5.国王の胃は痛くなる。
タイミングいいな。
隣国の王家から王家主催の舞踏会の招待状が届いた。
俺とイリーナは参加。ジョニーは参加させる(・・・)。
「セリーヌも舞踏会参加するか?」
「うーん、話のタネになりそうだし参加しようかな?」
そんなのが話のタネになるのか…。恐ろしい学校だなぁ。
「スザンヌもさんかするー!!」
おぉ!まぁそうだよな。家族で一人だけのけ者状態になりそうだったんだもんな。
「そんじゃあ、みんな採寸して服を作ろう。スザンヌは初めてか?ドレスだぞ?」
「やったぁ!おひめさまみたい!」
キラキラした目で言ってるけど、事実スザンヌはお姫様なんだよ?
もちろん服にはクズにしかならない宝石を散りばめる。
「そういえば、ジョニーと私は今年デビュタントよね?また採寸するの?」
「成長期って恐ろしいよな……。一応採寸しておこう」
真っ白いドレスなりを着るのか……。俺は感無量だ。
「セドリック様、想像で泣かないでくださいね?」
おう、何てこと、イリーナに見透かされた。
舞踏会当日、
俺とイリーナはペアルックの服装。もちろん要所要所に互いの色をつけている。ラブラブ度をアピール。
ジョニーは、ザ・正装って感じの服装。
セリーヌはマーメイドラインのオフショルダーのドレス。
俺は露出についてセリーヌと意見を出し合ったが、これが限界。互いの妥協地点。マーメイドラインについては「若いうちにしか着れないかもしれないから」らしい。よくわからん。「オバサンになったら着れないもん!」って言った。近くでイリーナがちょっと怖い顔してたぞ?
スザンヌはミニイリーナみたいで実に愛らしい。
家族の写真が欲しい!と俺は切に思った。
もちろん全員の服に宝石としての価値がなくなってしまったクズの宝石が散らばっている。
城の守りはワーグに頼んでいる。普段から城には人がいないんだけど…。最小限しか。
そんなんで、家族全員で隣国に小旅行となった。
舞踏会に出席するために、豪華な馬車での旅行。スザンヌに「こんなばしゃあったんだぁ」と言われた。お父さんはショックです。外面がいい王室なのです……。
御者は俺とジョニーが交代でしました。豪華なので、馬車内でのんびりと宿になる事も可能。
しかし、道すがら盗賊に襲われることはよくある事なので、女性陣にはのんびりしてもらったけど、俺とジョニーはほぼ数日徹夜で隣国まで行きました。
隣国の城まで到着した時、招待状を見せて俺達は城の一室に案内された。
広い一室に案内された。
イリーナ曰く、「なんだか落ち着かないわね」
普段狭いところで生活してるもんな。スイマセン。
ジョニーはというと、「普通の王様とかってこんな感じなのかな?」
俺だって王様なんだけど?と思う父なのです。
セリーヌに至っては、「ああ、友達の言ってた『国賓待遇』ってこんなのなんだ」
スザンヌは、「『こくひんたいぐう』ってなに?」って聞いてるし、さっきまで無邪気に「おひめさまみたい!」ってはしゃいでたのに……
うーん、セリーヌの友達も国賓待遇をされるような友達なのか。学園内のヒエラルキーの上位の方にいるのかな?
俺としては爵位に関わらずに仲良くして欲しいが、外の世界を学ぶとなるとそうも言ってられないよなぁ。貴族特有の嫌味も躱せるようになってもらいたいし。実に難しい。
「オスメーモ王国の皆様、そろそろご入場ですのでご準備のほうをお願いします」
めっちゃ、敬語だけど大丈夫か?
「おとーさま、どーゆーいみ?」
ほら、わかってない子がいた。
「そろそろ、会場に行くから準備してねーって事。スザンヌは準備できてる?」
親指をグッと上げる仕草を見せた。
可愛いよ。可愛いんだけど、そんなの誰に習ったんだ?
「ちゅーぼーのワーグ!」
また、あいつか!まったく、ろくなことを教えないなぁ。
「オスメーモ王国の皆様の入場です」
歓声と共に俺ら家族は会場に入った。
キラキラしい服装が眩しいだろう?そうだろう。我が国の特産だからな。
……っといけない。舞踏会主催者に挨拶に行かないとな。
隣国の国王陛下までの道は何故だろう?パックリ開いている。
「本日はお招きいただき誠に嬉しく思います。後ろに控えておりますのが私の家族にございます。左から我が妻のイリーナ、長男ジョニー、長女セリーヌ、次女スザンヌにございます」
「うむ、大儀であった。お主も若くして玉座を任され、大変だろう?」
「良き民に支えられております」
実は手紙を送っていた。
平たく言うと…長男の嫁を探しているよーん☆という手紙。
「うむ。今宵は楽しまれよ」
「有難きお言葉」
ふぅ、貴族のやりとりは面倒だなぁ。
「さて、ここで問題だ。今日は舞踏会に来たわけだが……各々ファーストダンスは誰と踊る?俺はもちろん愛するイリーナだ」
「無難なところで俺はセリーヌかなぁ?」
まぁ、俺もセリーヌがどこの馬の骨とも知らない男と踊るのは見たくないから、セリーヌがジョニーと踊ってくれるのは助かる。
「ねー、すざんぬはー?」
「スザンヌはまだダンスを習ってないでしょ?今回は見学してなさい。ダンスできるようになったら素敵な殿方にエスコートしてもらうのよ!」
……イリーナ、なんて俺の胃に攻撃的な言葉を。
「わかったぁ。もっとべんきょうして、おにーさまとだんすできるようにするー!」
「そうね、いいこ。今日はよく見ておくのよ」
スザンヌのブラコンはいつ治るんだろう……?
