064、遺志と恋模様
筆者執筆AI加筆
境内を一通り見て回り、ヒサメとスキアは再び本殿の前へと戻ってきた。
そこにはすでに、一人の人物が立っていた。
静かな威厳をまとったその存在は、二人を見てゆっくりと口を開く。
「よう来ましたな、スキアよ」
スキアは一歩進み、相手をまっすぐ見据える。
「あなたが、紫妖狐さん……ですか?」
「左様。立ち話もなんじゃ。本殿の中へ入りたまえ」
「分かりました」
ヒサメとスキアは本殿へと足を踏み入れた。
中は静寂に包まれ、外の風の音だけが微かに聞こえてくる。
紫妖狐はゆっくりと二人を見回した。
「さて、スキアよ。此度はどのような用件でこの地へ来られた?」
スキアは背筋を伸ばし、真剣な眼差しで答える。
「白雪さん、連狼さんから言伝を預かりました。
『こっちは大丈夫』と」
紫妖狐の目が細くなる。
「……そうか。あ奴も立派になったもんじゃ」
一瞬だけ遠い目をした妖狐。
しばらくしてスキアは話す。
「この国は、地域限定修復師が既に存在しているようですね」
「ああ。私が長い間この地を修復しておったからな。最近になって、チェルシーとヒサメが頭角を現してきてな。今は二人と、同じ時に芽を出した縫界衛士、月詠に任せておる。私とライは、のんびり社で話をしておるだけじゃ」
スキアはほっと息をついた。
「次代を担う修復師もいるのですね……。少し安心しました」
紫妖狐は面白そうに眉を上げる。
「ほう?」
スキアは迷いなく言葉を続けた。
「私は各地に地域限定修復師を広めたいと考えています。それは、世界を救うため」
「大きく出たな。世界か……」
「はい」
スキアの返事は、はっきりとしていた。
紫妖狐はしばらく彼の顔を眺める。
その視線には、どこか試すような色があった。
やがて、ゆっくりと問いを投げる。
「……お主は、何を救うのじゃ?」
一瞬の沈黙。
スキアはわずかに視線を落とし、考える。
そして静かに答えた。
「……そうですね」
「遺志、は答えになりますか?」
その言葉を聞いた瞬間、紫妖狐の口元が大きく歪んだ。
「……クックックッ!」
本殿に笑い声が響く。
「遺志、か! 意志ではなく“遺志”!」
妖狐は楽しそうに笑いながら言った。
「かような考えを持つ者は初めてじゃ。私ら修復師では辿り着けぬ、その先を見ておる!」
スキアは静かに頷く。
「気に入った!」
紫妖狐は満足そうに言った。
「そなたの思い、確かに受け取ったぞ。これからはここ狐火和国でも修復師の育成の手助けをしようではないか」
「ありがとうございます」
スキアは深く礼をする。
「良いのじゃ。お主の目や心を見て決めたことじゃからな」
紫妖狐はそう言い、しばしスキアの顔を眺めていた。
やがて、ふっと笑う。
「ところでスキアよ」
「なんでしょうか?」
妖狐の目が、どこか楽しげに細められる。
「お主、好意を寄せる女子はおるかの?」
「ぶふっ!?」
ヒサメが思わず吹き出した。
スキアは少し驚いた顔をしたものの、すぐに答える。
「いえ、特にいませんが……」
「左様か。案外近くに現れるやもしれんぞ?」
「よ、妖狐様!?」
ヒサメが慌てて声を上げる。
スキアは少し視線を落とした。
「そう、ですか……」
しばし考えるように黙り込み、やがて小さく呟く。
「私としてはそのつもりではないが……。しかし、行動を思い返すと……」
「す、スキア?」
ヒサメが思わず声をかける。
スキアは顔を上げた。
「ん? 何だ?」
「い、いえ! 何でもないですわ!」
ヒサメは慌てて首を振る。
紫妖狐はそれを見て、くすりと笑った。
「フフフ」
スキアは気を取り直したように言う。
「妖狐さん。この国を見て回ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わんぞ」
「ありがとうございます。ヒサメ、案内してくれ」
「は、はい! ぜひ!」
二人は本殿を出て、境内へと歩き出す。
その背中を、紫妖狐は静かに見送っていた。
ヒサメも――“スキア”も。
自分たちの声が、ほんの少しだけ上ずっていたことに。
まだ、気づいてはいなかった。
スキアは遺志を救うために行動している。それは、終わった世界の救済。
そして、恋模様もどうやら進展があったようですね。
この後国を回るようですが、ヒサメの国の人気を考えると、一筋縄でいくんでしょうか?
みんなニヤニヤしながら見ていってね!




