オリバー・クロムウェル
「富」と「政治」を手に入れたエース・ランカスターが、覇権への最後の一片として求めたのは、自らの論理を物理的に強制できる「暴力」、すなわち最強の軍隊だった。
だが、中世的な騎士道に縛られた既存の軍隊は、エースの目には非効率の塊に映った。高慢な貴族が指揮を執り、愛国心も規律もない傭兵たちが金のために戦う。そんな旧時代の遺物では、これから始まる「世界再編」の荒波は越えられない。
(必要なのは、個人の武勇ではない。鉄の規律と、死をも恐れぬ『思想』を共有する組織だ。……日本で言うところの豊臣秀吉のような、泥臭い知略と人心掌握術を併せ持ち、かつ軍事外交を一手に担える逸材が必要だ)
そんなエースの前に現れたのが、オリバー・クロムウェルという名の学生だった。
彼は有力な政治家を兄に持つ名門の出でありながら、その風貌は武骨で、貴族らしい華美さを嫌う実利主義者だった。学園の演習場、泥にまみれて戦術図を広げる彼に、エースは接触を試みる。
「クロムウェル、君の戦術は面白いが、兵の『質』が追い付いていない。どんなに優れた陣形も、死を恐れる人間が一人いれば、そこから崩壊する」
クロムウェルは顔を上げ、エースを鋭く睨んだ。
「……ならばどうしろと言う。金で集めた傭兵に、死ねと命じるのが指揮官の仕事だとでも?」 「いや。金ではなく『信仰』で戦う兵士を作るんだ」
エースはクロムウェルに、全く新しい軍隊の構想をぶつけた。
家柄や騎士の称号などは一切不問。選ぶのは、神への燃えるような信仰心を持つ独立自営農民や職人たちだ。彼らは守るべき土地を持ち、何より「自分たちは神の正義を遂行している」という狂信に近い自負を持つ者たち。
エースは【生産魔法】で量産した最新鋭の拳銃と、禁書庫から得た「強化魔法」を付与した鋼の鎧を提示した。
「クロムウェル、君には彼らに剣の振り方だけでなく、『神の言葉』を説いてほしい。彼らを単なる兵士ではなく、神の意志を体現する『鉄騎兵』へと鍛え上げるんだ」
クロムウェルはその構想に、身体を震わせた。
「懐柔と武力、そして信仰の融合か……。エース、貴方は恐ろしい男だ。だが、その狂気がこの国を救うというのなら、私は喜んで貴方の剣になろう」
二人は放課後の書庫で、古今東西の戦術を議論し尽くした。エースが前世の知識から『孫子の兵法』や『ナポレオン戦術』を語り、クロムウェルがそれをこの世界の地政学に落とし込んでいく。
論理と武力が、一つの強固な絆となって結ばれた瞬間だった。
(時代がぐちゃぐちゃになってますが、一応15世紀のイギリスが背景です。)




