王を冠する兎の名、認められざる力の名 3
改訂版だけどほとんど改訂前と展開が変わっている、それは改訂ではないのではと思う今日この頃。
今俺は、擬似隠密が続いている状態で木のうろの真上にある枝に乗っている。しかし困った、見張りがいるな。
「どうするかなぁ」
1人してそう呟き、どうしたものかと思考を巡らせる。普通に考えて、擬似隠密があるからといって目の前を通ってもバレない、なんてことはあるはずもない。
「ま、このために一応買っておいたんだけどな」
インベントリから出したアイテムの名は「獣除けの拡散香袋(弱)」。少々長めの名前と少々お高めの値段であるこちらのアイテム、攻略サイトを見る限りホーンラビットやヴォーパルバニーなど、「兎」系統のモブにも効くらしい。獣除けだしな。
つまりどう言うことかといえば、
「ほっ」
2匹いる門番の丁度真ん中あたりに投げ込まれた拡散香袋。それは、
「3、2、1…」
ぼふっ
なんとも気の抜けた音を出しながら爆発とまではいかないが破裂し、それに伴って中に仕込まれていた香りのする粉(ピンク)が拡散される。ふはははは、これで悠々と入場できる訳だ。
ちなみに兎どもは「キィー!」と言いながら逃げていった、ちゃんと自分の責務は全うしろよ全く。元凶=俺なのは気にしないで欲しいが。
「さーてと」
今の所入り口あたりには他の兎は見られない、隠れられてたら詰むけど分からねーんだし気にするだけ無駄だ。警戒はするがな。
「〈擬似隠密〉」
このスキルは効果時間が短いのが玉に瑕だな、擬似だから仕方ないんだけども。
「いざ参る」
なぜ自分が侍言葉を使ったのかは理解に苦しむが……そう、いつだって玉露は心の中に侘び寂びを呼びだしてくれる、つまりはこれも俺の侘び寂びの一つ……愛すべき一面ということなのだ。
やっぱり自分の頭が心配になる今日この頃。
入り口あたりはかなり急な坂。地下に巣を作るのだからそりゃそうか、ウサギたちの跳躍力ならなんてことないだろう。
急な坂に滑りかけたりこけかけたりしたが、まあ大して長くもない坂であるため大丈夫だった。
坂が終わった先にあるのはなかなかに広い空間。
「俺の部屋より広いのなんか腹たつ」
軽く4倍くらいか?うーん、あの兎たちがここまで広い住居を持っているなんて。解せぬ。俺の家ももっとデカくして欲しいよ。
まあ愚痴もほどほどに前へと進もう、向こうっ側に奥へ続く道が見える。ありがたいことに一本道だ。ここで何本にも枝分かれをされるとうざいったらありゃしない。いや、それはそれで面白そうだけど絶対目的と違うことしかできなくなる。
そう思いながらその一本道へと足を踏み入れる、この道もそれなりにでかいのがやっぱり腹たつ。うちの廊下の2倍
「あー、松明とか持ってくればよかったかなー」
金がねぇんだよ金が。一応灯火が入ってる簡易魔力媒体を買おうと思ったんだが……金ェェェェ!!!!
そろそろ己の鳴き声を「金」にしようかと思う今日この頃、誰だ病院行けって言ったやつ表でろオラァ!!
……
「うーん想定外」
何が?答えとしては通り道に照明がつけられていたことだ。兎の近代化がものすごい速さで進んでいる、人間の終わりもそろそろ近くなってきたか……いや、この世界において人類は霊長たり得ないんだけどね?
長いな、この通路。特に脇道があるわけでもなく、少しづつカーブしながら続いていて、時折照明が付いているだけの一本道。歩きつつも、さては隠しギミックが……?と考えていたその瞬間。
分かりにくかったが、ようやく一本の脇道が出てきた。なるほど、カーブしていたから遠目から気づくことができなかったのか。
脇道からは光が漏れ出ている、故によく見えるのだが……脇道に大量についた脇道、そして一瞬だけちらっと見えたそれを俺は見逃さない。
「あれは……ベッド?」
まい・あいがとらえたものは、確かに人間のそれとは異なるが明らかに横になることを目的として作られている家具。
なかなかいい生活してるじゃねぇかよ兎ども、ヴォーパルバニーの部屋かは知らんがどこ見ても腹立つなぁオイ。
まぁいいや、俺はユニオンを張っ倒しに来たのであって兎たちを羨みに来たのではない。
いやでも部屋は魅力的か?意外と何か隠してあったりしそうだし。擬似隠密は……お、リキャスト終わってら。よーし、いっちょ見ますかぁ!
…
色んな部屋(3部屋)を覗いて分かったことがある。この集合住宅とでも言えばいい場所はおそらく、メインの生活場所ではない。
理由は多々あるが、第一にユニオンがいないこと。まさか自分だけ別の場所、それも侵入者がある程度慣れていれば容易に眷属に気づかれずに己の首元まで来れるような所に住みはしないだろう。そこまでバカなら救いようがないし、そもそもこんなウォーレンなぞ作れるはずがない。
第二に、生活感がない。いや兎に生活感を求めてどうするんだという話だが。なんというか、簡素なのだ。おいてあるのは、推定ベッドの家具、推定武器置き、推定防具掛け、推定服掛け程度。他の兎と順番に交代で仮眠を取ったり休憩するのに丁度いい感じのような。
要するに、何が言いたいかと言えばここは休憩所なのではないかという話だ。
例えば、木のうろの所の門番。まさかもっと奥から行ったり来たりを繰り返していたら面倒臭すぎるだろう。ここで待機すればいちいち面倒な移動を挟むこともないし、襲撃者が来たときに第一の防波堤になることもできるだろうし。俺に突破されてるからあんまりだけどな、はっ!
「ん?ちょっと待て、何か引っかかって……」
何だ?何が引っかかっている?思い出せ、思い出すんだ俺!俺の記憶力はそんなものか?定期テスト前夜に発揮した記憶力はそんなものだったのか!?できる、俺なら思い出せる!
発揮したはずの記憶力で英語は58だったよ、カスだね!せめて60は欲しかったかなぁ……
「…………………………………………………あっ」
思い出した、思い出したぞよくやったナイスだ俺!!やっぱり俺はできるんだ!
〜In my heart〜
俺5:自画自賛きもいね
俺43:自分で自分を褒めることも大事だよ?モチベーションにつながる
俺764310:俺は……すごいのさ……俺は…天才なのさっ……
俺65:こいつら大丈夫……?
俺1:侘び……寂び……
〜The end〜
心の中はやはりカオス……そういう時にこそ侘び寂び!!ではなく!今俺はおそらく、というか絶賛大ピンチになりかけている。なぜかって?そりゃあ……
お香の効果切れた門番がキレて追っかけてきてますからねぇ…?
切れたとキレたがかかっている、俺はやはり天才……!!
・ルアンによるうさぎさんのお部屋観察記録vol.1
一部屋に一つ、ニンジンが神棚みたいなやつの上に御神体みたく飾られていた。
どういう神経してんだよ兎ども、人参はあくまで捕食対象であって断じて神仏の類ではないと思うのだが……やはり己の信じるものを信じ抜くのが侘び寂び?生物として負けた気がする。
ベットは俺のよりふかふかそうだった。というかあのベット絶対同種の毛でできてるだろ。格差って怖い。




