第1話 ドジっ子芽衣さん
「はい、到着」
そう言われて来たのはごく普通の一般宅。
「え、あ、で、でも……」
と、入るのを拒んでいるとグイッとすごい力で背中を押されて少しバランスを崩してしまう。
「あっ、ごめん。でも、外じゃ話ずらいことだし入ってよ。私のお母さん帰りも遅いしさ!」
その子のパワーに負けて「おじゃましまーす」と小声で入る。
家の中はカフェみたいにおしゃれだった。天井にファン回ってるし…………
私の家もこんな風だったらいいのになぁ、と憧れを抱きつつ、その子の後を一生懸命ついていった。
案内されたのはその子のお部屋だった。
「お茶とお菓子持ってくるから少し待ってて。雪、あんまり怖がらせないでよっ!」
と足元の白い猫に言ってから階段を降りていった。
周りをキョロキョロ見回してみる。可愛いベッドに、クッション、小物……
THE可愛い女子の部屋って感じ。アネモネの花も飾ってあるし、いい匂いもする。
いいなぁ、いいなぁ、私の部屋もこんな風だったらなぁ。
でも今私の部屋は散らかり放題。
机の上に教科書のタワーが出来ている。そろそろ片付けないとやばい。
もじもじとしていると、誰かに話しかけられた。
「そこまで緊張しなくても大丈夫よ。芽衣は優しいから」
キョロキョロ見回すけど、部屋にいるのは私と猫ちゃんだけ。
「今、誰が、……?」
「んもう、前向いてよね。私しかいないでしょ」
前を向くと猫が喋っている。そして、得意げに鼻を鳴らしている。
「ね、猫が、猫が……しゃ、しゃべったぁーーー!?」
自分の叫び声で窒息死しそうになった。
しばらくして、あの子がお茶とお菓子を持って来てくれた。
「お待たせー、お菓子選んでたら遅くなっちゃった」
カップにコポコポコポとお茶を入れてくれた。
「遠慮せずに食べていってね」
にっこりと微笑みかけられ、紅茶を一口飲む。
あったかい、優しい味がする。
「じゃあ、自己紹介からしないとね。私、雛野芽衣よ。こっちは仕事仲間の雪」
「仕事仲間じゃないわっ! 相棒よっ!」
ふん、と鼻を鳴らす雪。どうだか、と隣で呆れている芽衣さん。
「私、花宮穂乃花です。私も緑ヶ丘中学で2年生です」
「じゃあ、後輩なのねっ!嬉しいわっ!」
わーい、とはしゃぐ芽衣さん。
「めーい、そろそろ本題に入ったほうがいいんじゃない?」
呆れたように芽衣さんを注意する雪。
「あ、そうね。私たちは魔法使いといって、この街を守る役目をしているの」
「この街を守る……? 一体誰から?」
「『B・G』からよ」
ドキッと心臓がはねる。今朝見たニュースの名前。それに、以前にも聞いたことのある名前。一体いつ.....? やっぱり思い出せない。
「どうして、「B・G』からこの街を守るんですか?
「それは、地球征服、いえ宇宙征服を狙っている闇の組織だからよ。放っておけば、穂乃花のお友達みたいな人たちが増えてしまう。そうならないようにするのが私たち魔法使いの仕事なの」
「望みたいに……」
さっきの望を思い出す。まるで別人で狂暴で怖かった。あんな感じの人が地球全体に……
「それで組織が開発したのが『アズル液』。お友達が飲んだものよ。
この液体の中身はざっくりいうと悪魔。この悪魔に乗っ取られるとあんな風になってしまうの」
悪魔……? あれが? 悪魔ってあのツノが生えていて、翼があって、さすまたみたいなやつ持ってるあいつ?
