↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうあがいても悪役令嬢になれません! ~わたくし、完璧な悪事を働いているはずなのに、なぜか聖女と崇められて断罪フラグがへし折られていく件~  作者: 和三盆


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
82/108

第81話「悪女は、遅れて届く感情に気づく」

その日は、特に予定のない朝だった。


セレスティアは書斎で窓を開け、

風を入れ替えてから机に向かう。

書類は少ない。

判断を求めるものも、ほとんどない。


「暇だね」


ルシアが率直に言う。


「ええ」


セレスティアは否定しない。


「悪役としては、だいぶ失格ね」


冗談めかして言ったつもりだったが、

ルシアは少しだけ言葉に詰まった。


「……それ、平気?」


「何が?」


「誰にも必要とされてない感じ」


セレスティアはペンを置いた。


少し考える。

答えは、すぐには出ない。


「前より、静かではあるわね」


「うん」


「でも」


ゆっくりと言葉を選ぶ。


「必要とされない、とは違う気がする」


昼前、庭を歩いていると、

使用人の一人が駆け寄ってきた。


「公爵令嬢」


息を整えながら言う。


「昨日の件ですが……

皆で話し合って、解決しました」


「そう」


「その……

前なら、頼っていたと思います」


セレスティアは、少し驚いた。


「それで?」


「今回は、自分たちでやってみようって」


照れたような笑顔。


「うまくいったので……

報告だけ、と思いまして」


去っていく背中を見送りながら、

胸の奥が、わずかに温かくなる。


「今、ちょっと嬉しそうだったね」


ルシアが言う。


「そう?」


「うん」


夕方、ひとりで紅茶を飲む。


ふと、気づく。


感謝も、賞賛も、

その場では届かない。


遅れて、静かに、

噛みしめるようにやってくる。


「遅配の感情、か」


悪女は、喝采を浴びない。

代わりに、

誰かが自分で立てたことを、

少し離れた場所で知る。


それは、派手じゃない。

でも、確かに残る。


「悪くないわね」


夜の帳が下りるころ、

セレスティアは窓を閉めた。


今日も、大きな事件はない。

それでも、

何かが、ちゃんと進んだ気がする。


それで十分。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。