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【新約】『俺のメガネ、喋るんですけど!?』 〜AIチートで天下泰平〜  作者: Hachiroll
第二章:江戸チートAIで将軍になって天下泰平 
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新章 第二十話:「堀を埋めた嘘」

内堀まで、埋まっていた。

豊臣の使者が、それを見た時、しばらく声が出なかった。

「……約束が、違う」

工事の者は、答えなかった。

ただ、土を運び続けた。


慶長十九年(1614年)、十二月。

和睦の条件は、外堀の埋め立てだった。

はずだった。


「EDO、工事の状況は」

『外堀の埋め立て、完了しました。続いて内堀の工事が、始まっています』

「そうか」

『……家康様、これは』

「わかっている」

『和睦の条件に、内堀は含まれていませんでした』

「含まれていなかった」

『では、なぜ』

「解釈の問題だ」


EDOは、少し黙った。

『解釈の問題、ですか』

「豊臣は「外堀」と理解した。ワシの側は「堀全体」と理解した」

『それは、意図的な曖昧さでしたか』

家康は、答えなかった。

窓の外で、工事の音が続いていた。

土を運ぶ音。

堀が埋まっていく音。

『……わかりました』

「責めるか」

『できるだけ、犠牲が少ない方法を考えます、と言いました』

「そうだな」

『ただ──』

「ただ?」

『これは、そうなっていますか』


家康は、しばらく黙った。

「内堀が埋まれば、大坂城の防衛力は、ほぼゼロになる」

『はい』

「夏に攻める時、味方の損害が、格段に減る」

『はい』

「真田丸で死んだ千二百の命を、これ以上増やさないために」

『……はい』

「それが、ワシの答えだ」

EDOは、それ以上聞かなかった。


大坂城の中で、淀殿が怒った。

「約束が違う!」

使者を呼んだ。

抗議の書状を書いた。

しかし、工事は止まらなかった。


真田信繁は、堀が埋まっていくのを、城壁の上から見ていた。

供の者が言った。

「……どうなりますか」

信繁は、答えなかった。

しばらくして、静かに言った。

「春が来る」

「春に、また戦ですか」

「そうだ」

「勝てますか」

信繁は、埋まっていく堀を見た。

外堀が消えた。

内堀が消えた。

大坂城は、裸になっていく。

「……勝てない」

「では」

「それでも、やる」


按針が来た。

「内府殿、工事を見ていました」

「そうか」

「……内堀まで、埋めるつもりでしたか」

家康は、按針を見た。

「お前には、正直に言う」

「はい」

「最初から、そうするつもりだった」

按針は、少し間を置いた。

「……和睦は、初めから」

「豊臣が飲める条件を出した。豊臣が飲んだ。工事が始まった。あとは、なるようになった」

「意図的に、曖昧な条件を」

「……そうとも言える」


按針は、しばらく黙った。

「内府殿」

「なんだ」

「私の国にも、似たことがあります」

「どんなことだ」

「条約を結んで、解釈の違いで、破る。よくあることです」

「……お前の国でも、か」

「どの国でも、あります。それが、人間のすることです」

家康は、少し目を細めた。

「責めていないのか」

「責めています。ただ──」

按針は、海の方を見た。

「責めても、変わらない。だから、次を考えます」


「EDO、豊臣の残された選択肢は」

『二つです』

「言え」

『一つ。徳川に降伏し、秀頼殿が国替えに応じる』

「もう一つは」

『春に、戦う』

「淀殿は、どちらを選ぶ」

『……降伏は、しないと思います』

「そうだな」

『理由を言いますか』

「言わなくていい。わかっている」


EDOが、少し間を置いた。

『家康様』

「なんだ」

『秀頼殿は、どうしたいと思いますか』

家康は、しばらく黙った。

「……わからない」

『珍しいですね。家康様が、わからないとおっしゃるのは』

「人の心は、計算できない。それは、お前も同じだろう」

『はい。秀頼殿の内心だけは、データが少なすぎます』

「あの子は、どんな顔をしているか」

『……報告によれば、最近、笑っていないそうです』


家康は、目を閉じた。

(二十二歳か)

ワシが二十二の時は、今川の人質だった。

それでも、外の世界を見ていた。

秀頼は、大坂城の中しか知らない。

その城の堀が、今、埋まっていく。

「……秀吉よ」

静かに、呼んだ。

「お前が作った城が、こうなった。許してくれとは言わん。だが」

『……』

「覚えていてくれ」


春が来る前に、雪が降った。

大坂城は、白く覆われた。

堀の跡も、雪の下に消えた。

「EDO、夏の陣になれば、どうなる」

『……豊臣の勝ち目は、ほぼありません』

「ほぼ、か」

『真田信繁が、変数です。あの方だけは、計算が収束しません』

「あの男は、何をするつもりだ」

『わかりません』

「ワシにも、わからない」

家康は、雪の大坂城を見た。

白く、静かに、沈んでいくように見えた。

「……春になれば、わかる」


その夜、信繁は一人で地図を描いていた。

城の周りの地形を。

堀のない、裸の大坂城の周りを。

どこから攻められるか。

どこに出れば、一矢報いられるか。

供の者が言った。

「眠らないのですか」

「眠れない」

「何を考えているのですか」

信繁は、筆を止めた。

「……歴史に、名を残す方法だ」


《── 慶長十九年十二月〜慶長二十年春 ──》

《大坂城:外堀・内堀、埋め立て完了》

《豊臣家の選択:抗議するも、工事止まらず》

《真田信繁:夏の陣の準備を開始》

《家康:春を待つ》

《決戦まで:約五ヶ月》


堀が、埋まった。

外堀も、内堀も。

大坂城は、裸になった。

豊臣は抗議し、

家康は動じなかった。

春になれば、決着がつく。

誰もが、知っていた。

真田信繁だけが、

眠れない夜に、

歴史への残り方を、考えていた。

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