鉄の審判
メアリー女王の受諾と同時に、エースの「暴力の化身」が動いた。
オリバー・クロムウェル率いる『新模範軍』の精鋭部隊は、闇魔法による隠蔽と、鉄道網を駆使した神速の移動により、一夜にしてスコットランドの要所に潜入した。
クロムウェルの戦術は、従来の騎士道とは一線を画していた。
彼はノックス率いる反乱軍の首謀者たちに対し、武力による制圧ではなく、「新しい法」と「イングランド式の雇用」を提示して懐柔した。戦う意志を失わせるのが、エースの教えだった。
一方で、腐敗の元凶であった教会の聖職者たちに対しては、情け容赦のない審判が下された。
「『免罪符』で神を売り、私腹を肥やした罪。その報いは、地獄ではなく、この現実の地で受けてもらう」
クロムウェルは、震え上がる大司教たちを捕縛し、彼らが蓄えていた金貨や宝石を没収した。それらは即座に、スコットランドの鉄道建設資金と、貧困層への救済金へと転換された。
捕らえられた腐敗僧たちは、禁固刑だけでは済まされなかった。彼らはエースが管理する「魔導鉱山」へと送られ、かつて民衆に強いた以上の過酷な懲役労働を命じられた。
自らの手で石を掘り、汗を流す。それは、エースが彼らに与えた「最も論理的な悔い改め」だった。
数日後、エースはアンナを伴い、エディンバラの王宮でメアリー女王と対峙していた。
メアリーは、目の前の少年の「薄気味悪いほどの静けさ」に戦慄した。彼女の【アンチ・マジック】は常に発動している。だが、エースは最初から魔法など使っていなかった。彼はただ、経済という数式と、人間の欲望という物理法則を操っただけなのだ。
「メアリー陛下。これで反乱は鎮まりました。これからは、スコットランドの羊毛とイングランドの蒸気機関が手を取り合い、世界を支配する番です」
メアリーは力なく頷いた。彼女は、魔法という神秘が、科学と経済という「論理」に敗北した瞬間を、その肌で感じていた。
「……貴方は、魔女よりも恐ろしいわ、エース・ランカスター。神の御心を、数字で書き換えてしまうのだから」
「神の御心も、適切な変数を代入すれば、数式として解くことができますから」
こうして、イングランド、スコットランド、アイルランドを包含する「大ブリテン連邦」が誕生した。
エースは影のアーキテクト(設計者)として、島国全体を一つの巨大な「産業プラント」へと作り変えた。
はずれ魔法使いと蔑まれたエースは、背後の憂いを消し去り、ついに海を越える準備を終えた。




