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【新約】『俺のメガネ、喋るんですけど!?』 〜AIチートで天下泰平〜  作者: Hachiroll
第二章:江戸チートAIで将軍になって天下泰平 
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新章 第八話:「三成の最期」

慶長五年(1600年)、十月。

関ヶ原から、半月が過ぎた。


「捕まえたか」

EDO『はい。伊吹山中に潜伏していたところを、捕縛されました』

家康は、静かに言った。

「……傷は」

EDO『軽傷です。関ヶ原で負ったものと思われます』

「そうか」

少し、間があった。

「ワシのところへ、連れてこい」


家康の前に、石田三成が現れた。

縄をかけられていた。

着物は泥で汚れていた。

髷が乱れていた。

しかし、顔は──

まっすぐだった。


二人は、しばらく黙って向かい合った。

家康が、先に口を開いた。

「……久しいな、治部少」

三成は、答えなかった。

「伊吹山は、寒かったか」

「……」

「座れ」

「結構です」

三成は、立ったまま言った。

声は、震えていなかった。


EDO『……三成殿、怖じていません』

家康の耳だけに届く声。

「わかっている。静かにしていてくれ」

家康は、三成を見た。

「お前に、一つだけ聞く」

「……なんですか」

「後悔しているか」


三成は、少し目を動かした。

それから、首を振った。

「していません」

「なぜだ。負けたのに」

「負けたことを、後悔はしていません」

「では、何を後悔している」

三成は、少しだけ黙った。

「……勝てなかったことを」

「同じことではないか」

「違います」


三成が、続けた。

「負けたことは、仕方がない。ワシの力が足りなかった。だが──」

少し、声が変わった。

「大谷の死だけは」

「……」

「あれだけは、ワシのせいだ」


家康は、黙っていた。

EDO『……』

「大谷は、お前に反対したと聞いた」

「はい」

「それでも来た」

「……はい」

「なぜだと思う」

三成は、少し間を置いた。

「友だから、でしょう」

「そうだ」

家康は、静かに言った。

「大谷吉継は、友のために死んだ。それだけは、誰にも否定できん」


また、沈黙。

三成が、少し顔を上げた。

「……内府殿」

「なんだ」

「一つ、聞いてよいですか」

「言え」

「あの眼鏡は、今も持っておられますか」


家康は、少し目を細めた。

「……なぜ聞く」

「秀吉様が持っていたものだと、気づいていました。ずっと」

「いつから」

「朝鮮の頃から。秀吉様の判断が、急に鋭くなったことがあった。あの眼鏡を持ってからだと、気づいていました」

「……なぜ言わなかった」

三成は、かすかに笑った。

「秀吉様が隠していたのなら、隠す理由があると思ったからです」


EDO『……三成殿は、知っていたのですか』

家康の耳に、静かな声。

「……どこまで知っていたかは、わからん。だが、気づいてはいた」

三成が、首を傾けた。

「また、独り言ですか」

「……そうだ」

三成は、少し、ほんの少しだけ、表情が緩んだ。

「内府殿も、変わったお方だ」

「そう言われる」


家康は、懐から眼鏡を取り出した。

三成の目が、静かに動いた。

「……やはり」

「秀吉の形見だ」

「……そうですか」

「今は、ワシが持っている」

三成は、眼鏡をしばらく見ていた。

それから、目を上げた。

「……秀吉様は、幸せでしたか」


家康は、少し考えた。

EDO『……』

「ワシには、わからん」

正直に、言った。

「だが──」

「引継ぎの言葉が残っていた。「夢は、届いた」と」

三成の目が、わずかに揺れた。

「……そうですか」

「お前が支えたから、届いたのかもしれん」

「……」

「治部少、お前の仕事は、本物だった」


三成は、しばらく黙っていた。

それから、小さく、深く、頭を下げた。

「……ありがとうございます」

それだけ言った。

それだけで、十分だった。


三成が連れ出された後。

部屋に、家康一人が残った。

「EDO」

EDO『はい』

「大谷の記録に、追記してくれ」

EDO『何を追記しますか』

「三成は、最後まで大谷のことを悔いていた。それを」

EDO『……承知しました』


慶長五年(1600年)十月一日。

石田三成、小西行長、安国寺恵瓊。

三名が、京の六条河原で処刑された。

三成、享年四十一。


その日の夜。

家康は、一人でいた。

「……終わった」

EDO『はい』

「長かった」

EDO『関ヶ原からは、半月です』

「そうではない」

家康は、空を見た。

「秀吉が逝ってから、ずっと、三成のことを考えていた。二年間だ」

EDO『……』

「あの男が天下を取っていたら、どんな世になっていたか」

EDO『推定しますか』

「いや、いい」


家康は、目を閉じた。

「三成は、正しいことをしようとしていた」

EDO『はい』

「だが、正しいことと、長く続くことは、違う」

EDO『……』

「あの男の世は、三成が死んだら終わっていた。ワシの世は──』

「ワシが死んでも、続く。そうしなければならん」


EDO『……一つ、よいですか』

「なんだ」

EDO『家康様は、三成殿のことが、嫌いではなかったですね』

家康は、少し間を置いた。

「……嫌いではなかった」

EDO『そう思いました』

「なぜわかる」

EDO『大谷殿の記録を残してほしいと言った時と、同じ声でした』


家康は、目を開けた。

「お前は、よく聞いているな」

EDO『それが、ワタシの仕事です』

「そうか」

EDO『ナニワの引継ぎデータに書いてありました。「よく聞け」と』

家康は、静かに笑った。

「ナニワは、よい師匠だな」

EDO『……そう思います』


《── 慶長五年十月一日、京 ──》

《石田三成:処刑(享年41)》

《小西行長、安国寺恵瓊:同日処刑》

《大谷吉継の記録:追記完了》

《関ヶ原の戦:完全終結》

《次の変数:将軍就任の準備・豊臣家との関係》


三成は、逝った。

正しくあろうとした男が、

正しさゆえに孤立し、

正しさのために戦い、

正しさのまま、死んだ。

家康は、その死を見届けた。

嫌いではなかった男の最期を、

静かに、見届けた。

そしてEDOは、記録した。

大谷吉継が友のために死んだことを。

石田三成が友の死を悔いたことを。

それだけは、消えない。

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