リヴァイアス家を目指して4
「なら、あの二人を送り届けたら3人で暮らさないか?」
「……」
「それが夢だっただろ?」
「今更、どの面下げてあの子の前に立てばいいのだ、私は……」
「銀華――」
「私はもう、あの子の母親にはなれないよ黒翼……」
母親……?
あまりの驚きに、少し物音を立ててしまう。
「誰だ!」
銀華さんがこちらに向けて魔銃を向けてくる。
俺は両手を上げて二人の前に出た。
「――聞いていたのか。」
「まぁ、半分くらいは。」
「分かっていると思うが――」
「言いませんよ、それは貴方が直接鈴華ちゃんに言う事でしょ?」
「……」
返答は沈黙だった。
きっと、この二人の間には恋人以上の複雑な関係があるのだろう。
俺はそこに踏み込んではいけない、そんな気がした。
――
―
通りすがりの行商人から物資を補充し、再びリヴァイアス家の跡地を目指す。
黒翼さんの話では、あと半日も歩けば跡地が見えてくるらしい。
「しかしさっきの商人、獣のような耳と尾を持っていたが……」
「そうか、イデリティスの民は初めて見るのか。」
「イデリティスの民?」
「彼らはロキアに住む特殊な種族でな、ここ最近じゃ滅多に見かけないな。」
「そういえば、ロキアとのゲートは一時閉鎖されているんでしたね。」
となると、さっきの人は故郷に帰れないわけか。
まるで自分のようだと、ふと思った。
「あともう少しで辿り着く、お前達頑張れよ。」
「すみません、ちょっと用を足してきます。」
そう言って俺は茂みの中へと入っていく。
皆からは見えない位置まで進み、そのまま目の前の木に寄りかかる。
――最近、間隔が短くなっている気がする。
全身を逆撫でるような悪寒、額には脂汗が浮かぶ。
「げほっ!げほっ!」
咳き込むと、口からは鮮血が溢れ出た。
どうやら、俺の時間もそう長くはないらしい。
急がなければ――
俺は瞳を閉じて、大きく深呼吸した。
~イデリティスの民~
ロキアに住まう種族。
人間とほぼ同じ容姿だが、獣のような耳や尾を持つ。
はるか昔に、ロキアは獣人達が暮らす世界だったと言われ、彼らはその頃の特徴を色濃く残す種族なのだ。
その魔源の生成量は、人間の十数倍と言われ、魔法を扱う事に長けている。
しかし、人間達によって差別の対象となる事も多い。




