入学式は疲れる②
ここは聖壁院学園。かなり大きな学校で、どんなものも受け入れるがモットーの有名校である。かつて色々な有名人もこの学校を出ており、今ではかなり頻繁に注目を浴びる学校となった。
そんな学校の入学式である今日、新入生は一際目立ったある人物に注目が集中していた。
「なんだこの視線……………やはりおかしかったか?」
そう、俺、小山内優希である。
即席で男子制服をスカートに改造してきたため、他の人と違う姿で登校している。正直とても恥ずかしい。
「まさかこんなことになるなんてな…………」
俺はまだ始まっていないのにめちゃくちゃ疲れていた。
1時間前。
「嘘だろ……俺の姿がロリに!」
「いや、ほんと何があったのさ!」
驚愕する俺に、電話つけっぱなしで聞いてた芽亜の声がようやく届く。
「芽亜!ちょっとテレビ電話に変えてくれ!」
「え、なんで?」
やはり不思議そうな声で返される。
「いいから!」
「わかったけど………」
「ええええぇぇぇぇぇ!?」
芽亜も驚愕する。
「やばいだろ!?朝起きたらこうなってたんだ!」
「いや、兄貴の面影全くないじゃん!」
本当にそうなんだよな。美少女すぎる。
「クソっ、どうしたらいいんだ………?もう学校行かなくちゃいけねぇ時間だ……!女子制服なんかねぇよ……!」
焦る俺たち。結局、相談して男子制服を改造するという応急処置でここに来たのだ。
そして今に至る。
「なんだあの子………制服を改造している?」
「え、初日からそんなことしていいの?」
周りからザワザワと話し声が聞こえる。恐らく俺の制服がおかしいと言う話だろう。
俺だってこんなことしたくなかった。長い間外に出られなかった俺にとってこの視線は敵でしかない。ものすごく気持ちが悪かった。
が、何か雰囲気が変わった。
暗い感じだったみんながだんだん明るくなっているような気がする。何があったんだ……?
「つーかさ、あの子可愛くね?」
「そういやめっちゃ美人だな!」
「お人形さんみたい!」
「話くらいできないかな……?」
…………………予想外だった。ロリとはいえ、高校生基準で考えても、やはりこの姿は可愛いのだ。異物を見るような目は、一瞬にしてアイドルを見るような目に変わってしまった。
そしてついに、俺に話しかける奴が現れた。
「ねぇ君。同級生だよね。僕は薄川翔。君の名前は?」
「え、えっと、小山内、優希、です…」
コミュ障を発症した。突然のことに対応できなかったこともあるが、それ以前に妹以外と話す能力が俺にはなかった。
「そうか!優希ちゃん、よろしく」
薄川は俺に手を伸ばしてきた。
これは握手か、握手なのか!?コミュ障の俺に握手しろと!?なんとも相手のことを考えないやつだ。でも、なんか悪い奴ではなさそうなので、弱く握り返してみた。
薄川は「ふふっ…」と笑い、少し頬を赤く染めて帰って行った。
まさかガチ恋?いや、それはないよな。
色々考えながら、俺は入学式会場へ向かった。
が、俺は考えていなかった。
(俺、男で登録してね?)
学校に来る前の手続きの時は男なのだから男で登録している。今は女だし、このまま男として学校にいるのはなかなか大変だ。
「すみません係員さん」
昇降口前で生徒を確認する係員さんにコミュ力を振り絞り話しかける。
「はい、何でしょう」
「手続きの時に性別を間違えて登録してしまったみたいで………」
「分かりました。報告しておきますね」
……あれ?何とかなった。
もしかしてそんなに心配しなくていいのか?俺がビビりすぎてるだけなのか?いや、そうだろう、そうに違いない。
俺は自己解釈をして少し軽くなった気分で入学式に向かった。
(すごい…………人たくさんいるな…………でもやっぱ話しかけて欲しくないな…)
入学式の時は男女に別れて椅子に座る。俺の苦手な女子高生が両隣にいる感じ、とても安心できない状態だ。
ハラハラしながら校長先生の話を聞いていた。
「次に、現生徒会長からの一言です」
生徒会長かぁ。やはり真面目な印象があるな。
そこで段に上がってきたのは金髪の女性であった。
「皆さん、初めまして。わたくしは現生徒会長、天崎転花。この学校をよくするため、毎日色々なことに励んでおります。さて、皆さんは自分の生きたいように生きていらっしゃるでしょうか。」
男子も女子も天崎会長に見惚れ、その話を聞き続けていた。俺は特に何も考えずに聞いていた。
「皆さんがこの学校でなにかに縛られ、本来の自分を出せないと言うのであれば、私が寄り添い、助けてあげましょう。私はこの学校の生徒皆の味方です。どうか、自分の生きたいように生きてもらえれば幸いです」
とてもいいことを言っているようだが、疲れきってた俺には話があまり入って来なかった。一応何となく聞いてはいる。
「それでは、私の言葉をおわりましゅ」
あ、噛んだ。
新入生のクスッと言う声。あー、これはまずいね。ネタにされるやつだ。
こうして、足の痺れそうな長い入学式は、笑いで幕を閉じた。
次回はようやくクラスに向かいます。




