から飛び出してきた。
「わ~い、着替え終わったよ、カケルく~ん!」
昨年海に来た時はそのタイミングで更衣室が見えてしまうハプニングがあったが(しっかり憶えている俺って……)、今回は美咲あたりが察知して気をつけていたのだろう、雛季や鹿角や玉城が出て来ると、すぐにドアが閉められた。
「あ、あ、閉められた……見えなかった」と、去年はいなかった鳩ケ谷は悔しそうだ。
それでも彼の顔がすぐに緩んだのは、もちろん雛季と鹿角と玉城の水着を拝見できたからだ。
雛季はピンクのビキニ。この前は学校の水着で見えなかった豊かな胸が見えている。
鹿角は赤いビキニ水着で、肩ひもがないタイプなので大きな波があればポロリしてしまいそうだ。
玉城は白い花柄のある水色のビキニで、お尻を覆う布面積が少なくTバックに近い。
泳ぎが苦手なくせに、雛季は鹿角や玉城と共にすぐに海へ飛び込み、はしゃいだ。
ポロリを期待して彼女たちを見る俺と鳩ケ谷。一方鮫川は早速波に向かって泳ぎ始めている。
そうこうしているうちに、水着になった女子たちが次々と出てきた。
白に黄色の柄が入ったビキニの青葉が浜辺を走る姿はさながらアイドルのイメージビデオだ。
やや恥ずかしそうに出てきた桜川は黄色いワンピース水着。爽やかで似合っている。
浅川は黒いフリル付きの白いビキニ、小牧は水色のワンピース水着。どちらもリボンや飾りが付いていて凝った水着だ。
彼女たちの後ろに隠れるようにして歩いてきたのはミュウで、やはり白いワンピースの水着だ。俺と視線が合うと、うつむいてしまった。
トラヒメも彼女たちについて、浜辺を跳ねまわる。
続いて出て来た一団はオフショルの白いワンピース水着を着た広尾に、黄色と黄緑のチェックのビキニ水着の宇佐、黒いワンピース水着の坂出だ。宇佐の大きな胸にも目を奪われてしまうが、広尾のスタイル、普段あまり肌を見せない坂出の水着姿も息を呑む。
そして少し遅れて、赤い柄が入った白のビキニの美咲、黒い水玉模様の白のフリル付きビキニの東御、青いビキニの二宮がやって来た。
「み、美咲……東御……」と、俺は思わず見とれて呟く。
「あ、あまりジロジロ見ないでよ、カケル君?」
「ず、ずっと立っているの? 見るために、みんなの水着を」
美咲も東御もはじらってタオルで体を隠してしまう。
鳩ケ谷が俺の背中を突いてくる。
「お、お前、見過ぎじゃ。隠してしまうじゃろ? 紳士の遊びをわかっとらんなぁ」
「何が紳士の遊びだ……と言うかお前の目の方がギラギラじゃないか」と、俺はツッコむ。
「……本当にいやらしい人です。気をつけましょう、美咲先輩、東御先輩」
二宮が冷めた目でこちらを見ながら言った。彼女はさすがに帽子を外していて、小さなツインテールを作った赤ピンクの髪がしっかり見えているのは珍しい。
「う、うん。とりあえずチェアーの方に行こう。カケル君も、雛ちゃんが流されないように見ていてね?」
「あ、ああ……。はしゃぎすぎているからな、雛季は」と、俺は苦笑する。
広尾たちが先に向かったパラソルの立つビーチチェアの方に、美咲たちも行ってしまった。
「ああ~、お尻、お尻もいい~。二宮ちゃんもなかなかいいスタイルじゃないか」と、鳩ケ谷は鼻息荒い。これのどこが紳士なんだ……。
そして、自分たちがショーの目玉だとわかっているかの如く最後に現れたのは、松川姉さん、中間、美馬さんだ。
まず松川姉さんの水着は赤や緑の花が描かれた白いワンピース水着、しかしオフショルダータイプで何かあればポロンとその双乳が出てしまいそうだし、他のメンバーのワンピース水着よりもハイレグで、長く綺麗な脚にも目が行ってしまう。
そして中間と美馬さんはそれぞれ紫と黒のビキニ水着で、これまた肩ひもがなく、何かあればポロリしてしまいそうだ(何回ポロリと言っただろうか)。そして後ろは玉城の物と同じようにTバックに近く、中間は綺麗に日に焼けたお尻、美馬さんは白桃のようなお尻が半分以上露わになっているのだ。
