第1110話・誰かさんの淫夢 ≪キャラ挿絵≫
一行はまた牙から寮に歩いて帰った。
途中で何度か休憩を挟んだが、正直俺も歩き回るのには疲れていた。
ちなみに、動物愛護の色が強くなった『この世界』では馬車やその他の動物を利用した乗り物が少ない。あっても、その動物のエサを高級にすると言う理由で料金が通常(の世界)より高く、しかも『お馬様』等の安全を祈祷したり、力を授かるための儀式があったりして時間も使うらしく、それなら徒歩で往来しようとなる。
寮に戻ると、速見先生が言った。
「汗掻いたわね。どう、月形さん、水巻さん、それに瀬戸君も、お風呂に入って行かない?」
「ええ?」とドキリとして戸惑う俺の横で、月形さんたちは「いいですね」、「私もせっかくだから広いお風呂に入って行きたいです」などと先生の提案に明るく乗った。
「まだ寮に戻って来ている生徒が多いわけじゃないから、2年生棟の女風呂しか焚かされていないけどね。瞳子や二宮さんたちも呼んで、みんなで入ると楽しいでしょ。……瀬戸君も、入って行くでしょう?」
速見先生が小首をかしげて訊ねて来る。そんな純粋な目で見られると……断れまい。
汗が気持ち悪いからね。まぁ、この後『ビッグドーナツ』に帰るわけだからどうせまた汗を掻いてしまうだろうけど、疲れている体をリセットしたいということもあるし……。あと、寮の大浴場に『変化』が起きてないか確認も必要だ、うん。
と言うことで、俺は悩んだふりをしつつ受容した。
佐倉先生たちを誘いに行く速見先生に勧められ、俺と月形さんと水巻さんは先に1階奥にある大浴場へ向かった。確かに、男風呂の前には『使用できません・女性風呂を利用してください』という看板が立っていた。
うん、それなら仕方ない、と俺は月形さんたちに続いてごく自然に女風呂の方へ。
脱衣所で今まさにショーツを脱いでいた女子2名と目が合った。彼女たちの表情が一瞬強張ったように感じて、俺も一気に緊張した。
まさか、理由はわからないが、風呂は男女混浴で構わないという『この世界』の常識がいつの間にかなくなっているのでは?
しかし、後輩2名のその反応は、単に見覚えのない先輩が3名入って来たことに対する緊張感から来るものだったようだ。
それを察した月形さんたちがすぐに自分たちは卒業生で風呂だけ借りるのだという挨拶をすると、後輩の女子たちも笑みを取り戻した。そして「お先に」と、浴室の方へ入って行く。
なるほど、ここは2年生棟の風呂だから、1年らしき彼女たちが利用することに少し緊張するのは当然と言えば当然だ。
そして、男の俺が堂々と入って来たことには、やはり何の抵抗感も示さなかった。
逆に、俺が隅の方でパンツを脱いでいる間、男子3名がお風呂場の方から出て来て脱衣所で体を拭き始めるが、俺の横にいる月形さんたちは気にする様子はない。そして、彼女たちは短パンとショーツを脱ぎ、綺麗なお尻を露わにした。脱衣所に置かれていたタオルを借りて前の方は隠したが、何とも刺激的だ。
先に風呂場へ向かう二人の揺れるお尻を追いながら、俺もすぐに曇りガラスの戸の向こうへ。
黄色い声が響く中、視界を覆う湯けむりを掻き分けるように進むと、浴室には先に7名ほどの女子がいたことがわかる。湯に浸かっている者が3人、体を洗っている者が4人だ。
浴槽の方で賑やかに喋っていた3人の声は一時止み、無意識を装った確信的な視線が俺たちに向けられたが、彼女たちはすぐにまた会話を始めた。
洗い場にいた者の中にもチラッと横目でこちらを見た者がいたが、また髪や体を洗うことに意識を戻したようだ。
先ほどの男子たちが出てしまって、男は俺一人だけとなった。
だが、気にする必要はない。構わず、自分も洗い場で腰を下ろし、体を洗い始める……俺の背後で、こちらに背を向ける形で座った月形さんと水巻さんのお湯に濡れて光る背中やお尻をチラ見しながら。
それからしばらくして、脱衣所から速見先生たちが入って来た。
二宮と深空ちゃん、そして佐倉先生も連れて来ていた。保健室は校医の大竹先生にバトンタッチしているらしい。
みんな下半身はタオルで押さえて隠すようにしていたが、お尻は見える。そして……。
まるで俺を避けるように月形さんたちの横に着いた二宮(これは俺の目が気になると言うより、単に俺を嫌っているからだろう……それも悲しいけど)と、必然的にその隣に座る深空ちゃん。
その二人の位置が決まると、これまた流れるように速見先生と佐倉先生が俺の右隣の洗い場に座った。
それによって、視線の端で右の方を見れば、速見先生の裸体とその奥に佐倉先生の裸体を大かた見られることができた。
二人は何か話しながら髪を洗い始めた。どちらの先生もタオルを両腿に掛けていたが、濡れたタオルは重くなり腿の内側へと垂れ落ちて行き、下腹部を……そして流れ落ちた泡こそ邪魔だが、ついには薄い茂みを拝見できた。
もしかして、二宮。君はこうなることがわかって、先生たちを俺の隣へ自然に誘導してくれたのか?
