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思いのままに4

残ったのは彼だったものの肉片だけである。


俺はレイの元に駆け寄り、両手の鎖を外した。



「無事で良かった。」


「――来るのが遅い!」


「ごめん……」



その瞳に涙を浮かべながらも強気な返事を返してくる。

それでも、彼女は俺を待っていてくれたのだろう。



「来てくれたから許す。」


「あぁ……」


「お前達、いちゃつくのはいいがそろそろ脱出するぞ?」



銀華さんが呆れ気味に脱出を提案してくる。

レイを取り戻せたのだ、もうここに用はないだろう。



「全く、能天気なものだな。」


「――え?」



それは、聞こえてくるはずのない声だった。



「クロトの研究成果をみくびっていたよ。 まさかこれ程の性能を示すとは。」


「ユニスなのか!?」



そう、この声は間違いなくユニスのものだ。

しかし、肉片となった彼が言葉を発する事が出来るわけがない。



「その問いに答えるならばノーだ。」



散らばった肉片が、もぞもぞと一か所に集まっていく。

そのおぞましい光景に、全員動く事が出来なかった。

やがて人型となり、ソレはユニスの姿へと戻っていた。



「やれやれ、まさか人間ごときが時空龍の紛い物レベルにまでなるとはな。

 もう少し彼の研究に付き合うべきだったか。」


「貴様、本当に人間か?」


「ククッ、私を人間だと? 冗談は程々にしてくれ。」



ユニスの纏う雰囲気が、先ほどとは明らかに違う。

まるで今までは遊びだったと思わされる程だ。



「この感覚どこかで――」


「銀華さん?」


「まだ気づいてなかったのかい? よーく父上が死んだ時の事を思い出したまえ。」



銀華さんの表情が怒りへと塗りつぶされていく。



「貴様! 陽甲(ようこう)か!」


「その頃は、そんな名だったかな。」


「葉助、ここからは私も戦わせてもらう。 こいつは私の一族滅亡のきっかけを作った糞野郎だ。」



明らかに銀華さんの目つきが変わる。

それは激しい憎悪の目である。



「銀華さん、奴は何者なんですか。」


「私達と同じようなものだ、しかもとびっきりタチの悪いな。

 私が殺したと思ったが、まさか生きていたとはな。」


「その言葉はそっくりそのままお返しさせてもらうよ。

 では、第二ラウンドを始めようか!」



圧を感じる程の魔源(マナ)のうねり。

これが奴の本気だとでもいうのか。



「レイ、こいつを倒したらお前に伝えたい事がある。」


「葉助?」


「だから、それまでこいつを預かっていてくれ。」



そう言って、俺は弾切れになったフェンリルを手渡した。



「わかった。」



レイはフェンリルを握りしめ、力強く頷いた。

~陽甲(ようこう)~

黒竜族と呼ばれる、ロキア特有の竜達の族長であった。

先祖の罪を償うため人間達に協力していた。

人龍戦争のきっかけである、九垓暗殺を企てた張本人であり、かつての戦いで黒翼と銀華の手によって葬られたと思われていた。

現在はユニスの肉体を乗っ取り活動していたようだ。

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