目を丸くして固まっていると、
「まぁ、驚くのも無理ないわよね。それで、このアズル液を回収するのがこれ」
そういってコトンと綺麗な宝石を机の上に置いた。
「わあ、綺麗……」
「これは『スピリア』。悪魔と戦うときに必要なものよ。これで悪魔退治専用の服に着替えたり、武器の出し入れしたりするの」
芽衣さんは紅茶を一口すすった。
「へえ、魔法使いってすごい…… 芽衣さん、魔法使いってどうやったらなれるんですか?」
「一つだけ叶えたい願いを雪にいうの。そうしたらなれるのよ」
なんのお願いでも叶えるわよっ! と胸をドーンと叩く雪。
「結構、簡単なことなんですね」
私も紅茶を一口すすって、お菓子を頬張る。
「穂乃花は魔法使いになりたいの?」
「ハイっ、もちろんです!」
ためらいも何もなくすぐに答えた。
「じゃあ、しばらく私の仕事を見学するといいわ。魔法使い見習いとして。
そして、それでも叶えたい願いがあるのならば晴れて私たちの仲間入りよ」
「でも、お邪魔じゃないですか……?」
おずおずと芽衣さんに尋ねる。
「お邪魔なわけないわよ。魔法使いの仕事上、人を助けたりとかもあるから一人増えたって問題ないわ」
「じゃ、じゃあ、よろしくお願いしますっ!」
勢いよくお辞儀をしたため、ゴンッと机に頭をぶつけてしまう。
「大丈夫っ!?」
「だ、大丈夫です……」
うう、痛い。
雪は誰かさんのドジが移ったのかしらね、と言って芽衣さんをチラリと見ている。
芽衣さんは私はドジじゃないっ! って怒っているけれど……
でも、ドジっ子だと思う。
あの時も盛大に転んでたし。
すると、机の上に置いてあったスピリアが急に煌々と光りだした。
「近くに悪魔がいるのね。早速行きましょうか。狂暴化している人達がもういるかもしれないし」
さっき怒っていたおどけた顔とは裏腹にお仕事モードで、真剣な顔になっている。
芽衣さんが立ち上がるとポケットから色々なものが雪崩のように落ちる。
ハンカチ、ティッシュ、小銭に入れ、スマホ、そしてどういうわけかミルクのカップまで。
「ひゃあ! またやっちゃったよぉ。雪ぃ、拾うの手
伝ってぇ」
はあ、とため息をついて渋々拾う雪。
私も拾うのを手伝った。
「ありがとう。よくやっちゃうのよ」
ペロリと舌を出す芽衣さん。
「ほら、気を取り直して行きましょう」
「…………そっちはトイレでしょっ! 何回間違えるの
よっ! 玄関こっち!」
そう雪に言われてりんごのように赤くなる芽衣さん。
「ま、間違えてなんかないものっ! 少し緊張しているから、よ」
「どうだか」
(もしかして、芽衣さんって私が思っているよりもドジっ子……?)
芽衣さんについて行ってもいいのか少し不安になっていると、コトンと何かが落ちる音がした。芽衣さんのスピリアだ。あれ、裏面に何か書いてある。
「MEI」……?
ざわっと胸騒ぎがした。何でだろう、嫌な予感がする。
私、知ってる気がする。これが、何なのか。
でも、黒い靄がかかっているみたいで分からない。
「あら、穂乃花。スピリア拾ってくれたの?ありがとう」
にっこりと笑う芽衣さん。
「え、あ、はい!あんまり綺麗だったので見惚れちゃって」
アハハーとなるべく笑顔に言いながら、芽衣さんにスピリアを渡す。
スピリアを宝石を扱うように丁寧にポケットにしまう
芽衣さん。
あの文字、どういう意味だったんだろう…………?
気にしなようにしないと、今は見習い魔法使い穂乃花として芽衣さんの仕事を見守るんだ!
そう無理やり吹っ切ろうとしても、そのことがずっと頭の片隅にこびりついていて消えることはなかった。
こんにちは!
雪乃めぐみです。
昨日初投稿したての超ひよっこ作家です。
面白かった、などの一言やスタンプ感覚の感想がものすごく嬉しいです!!
また、誤字脱字の指摘も大変助かります!!
次回は明日の18時ごろに更新する予定です!
少し前後する可能性もあります。
これからの芽衣さんの活躍にご期待ください!




