037、ただいまじゃなくてこんにちは
筆者執筆、一部AI作成
朱雀町の入り口が視界に入ると、卯月はにっこり笑った。
卯月「見えてきたねえ、ソメシノさん。あれが私たちの故郷『朱雀町』よ」
ソメシノは少し息を呑んだ。
ソメシノ「活気があって、良い街ですね」
和美とイザヨイは、幼いころの記憶と重ね合わせるように、緊張した面持ちで街並みを見つめる。
卯月は後押しするように声を掛ける。
卯月「和美、イザヨイ。きっと大丈夫」
和美「……うん」 イザヨイ「……」
和美は控えめに頷き、イザヨイもそれにならう。
源三郎が大きな声を上げる。
源三郎「ん? お前たち!? 帰ってきてくれたのか!」
卯月「やあ、ただいま」
和美「ただいま」
源三郎はにっこり笑いながら彼女たちに言う。
源三郎「おかえり。卯月、和美、イザヨイ。よく帰ってきてくれた。お前たちがいなくなってから、明奈さん、ずっと泣いていたからな」
卯月は肩をすくめて続ける。
卯月「まあいきなり幼い娘が家出したら泣くわな」
源三郎「ちげえねえ」
そこまで話すと、源三郎はソメシノに視線を向けた。
源三郎「そちらのべっぴんさんは誰だい?」
ソメシノ「初めまして。ソメシノと申します」
源三郎「どうも。私は桂源三郎。専任剣士をしている」
卯月は少し困った顔で肩をすくめる。
卯月「さて、と。帰ってきたはいいけど、私たち、住む家ないんだよね。どうしよう?」
源三郎「ちょいと待ってな。秀一に話をしとくから」
卯月「お、ありがとな」
源三郎は頷き、秀一に連絡を取りに行く。
明奈の声が震える。
明奈「和美! ほんとに和美なの!?」
和美「お母さん、ただいま」
明奈「全く、どれだけ私が心配したことか……」
秀一は静かに迎える。
秀一「和美。おかえり」
和美「お父さん。ただいま」
橘花子はソメシノや和美の姿を見てもそっぽを向いたままだ。
「……フン!」
秀一は深く息をつき、和美たちを順に見渡す。
秀一「さて、源三郎から話は聞かせてもらった。住む場所がないそうだな」
卯月「はい、私たち――」
秀一「本当に、住む場所はないのかい?」
卯月「え?」
卯月は思わず言葉に詰まる。
「そこの新しく来た方は別として、お前たちには帰る場所があったろう? そこに戻らないのかい?」
卯月「……私もそれを考えてました。でも、和美は、家じゃ居辛いだろうし、イザヨイも気まずい。私だって、家族の反対を押して飛び出したんだ。それに、ソメシノさんがいる。みんなの面倒を見るには、私たち4人が、一緒に暮らさないといけないと思うんだ」
秀一は鋭く卯月を射抜く。
秀一「この町に戻ってきて、家族と鉢合わせしても、気まずくないと?」
卯月「うっ……。それは……」
卯月はたじろいだ。
和美「お父さん、怒ってる?」
和美は不思議そうに父、秀一を見つめる。
秀一は和美の言葉には返事を返さず、毅然とした態度で告げる。
秀一「和美、イザヨイ、卯月、そして、ソメシノさん、だったかな。町の長代理として聞く。家族に戻らず、それでもこの地で暮らす、その覚悟は、どこからきている?」
ソメシノが口を開く。
ソメシノ「それは私がお答えします」
秀一「ほう、あなたが……」
秀一は目を細めてソメシノに向き直る。
ソメシノ「私は、和美、イザヨイに心を救っていただきました。和美はこの地に傷があるように思います。私は彼女の傷を直すためにこの地に来ました」
秀一「ふむ。和美は?」
和美ははっきりとした口調で伝える。
「ソメシノさんとこの町を守るため」
秀一「イザヨイは?」
イザヨイは迷いなく答える。
イザヨイ「和美を守るため」
秀一は卯月に視線を移し,問う。
秀一「では、卯月は?」
卯月は小さく微笑む。
卯月「私は……。うん。私は、彼女たちを見届けるため」
秀一は鋭く彼女を見て再び問う。
秀一「何を見届ける?」
卯月は穏やかに伝える。
卯月「彼女たちが”らしく”生きるのを」
秀一は視線を外さず、更に問う。
秀一「では、卯月よ。それを見届けたら、どうする?」
卯月は肩をすくめて答える。
卯月「その時は、素直に家に帰るさ。だって、私がいなくても”らしく”生きてるんだから」
秀一は静かに息をつき、深く頷いた。
秀一「そうか……。お前たち。よく成長したな」
卯月「それじゃあ!」
秀一「豪華なのは作れない。簡素だが、小屋を仕立てるとしよう。一番さん」
町に戻る準備の話になると、秀一は一番に目を向ける。
一番はにやりと笑う。
一番「お、やっとオレっちの出番かい。全く、すぐに孫を抱かせろよなあ」
秀一は申し訳なさそうに謝る。
秀一「すみません。でも、町を勝手に出ていった彼女たちの覚悟を問うのは、町長の責任ですから」
一番「他の奴らはまだ覚悟が決まってないやつばっかだ」
一番は胸を張って告げる。
一番「だが、敬三と並んでこの地を作ってきた俺には、敬三が守ったこの子らをちゃんと育てる義務があるってもんだ」
イザヨイ「おじいちゃん」
イザヨイは家族がここまで思っていることを初めて知った。
一番「それで、どこに小屋を建てるんでい?」
秀一はソメシノの方をちらりと見た。
秀一「あの木の近くに建ててくれ」
一番は眉をひそめる。
一番「あん? あんな枯れ木のそばにか? 花が咲く木なら他にあるだろう?」
秀一「いや、あそこ“が”いいんだ」
一番「分かったよ。お前ら。3日待て。それまでは悪いが野宿な」
卯月はにっこり笑う。
卯月「準備はしてありますよ」
一番は肩をすくめた。
一番「なら話は早い。最高速で建ててやるからよ」
朱雀町の木漏れ日の下、ソメシノ、和美、イザヨイ、卯月の4人は、新しい生活の始まりを胸に秘め、未来へと一歩を踏み出した。
秀一は和美たちが出ていった後、沈んだ村を盛り上げるべく奮闘し、また敬三の後を継ぎ町を取り仕切っていました。彼からしてみれば、和美たちは娘である前に村を沈ませた厄介者です。
だから、厳しく覚悟を問いただしました。彼なりの責任のあり方です。
そして、認めた。彼女たちは、ただの厄介者ではない。町のことを考えて出ていき、帰ってきた者だと。




