表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラスティア群像劇~第2章~  作者: niseimo38
第6章~修学旅行という名のゆがみ調査~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/83

081、議題の停滞

AI作成セリフ筆者

アナスタシアは議場に立ち、静かに資料を閉じた。


「……以上が、今回のゆがみと裂け目の変動経過です」


一拍の間ののち、ざわめきが広がる。


「しかし、この程度の揺れ、元からあったではないか」

「そもそもデータが一カ所だけでは判断できん。他都市の状況は?」

「現在、調査を進めている段階です」


アナスタシアは簡潔に答える。


「では、その結果を待つべきだろう」

「ゆがみの利用を控えるというが、根拠が弱い」


議員たちの声は、どれも理にかなっていた。

アナスタシアは一度視線を落とし、次の言葉を選ぶ。


「現在、アングリア国ではゆがみ利用禁止法案が可決されています」


その一言で、場の空気がわずかに変わる。


「突然の全面禁止だと? 経済はどうなる」

「研究者たちが黙っているとは思えんぞ」

「皆さんは、どのようにすべきだとお考えですか?」


問いかけに、議場は再び動き出す。


「現状維持で十分ではないか」

「禁止ではなく、管理下に置くべきだ」

「国の統制があれば問題は抑えられるだろう」

「現時点でゆがみは国境付近に集中しています。ジャヤ国との交渉が必要になります」

「ならばジャヤに任せるのが筋だ」

「いや、我々が主導すべきだ」

「いずれにせよ、データが不足している。今動く理由はない」


結論は出ない。だが、それは混乱ではなく、整然とした停滞だった。

アナスタシアはゆっくりと顔を上げる。


「……まずは意見がまとまってからの方がよさそうですね。こちらでは引き続きデータ収集を進めます。各議員は、今後の交渉および対応についてご検討ください。本日はこれにて解散とします」


木槌の音が、静かに響いた。



議員たちが去った後の議場は、驚くほど静かだった。

広い空間に残されたのは、アナスタシアただ一人。

彼女は席に戻り、再び資料を開く。


「……このデータが本当なら、対策を講じなければまずいのだがな」


記録には、明確な数値が並んでいる。

ゆがみが裂け目へと変化するまでの間隔が、わずかに短縮している。

三件中二件で、発生が一日早まっていた。


「……やはり誤差か?」


指先で頁をなぞりながら、アナスタシアは小さく息をつく。


「他都市のデータが来れば、判断できるのだが……」


そのとき、不意に背後から声がした。


「随分とお困りのようだね、アナスタシア」


振り返ると、一人の男が立っていた。


「……トルキアか」


トルキア・ジェルデウォン。ウォル国元首。

彼は気軽な調子で歩み寄る。


「そのデータ、少し見せてもらってもいいかな?」

「構わない」


資料を差し出すと、トルキアは興味深そうに目を通した。


「なるほど……ゆがみと裂け目の発生頻度の関係、か。面白いね」

「面白いかどうかはさておき、対策を取りたいのだがな。どうにも材料が足りない」


アナスタシアは正直に言う。


「他都市――アングリアは難しいとしても、紅孩公国や狐火和国、セントビア王国の状況が分かれば、もう少し見えてくるはずだ」

「ふむ。議員たちも慎重だったみたいだね」


トルキアは資料を閉じ、軽く肩をすくめた。


「まあ、当然といえば当然だ。証拠が足りない以上、動けない」


その口調に、否定はない。ただ事実を述べているだけだった。

アナスタシアはわずかに視線を逸らす。


「……だからこそ、動けずにいる。なら、動ける場所から動けばいい」


トルキアはさらりと言った。


「議会が拾えないものでも、拾えるところはある」


アナスタシアは眉をひそめる。


「それは正式な手続きではないな」

「だが、止まっているよりはいい」


トルキアは微笑む。


「ささやかながら、手助けをしよう。ホールディのところに行くといい」

「ホールディ……?」

「ああ。もう動いているはずだよ」


意味を問う前に、トルキアは踵を返した。


「じゃあね。いい判断を期待しているよ」


軽やかな足取りで、彼は議場を後にする。

残された静寂の中、アナスタシアはしばらく立ち尽くしていた。

やがて、手にした資料を見下ろす。


「……議会では拾えないもの、か」


小さく呟き、彼女は決意を固めるように息を吐いた。


「行ってみるしかないな」


広い議場に、再び静寂が戻る。

だがその静けさは、先ほどとは少しだけ意味が違っていた。


ウォル国では議会が開かれていましたが、思うように進んでいないようです。

ゆがみと裂け目の発生頻度の関係。発生が一日早まっていた意味とは?

これは果たして証明できるのでしょうか? 続きが気になりますね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