「ぐ、ぐ、ぐお~……あ~、理性~、頑張れ、理性……!」
鳩ケ谷は顔を赤く染め、頭を掻きむしって言った。彼のリビドーが危険水域を越えそうだ。この男と出会ってから、ここまで理性を失いそうな彼を見るのは数えるぐらい……25回ぐらいしかない。
「何だよ、カケルたち。そんなまじまじ見て。金取るよ?」と中間がからかい、「そんなに見つめられると……興奮するわ」と松川姉さんは体をくねらせた。
「あらら、そんな所にも二つ、『灯台』が建っているわね?」と、美馬さんは俺たちの股間に視線を落とす。
「あ、ああ、そんなセクシーなことを言われると……マジでヤバ……」
鳩ケ谷が前かがみになって呟く……そんな中、俺たちの後ろで鹿角と水を掛け合ってはしゃいでいた雛季が腰に付けた浮き輪で体当たりしてきた。
「アハハ……あう!」
「ぐわっ」
俺はよろけただけだが、鳩ケ谷は前に転がった。そして……。
「ぎゃうっ! っだあああっ! 痛ぁぁぁぁ!」と、股間を押さえながらのたうち回る。『灯台』が損傷したらしい。
「ああ、ごめん、ポッポ君。大丈夫? でも、そんなに痛くしてないのに……」
「男にしかわからない痛みがあるんだ……。まぁ、雛季は気にするな、というか気にしちゃいけない」と、俺は雛季の肩を叩き、美咲に代わって彼女を鳩ケ谷から遠のけてあげた。
「ああ~……これからもっと活躍していくはずのワシの大事な……大事な……」と、鳩ケ谷はまだのたうち回っている。
「今後もそんなに活躍はしないと思うから嘆くなって」と、俺は呟く。
「まったく、仕方ない坊やね。ほら、おっきしなさい」
美馬さんがしゃがみ、鳩ケ谷の肩に手を掛ける。
鳩ケ谷は下品な笑みをこぼしたが、すぐに顔が歪んだ。
「痛っ! ああ~、美馬さん、今はそんなに近づかれると、痛っ、ああ、でも嬉しい~痛っ」
中国の変面師みたいに、笑顔から鬼のような形相へとコロコロ変わる鳩ケ谷。
「今は刺激を与えない方がいいわ、美馬さん。カケルに任せよう」と中間の案で、結局俺が負傷した鳩ケ谷をレジャーシートの方に連れて行くことになった。
股間を痛がる鳩ケ谷を運ぶ作業……かなり人生で無駄な部類に入ることだろう。
ちなみにそのレジャーシートも、美咲たちがいるビーチチェアとは少し離れた場所に敷かれた。そうしないと、鳩ケ谷は股間の痛みに耐えてまで美咲たちの水着姿を垣間見ようとするだろう。彼のエロへの執念を侮ってはいけない。
鳩ケ谷が股間の痛みを和らげている間、俺はまた美馬さんや松川姉さんに呼ばれた。
美馬さん、玉城、松川姉さん、広尾が日焼け止めクリームを、中間と宇佐がサンオイルを背中に塗ってくれと言うのだ(美馬さんが言いだし、他のメンバーも次々に頼んできた)。
「二人一組で塗り合えばいいだろう?」などと言いつつ、仰せのままに塗ることにした。
途中で海辺の鹿角が気づき、「私も塗ってあげるわ」と加わって来てしまったので中間や宇佐の方ができなかったのがむしろ残念だ。
それでも、日焼けしたくない派4人の美女の肩や背中にクリームを塗らせていただいた……じゃなく、塗った。
広尾と松川姉さんはフルバックだが、布面積は少なく、お尻の下の部分が少しサイドからはみ出しているし、背中も大きく開いているタイプのワンピースだし、やはり目のやり場に困る。
クリームを塗る手が小刻みに震えてしまった。
そして、美馬さんと玉城にいたってはTバックに近いわけだ。刺激もすごい……。
その上、美馬さんは上体を起こして言った。
「ああ、瀬戸君。この白濁したクリーム、脚の方とお尻にも塗ってもらえないかしら?」
「お、お尻?」
そこは自分で塗れるのでは? とは言わない。
塗れないかもしれないじゃないか? 自分の思い込みを押し通してはいけない。
