第1話 不穏な空気
バシュッ、バシュッ!
「芽衣さん、お疲れ様!」
そう言って私は芽衣さんにタオルを渡したけれど、芽衣さんの顔は優ったまま。
「また、アズル液が少ない…………」
スピリアを見つめてポツリと呟いた。
「最近はどうなっているのかしら。
アズル液が極端に少ないわ。これじゃあ、魔力回復が出来ないじゃない」
うーん、と雪が珍しくうなった。
「望、怪我はないかしら?」
「はいっ! どこも怪我してないです!」
あの後、帰ってしまった望に事情を話すと、「なにそれ、私もやりたい!」となり、晴れて魔法使い見習いになった。
「そういえば、二人とも願い事は決まったかしら?」「なかなか出てこなくて、穂乃花は?」
私は黙って首を横に振った。だよね、と望が言った。
「芽衣さんは何のお願い事をしたんですか?」
芽衣さんはその場で立ち止まって、しばらく黙ってしまった。
話したくないならいいです、と言おうとした時に芽衣さんの口が開いた。
「私はもともと癌を患っていたの。発見が遅かったみたいで余命3ヶ月とかで。
死にたくなかった。もっともっとやりたいことがあったし、それに他の皆と違う世界に行くのが怖かった。
そんな時に雪が現れたの。私の病室は2階だったからどうやって上がってきたか分からなかったけれど。だから、雪に言ったの。「癌を治して、私を生きさせて」って。もちろん、後悔はないわ。こうやって、穂乃花と望にも会えているし。
だけど、ふと考える時があるの。癌を患っていなかったらもっと色々な選択肢があったんじゃないかって。
だからね、時間と選択肢がある子にはきちんと悩んで欲しいの」
そう言った芽衣さんの横顔がどことなく寂しそうだった。
「芽衣さん、話してくれてありがとうございます。そして、辛いことを思い出させてしまってごめんなさい」
「いいのよ、もう終わったことなんだから」
ニコッと笑った芽衣さんの顔がいつもより悲しげだった。
だから、芽衣さんはいつも私たちに
『危険な行いをしているということだけは頭に入れておいてね。そして、命をかけている、ということも忘れないでちょうだい』
と言っているのかもしれない。誰よりも命の大事さと尊さを分かっているから。
そして、目の前で仲間をやられてしまった経験があるからなのかもしれない。
「ねえ、芽衣さん。願い事って必ずしも自分のために使わなくちゃいけないの.....?」
「必ずしも、ってわけではないと思うわ。けれど、よく考えなさいね。
他人の願いを叶えるということはそれなりの責任もあるということを」
「責任、そうですよね。もうちょっと考えてみます」
すると、前から「芽衣ー!」と物凄い勢いで誰かが走ってきた。私達は咄嗟に芽衣さんの後ろに隠れる。
「こら、琴葉!穂乃花と望が怖がっちゃうでしょ」
「ごめんごめん。この間の案件の答えを聞きにきたんだ」
「悪魔退治を協力するって話よね? 個人的には賛成だわ。だけど、アズル液が極端に少ないとなると、回復ができなくて琴葉の足を引っ張ってしまうかもしれないし」
「私の足を引っ張ることはないにしても、アズル液が少ないことは私も気になってたわ。
でも、悪魔の数が多いから仕方なく狩ってるてとこかな」
「どういうこと?芽衣さん」と望が問いかけた。
「えっと、悪魔の数は増え続けるけど、アズル液は減り続けるってことよ。しかも、悪魔からでるアズル液も少ないから回復もできないのよ」
芽衣さんは優しく、分かりやすく教えてくれた。
「「やばいじゃんっ!」」
と、私達二人は芽衣さんに同時に言ってしまった。
「まぁ、こればっかりは原因不明だから仕方がないのよ」芽衣さんは珍しくはぁ、と大きなため息をついた。
すると、カツ、カッと誰かが来る音がした。
見ると、琴葉ちゃんが誰かにナイフを向けていた。その先を見てみると、私たちと同じ魔法使いのようだった。
「おい、何しに来たんだよ。怜。金輪際私たちの前に現れるなと忠告したはずだぞ」
「あなたに用があるわけではないわ、私はそこの花宮穂乃花に用があるのよ」
急に名前を呼ばれてビクッ! となってしまった。
どこかで会ったことあるっけ? と記憶を探っていると、
「あなたは絶対に魔法使いにはならないで」
え?という間もなく、その子は何も言わずに去っていった。
「アイツ、魔法使いの中でも変わり者って有名だよ。勝手に人の縄張り入ってくるからムカつくんだよな。今度会ったら覚悟してろよ」
参葉ちゃんはナイフをブンブン振り回した。芽衣さんがコラコラ、と注意していたけれど。
「じゃ、交渉はなかったってことにしておく。
じゃあ、私も自分の縄張りの悪魔狩りと魔人狩りしないといけないから、そろそろおいとまさせていただくよ。
また、お互い生きて合えるように健闘を祈っておくね」
「ありがとう、琴葉引き続き頑張ろうね、私も健闘を祈るわ」
そう言って、琴葉ちゃんは来た時と同じようなスピードで帰っていった。
「さ、私達も悪魔がりの続きをしないとね。こっちの反応がさっきから強いの。行きましょう」
芽衣さんはそう言って私たちの前を歩いた。望は芽衣さんの横に行って色々と質問しているみたい。
でも、なんだろう。この感覚は。
ここから先には行っては行けないと忠告しているかのように胸がザワザワしている。
無理やり吹っ切って、私は芽衣さんのあとをついて行った。
こんにちは!
超ひよっこ作家の雪乃めぐみです!
このたびは投稿時間が遅れてしまい、申し訳ありませんでした!
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
まさに、不穏な空気が芽衣さん達の後ろをじわじわと蝕んでいきます。
芽衣さん達は一体どうなるのでしょうか……?
次回は明日の19時頃に投稿する予定です!
続きが気になる方は、ぜひブックマークをして待っていただけると嬉しいです!