……そんなわけはないが、サンキュー。
と振り返れば、鏡越しにその視線を感じたのか、二宮は「何ですか? 不気味な笑顔ですね?」と怪訝な顔つきで言った。
「いや、何でもない……」
また、それから5分ほど遅れて……何と! 『この世界』の『この状況』で一度も会えておらず心残りとなっていた、待望のレンジリー先生が入って来たのだ。
そして、俺の左に座った。
「レンジリー先生。寮の方に来るのは珍しいですね」と、速見先生が先に声を掛ける。
「そうなのよ。校長たちから言われたのよ。時間があれば、寮の方に行って生徒へ剣の指導をしてくれって」と、レンジリー先生は小さく溜息をついた。
「それで、今終わったところ。せっかくだから、お風呂にも入っておこうって思って」
「そうなんですね。私たちもです。外を少し歩いただけで汗が出ちゃって」
「この時期は本当に暑いわね。日も沈まないから、夜も寝苦しい」
俺を通り越して会話を続ける先生たち。
俺は存在を消しながらそれを聞いていた。
『この世界』の状況で、俺がここにいることを注意されることはないはずだが、普段厳しいレンジリー先生相手だけになぜか怒られそうな気がしておとなしくしていたのだ。
しかし、もちろんと言うべきか、レンジリー先生は俺を注意せず、「もう体を洗い終えたなら、私が髪を洗っている間、背中を洗ってくれない?」と頼まれただけだ。
俺は了解し、先生の白く滑らかな背中を泡立ったスポンジで丁寧に洗った。
調子に乗って……と言うわけではないが、勢い余って先生のお尻の方までスポンジが触れてしまい、肩越しに睨まれた。
「すみません」と苦笑いで返すが、レンジリー先生は微かに笑って言った。
「お尻に触れたいの? それなら、あとで好きにすればいい」
「え? あと……ええ?」と、俺は面食らった。
「もう仕事も終わったし、自由よ。こういう機会もなければ、アッチの方もなかなかするタイミングがないからね」
「アッチの?」
「とぼけないのよ? 股間のタオル、ふくらませているくせに」と、先生の視線が下がった。
確かに、俺の股間に載ったタオルが、おしゃれな店の気取ったハンバーグぐらいの大きさには盛り上がっていた。
「ああ、いや、これは……」と、慌てて手で押さえ込んだ。それですぐに萎むものではないけど。
「何、手を離してるの? 続けて洗いなさい。それに、照れるタイプでもないでしょう、君は?」
レンジリー先生が言い、右側の2名の先生が楽しそうに笑った。
「い、いや~……」
「それとも、私とは密着したくない? 速見先生や佐倉先生がいいわけね?」
レンジリー先生は少し拗ねたように前へ向き直った。いつもはしっかりした大人の女性という雰囲気だが、その姿は可愛らしいという感じだった。
「そ、そんなことはありませんっ!」と、俺は強く否定。
「それなら、私たちとも、どう? さっきは中断してしまったし」と、佐倉先生が入ってきた。
手前で速見先生も若干顔を紅潮させて、うなずいた。
「お風呂場は、すぐにまた体を洗い流すこともできるし、よさそうですね」
「そうなのよ。だから、どう? 瀬戸君」と、レンジリー先生が流し目を向けた。
「ど、どうって……これはまた、参ったな……」
『ナイトメア・リバティーン』がこんなお膳立てのような演出を創り出すわけはないので、やはり俺のわずかな希望がこうした流れに持って行っているのだろうか?
とにかく俺は、先生の背中を洗い終えてから、一旦湯船に入り、話はそれからにしましょうと言うことにした。
「期待しているよ」と、レンジリー先生たちは微笑んだ。
それから先に行っていた月形さんたちのいる浴槽に入り、彼女たちにも同じような提案をされ、そんな中、二宮と深空ちゃん、そして別の浴槽にいた1、2年の女子も、二宮たちにつられるようにこっちへ集まって来た。
「私、瀬戸先輩が通っていた時から、気になっていたんですよ? 先輩のこと」
「先輩次第ですけど、できればエッチしたいです」などと、彼女たちは言った。
「ど、同級生の男子とか……ほら、さっきいた奴らとは、シないの?」と、俺はおどけながら訊いた。
「誰でもいいってわけじゃないから、そういう交渉は。ある程度いいと思える人ではないと。もちろん、外見だけでなく、性格とかもですよ?」
「ある程度って言っている時点で……」と、俺は眉をひそめた。ただ、鼻の下は伸びていたが。
「もちろんする時もありますけどね……」と、別の一人が続く。
俺は「あるのかい!」と小さくツッコむ。
「でも、最近男子の多くは魔溜石採取にとらわれ過ぎていて、恋愛を疎かにしているんです。シても雑だったり、ね」
「魔溜石採取……そうらしいね。税の取り立てや、中央本部の指令が厳しくなっているらしいからね、生徒も大変だ。まぁ、ざ、雑なのはよくないけどね……うん」と、俺はなるべく女子の味方をする。
「そうだよね。愛し合う時間は、しっかり相手を思い、お互いを気持ちよくさせなくてはね」
「じっくり、ねっちりと、ね」
月形さんと水巻さんが卒業した先輩としての威厳を保つかのように(?)言ってきた。吐息が耳を震わせ、思わず高めの声が漏れそうになる。
そうこうしていると、先生方3名も塗れて光沢ある裸体を見せながら、湯舟へやって来た。
あっという間に俺は全方位を女体に囲まれ、寛ぐどころではなくなった。
「ああ、意外とたくましい背中ね」
「本当」
先生たちは率先するように俺へ体を寄せてきた。
「さぁ、中央本部や最近の『牙』については、みんなで気持ちよくなりながら語りましょう」と、レンジリー先生が教鞭を振るうかのように女子たちに声を掛けた。
みんなも各々嬉しそうに返事をする。
「そうね。昔はよく、行為をしながら大事な話もしたとか」と、速見先生が俺の手を自分のおっぱいへ導きながら言った……。
【挿絵】左から水巻、速見、カケル、レンジリー旭、二宮(後ろ向き)、清水深空




