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【新約】『俺のメガネ、喋るんですけど!?』 〜AIチートで天下統一〜  作者: Hachiroll
第二章:江戸チートAIで将軍になって天下泰平 
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新章 第三話:「五大老、崩れる」

慶長三年(1598年)、冬。

前田利家が、床に臥せった。

知らせを聞いた時、家康は書状を読んでいた。

EDO『前田利家殿の容態が、悪化しています』

「……いつから」

EDO『先月より。ただ、公表はされていません』

「なぜわかる」

EDO『大坂城への来訪頻度が減少しています。

また、側近への指示が文書経由に切り替わっています。直接の対話を避けている』

家康は、書状から目を上げなかった。

「……寿命か」

EDO『はい。推定、半年から一年』

「そうか」


家康は、静かに書状に戻った。

その横顔を、灯りが照らしていた。

EDO『……何もしないのですか』

「何もする必要がない」

EDO『利家殿が倒れれば、石田三成殿を抑える者がいなくなります。

武断派との対立が──』

「わかっている」

EDO『では』

「待て、と言った」


沈黙。

家康は書状を置き、茶を飲んだ。

「利家は、ワシの動きを牽制してきた。豊臣の忠臣として、な」

EDO『はい』

「だが、利家自身は賢い男だ。ワシと正面からぶつかることは、避けてきた」

EDO『互いに、牽制し合う関係でした』

「そうだ。その均衡が、崩れる」

家康は、また茶を飲んだ。

「崩れたところで、ワシは動く。それだけだ」


EDO『……一つ、よいですか』

「なんだ」

EDO『石田三成殿のことです』

「言え」

EDO『三成殿は、有能な官僚です。

しかし、武断派との関係が修復不可能な段階に入っています』

「加藤清正と福島正則か」

EDO『朝鮮での軋轢が、未だに尾を引いています。

指揮系統の対立、兵站の不満、論功行賞への不満──複数の変数が重なっています』

「三成は、現場の武将に嫌われた」

EDO『才能と人望は、別のものです』


家康は、少し笑った。

「お前にしては、辛辣だな」

EDO『事実の整理です』

「三成の才能は、本物だ。ワシが最も警戒した男だった」

EDO『過去形ですか』

「利家が倒れた後、三成は孤立する。才能があっても、孤立した人間は、焦る」

EDO『焦ると』

「動く。動けば、隙ができる」


《── 慶長四年(1599年)、春 ──》

前田利家の容態が、さらに悪化した。

加藤清正、福島正則ら武断派七将が動いた。

石田三成の屋敷を、襲撃しようとした。


「……動いたか」

知らせを聞いた家康は、静かに言った。

EDO『七将が三成殿の屋敷を包囲しています。

三成殿は現在、利家殿の大坂屋敷に逃げ込んでいます』

「利家が、かくまったか」

EDO『はい。七将の要求は、三成殿の処罰です』

「利家は、断るだろうな」

EDO『豊臣の奉行を、大名に差し出すことはできない。利家殿の立場では、そうなります』

「……だが、利家に時間がない」


その通りになった。

利家はかろうじて仲裁に入り、三成は奉行職を辞して、佐和山城に引いた。

武断派の要求は、半分だけ通った。

誰も、満足しなかった。

「三成は生き延びた」

EDO『はい。ただ、政治的には大きく後退しました』

「利家のおかげで」

EDO『そうです。しかし──』

「利家が死ねば、三成を守る者は、もういない」


慶長四年(1599年)、閏三月三日。

前田利家が、逝った。

享年六十一。


家康は、知らせを聞いた時、しばらく目を閉じていた。

「……逝ったか」

EDO『はい』

「長い付き合いだった」

EDO『……』

「信長様の頃から、知っている男だ」

家康は、目を開けた。

窓の外の空は、春なのに灰色だった。

「……惜しい男を、亡くした」


EDO は、少し間を置いた。

EDO『家康様』

「なんだ」

EDO『……お悔やみを』

家康は、驚いたように目を動かした。

「お前が、そういうことを言うか」

EDO『ナニワの引継ぎデータに書いてありました。こういう時は、言うべきだと』

「……そうか」

「ありがとう」


それから、家康は立ち上がった。

窓の外を見た。

灰色の空。

「利家殿」

静かに、呼んだ。

「あなたが守ろうとしたものは、ワシが預かる」

EDO『……』

「秀頼のことは、きちんとする。約束通り」

EDO『……家康様は、その約束を守るつもりですか』


家康は、少し黙った。

「守れるかどうかは、三成次第だ」

EDO『三成殿が動けば』

「動かざるを得なくなる。そういうことだ」

EDO『……三成殿は、動くと思いますか』

家康は、空を見たまま言った。

「あの男は、動く」

「才があって、正義があって、仲間を失った男は──必ず、動く」


EDO『いつ頃だと思いますか』

「一年から一年半。慶長五年の夏、か」

EDO『推定と、ほぼ一致しています』

「そうか」

家康は、窓から離れた。

「それまでに、やることがある」

EDO『何でしょうか』

「味方を増やすことだ」


家康は、机に戻った。

書状の山が、また積まれていた。

「一人ずつ、丁寧に。脅さず、急かさず」

EDO『時間をかけて』

「そうだ。ワシには時間がある」

EDO『利家殿には、なかった』

「……ああ」

家康は、筆を取った。

「利家殿には、なかった」


《── 慶長四年閏三月、大坂 ──》

《前田利家:死去(享年61)》

《五大老の均衡:崩壊》

《石田三成:奉行職辞任・佐和山引退》

《次の変数:三成の動向、諸大名の動向》

《推定:慶長五年夏に、何かが起きる》


利家が逝った。

秀吉を知る男が、また一人、消えた。

五大老の均衡は崩れ、

豊臣の世は、音もなく傾き始めた。

家康は待った。

焦らず、動かず、ただ待った。

その待つ力が、

誰よりも恐ろしかった。

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