「いつもは『メドゥシアナ』の子たちが全身、ありとあらゆるところを塗ってくれるのだけど、今日はいないから」と、美馬さん。
「ありとあらゆるところって一体……」
それを他の人たちにやらせているなんて、さすが美馬様……。
俺は他の女子メンバー……特に美咲や東御の目を気にしながら、美馬さんの言う通りに彼女のお尻にクリームを塗った。滑らかで、柔らかかった。
「ありがとう。君の出したクリームがしっかり体になじんでいるのを感じているわ。君も塗ってほしいなら言ってちょうだいね? どこでも塗ってあげるから」
美馬さんはそう言って自分の肩に付いていたクリームをちょっと手に付け、妖しい手つきで俺の胸にこすりつけた。
「はうっ……そ、それは自分で塗ります……」と、俺は慌てて離れた(不自然な前傾姿勢で)。
美馬さんたちとは反対側のビーチチェアに向かう途中、呼び止められた。
「ね~、ね~、瀬戸君」
青葉だ。彼女のサイドのビーチチェアにいる美咲と東御が何故か慌てている。
「みんなにクリーム塗ってあげていたね? それなら私たちにも塗ってよ~」と、青葉は自分の日焼け止めクリームを振った。
「ええ? 何言っているんだ、君まで……」と、俺は顔が熱くなるのを感じながら言い返した。
「何って、クリーム塗るだけだよ? あ、もちろん美咲ちゃんとアンジェリーヌにも塗ってあげてね?」と、青葉はアイドルっぽくウインクした。
「み、美咲と東御も……」
「あ、青葉さん……。ちょっと冗談で言ってみただけなのよ? ごめん、カケル君、気にしないで」
「陽香莉。上がり過ぎよ、テンション」
美咲と東御は顔を桜色に染めながら言うが、青葉はまたにこやかに言う。
「え~、私たちもカケル君に塗ってもらおうかって言っていたじゃん? せっかくだから塗ってもらおうよ?」
「あ、青葉先輩~。美咲先輩や東御先輩が男子に触られていいんですか~?」と、違う方からも否定的な意見が。美咲の左側のチェアーを確保していた二宮だ。
「あ~、遥ちゃんはしてほしくないのか……。でも、本人たちは本心ではしてもらいたいはず」
「そ、そんなことはないだろう?」と、俺は二人を窺った。
美咲と東御は口を閉ざし、視線を逸らしただけだ。
「それじゃあ、私だけ塗ってもらおう! お願い、瀬戸君」
青葉が日焼け止めのボトルを渡してきて、うつ伏せになった。プリンとしたお尻が上を向く。
「美咲たちに塗ってもらえばいいと思うけどな……」と言いつつ俺はクリームを手に出し、青葉の肩や背に塗った。
「あ~、くすぐったい。気持ちいい~」と青葉は大げさに喜ぶ。
すると、美咲もうつ伏せになった。
「……そ、それじゃあ、せっかくだから私も塗ってもらおうかな?」
「わ、私も」と、東御も恥ずかしそうに言った。
「ええ?」と俺や二宮は驚き、青葉は思い通りになってくすくすと笑った。
「……ダメ、かな?」と、美咲。恥ずかしいのか、やや目が潤んでいる。
「ダ、ダメではないけど……。じゃあ、塗るよ」
二宮の鋭い目線を気にしながらも、俺は美咲や東御の背にもクリームを塗った。普段は真面目なタイプの二人だから余計に緊張したし、白くきれいな背中や水着からあふれているお尻のふくらみに呼吸も乱れてしまった。
終わってから、照れをごまかすために言う。
「……二宮も、塗ってやろうか?」
「じ、自分で塗れます! もしくは美咲さんに」と、二宮は顔を赤くした。
彼女たちの前に敷かれたレジャーシートに寝転がる桜川やミュウ、浅川、小牧にも訊いてみるが、やはり断られた。
俺は苦笑いのまま、その近くに自分のシートを敷き、自分でサンオイルを塗った。
自分の体に触れながらも、女性陣の背中やお尻を思い出して、なかなか興奮は治まらなかった。
【挿絵①】左から、松川、青葉、東御、美咲、美馬、中間
【挿絵②】左手前から、浅川、ミュウ、トラヒメ(後ろ向き)、桜川、小牧(右手前)




