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【新約】『俺のメガネ、喋るんですけど!?』 〜AIチートで天下泰平〜  作者: Hachiroll
第二章:江戸チートAIで将軍になって天下泰平 
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新章 第十九話:「冬の陣」

「真田が、来ている」

EDOが言った。

家康は地図から目を上げなかった。

「……どこに」

『大坂城の南。独自に砦を築いています。設計が──』

少し、間があった。

「設計が、どうした」

『厄介です』


慶長十九年(1614年)、十一月。

徳川の二十万が、大坂を囲んだ。

冬の空は、低く重かった。

篝火が、城を取り囲むように灯っていた。

「EDO、真田丸の構造を詳しく言え」

『城の南側に突き出した独立砦です。三方向から同時に射撃できる設計になっています。正面から攻めれば、確実に損害が出ます』

「どのくらいの損害だ」

『……正面突破を試みれば、死者千を超えると推定します』


家康は、地図を見た。

大坂城。

秀吉が作った、天下一の城。

外堀、内堀、本丸。

そして今、南に一つ、新しい砦が加わった。

(真田信繁か)

あの時から、ずっと頭にあった名前だ。

「……来るとは思っていた。だが」

『だが?』

「あの男が砦を作るとは、思っていなかった」

『想定外でしたか』

「……半分は」


翌日、前線から報告が来た。

前田利常の部隊が、真田丸を攻めた。

一刻も経たないうちに、壊滅した。

井伊直孝の部隊も、損害を受けた。

「……やはりか」

『死者、合計千二百余。負傷者は、その三倍以上です』

家康は、何も言わなかった。

「真田の損害は」

『……軽微です』

「そうか」


その夜、秀忠が来た。

顔が、青かった。

「父上、真田丸をどうするつもりですか」

「正面からは攻めない」

「では」

「包囲する。兵糧を断つ。時間をかける」

秀忠は、少し眉を寄せた。

「……時間がかかりますが」

「かかっていい」

「しかし、冬の野営は兵に堪えます。士気が──」

「ワシにも、時間がない」

家康は、静かに言った。

「だから、別の手を使う」


「EDO、大砲を城に撃ち込めば、どうなる」

『物理的な損害は、限定的です。ただ──』

「ただ?」

『城の中の人間の、精神的な損害は、計り知れません』

「淀殿は、城の中にいるか」

『はい。秀頼殿も』

家康は、少し間を置いた。

「撃て」

『……城の奥深くまで、届く大砲が必要です』

「ある。西洋の大砲を、使う」

EDOが、珍しく一瞬黙った。

『……按針殿の、ですか』

「そうだ」


按針が呼ばれた。

「按針、大砲を使いたい」

「どこへ」

「大坂城の奥だ」

按針は、少し考えた。

「……届きます。ただ」

「ただ?」

「正確には狙えません。どこに落ちるか、私にも保証できない」

「構わない」

「……本当に?」

「城の中を揺さぶれれば、それでいい」


按針は、しばらく家康を見た。

それから、静かに言った。

「……内府殿は、苦しいですね」

「何故そう思う」

「正確に狙えないと言った時、安心したように見えた」

家康は、何も言わなかった。

「狙えないなら、どこに落ちても、自分のせいではない。そう思いましたか」

「……」

「違いますか」

「……大砲を、用意しろ」


翌日。

大坂城の天守近くに、砲弾が落ちた。

城の中が、騒然とした。

報告によれば、淀殿の侍女が二人、死んだという。

「……EDO」

『はい』

「淀殿の様子は」

『和睦の使者を、送ってきています』

家康は、目を閉じた。

「……そうか」

『交渉に、応じますか』

「応じる。ただし、条件がある」


EDOが、静かに言った。

『外堀の埋め立てですか』

「そうだ」

『家康様』

「なんだ」

『外堀を埋めれば、大坂城は普通の城になります』

「わかっている」

『淀殿は、わかっていますか』

「……わかっていないと思う」

『なぜ、説明しないのですか』

「説明したら、断られる」

EDOは、何も言わなかった。

「説明しなければ、飲む。それが、交渉というものだ」

『……はい』


和睦が、成立した。

外堀を埋める、という条件で。

雪が降り始めた大坂に、静けさが戻った。


「EDO、真田信繁は」

『大坂城内に、残っています』

「和睦に、反対したか」

『はい。最後まで、戦い続けるべきだと主張したそうです』

家康は、雪の降る空を見た。

白く、静かだった。

「……あの男は、まだ終わっていない」

『はい』

「外堀が埋まれば──』

『……次は、内堀です』

家康は、そこで口を閉じた。

按針が、静かに聞いていた。

「内府殿」

「なんだ」

「和睦は、本当の和睦ではないのですか」


家康は、按針を見た。

しばらく、答えなかった。

それから、静かに言った。

「……船に乗っていてくれ、按針」

「え?」

「次の嵐が来た時に、舵を頼む」

按針は、その言葉の意味を考えた。

考えながら、何かを察した。

「……わかりました」

それ以上は、聞かなかった。


《── 慶長十九年十二月、大坂 ──》

《大坂冬の陣:和睦成立》

《真田丸の戦い:徳川軍に甚大な損害》

《外堀:埋め立て合意》

《真田信繁:大坂城内に残留》

《内堀の処遇:交渉中》


冬の陣が、終わった。

外堀が埋められた。

雪の中、大坂城は静かだった。

しかし、城の中の真田信繁は、

剣を磨いていた。

和睦を、信じていなかった。

老将軍もまた、

雪を見ながら、

春を待っていた。

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