俺達親子のダンスは眩くキラッキラだった。
親達はラブラブでキラキラしてるし、技術も伴い好評だった。
双子でのダンスは物理的にキラキラで、技術はまだまだだったが、息はピッタリでこっちも好評だった。
「おとーさまとおかーさまも、おにーさまとおねーさまもすてきでした!はやくだんすをべんきょうしておにーさまとぺあになるのです!」
とスザンヌが燃えていた。……悪いな、そのお兄様のペアの相手を探すのがこの舞踏会の目的なんだよ~。
「ジョニー殿下、次の曲を一緒に踊ってくれませんか?」
「いいえ私と!」
「なんですか、殿下と踊るのは私です!」
「私です!」
ジョニー争奪戦勃発か?本人は至って状況にひいてるけどなぁ。そもそもジョニーの好みってどんな女性なんだ?
「おい、ジョニー。どんな女性が好みなんだよ?もう片思いの相手とかいたりするのか?」
ジョニーが顔を真っ赤にする。マジかよ?ジョニーの行動範囲なんて、うちと農地くらいだけど?
「まさか……農家の子?」
ジョニーが首を縦に振った。
いやね、うちは一応王家なわけで。平民の子と第一王子が結婚できるかな?
「父上!わかっているんです。彼女とはどうにもならないと。帝王学できちんと勉強したつもりです」
でもなぁ、人の気持ちだし尊重してやりたいよなぁ。
「その子はお前の気持ちを知っているのか?」
首を縦に振った。
「彼女も自分の身分は弁えてるから。って」
そんな人生諦めたような顔して言うなよ~。
「彼女は根性ある子か?農家の子が淑女教育を受けなきゃいけないけど、音をあげたりしないか?」
「か……彼女はそんな子じゃありません!」
それなら、彼女をどっかの高位貴族の養子にしてもらえば結婚が可能になる。
「と、その前に、俺が抜き打ちで彼女を見るからなぁ。彼女の名前は?」
「カエ」
平民に家名はないよな。ま、今度農地の方に行く時にチェックしよう。
「あの……父上。実に言いにくいのですが、そうこうしているうちにセリーヌのやつが知らない男と踊ってます」
何―――――!!!!
「うふふ、父上が離れているから貴方と踊り始めるのは簡単でした」
「学園ではこんなにできないもんな」
「フォークダンスかしら?」
「そうだな(笑)」
セリーヌのパートナー役のやつは……まさかのこの国の王子か?
国王の方をちらりと見ると、ニコニコと見ている。謀られた!狸か!?
俺にはスザンヌが残されている!と俺は自分を慰めた。
「あらあら、セリーヌってばこの国の王子とペアでダンスを踊ってるみたいね。しかも、学園で約束していたみたいだし……。これは私達家族が謀られた感じねぇ。セリーヌと王子に。まぁでも第一王子が相手ならセリーヌの相手として申し分ないわ」
イリーナが……イリーナが……俺のハートを抉りまくる。なんならその抉ったハートをピンヒールで踏む!胃薬を持参すれば良かった。
「おとーさま、いがいたいの?やっぱりいちょーきょじゃくなの?」
「スザンヌは優しいなぁ、スザンヌをぎゅうってしたら治るかも」
「「ぎゅうー」」
「おとーさま、くるしいよー」
俺はあの光景を見るのが苦しい。
そんなんで、舞踏会の夜は過ぎ去ったのでした。
肝心のジョニーのパートナーを探すことはできず、……セリーヌの裏切り(?)が発覚した舞踏会だった。
「あーん、ごめんなさい!確かに彼と連絡して舞踏会にうちの家族を招待してね。って長期休暇の前に約束してたけど……」
「で?彼とはどこで出会ったの?」
イリーナはかなり食いつき気味でセリーヌに迫る。
俺は「スザンヌにはまだ早い!」とスザンヌを部屋に連れて行った。
「彼とは生徒会で一緒だったのよ。同じ王室ってことで色々話すようになって……それでね」
頬を染めて話をする娘など見たくない!俺はジョニーと男の会話をすべくジョニーを風呂に誘った。
うちは風呂が広いので、3人くらいは入れます。大人サイズで3人くらいです。
あぁ、昔はジョニーとセリーヌを風呂に入れてたなぁ。と懐かしく思う。
風呂にて…
「それでさぁ、カエって子は性格いいんだろうな?この国の王妃になるんだから、覚悟が必要だぞ。国内では慎ましく、農仕事も嫌がらずにして、国外ではこの国の主産業である宝石のアピールに外交をできないといけない。‟王妃“ってネームバリューで贅沢できると思ったとかは許されないことだけど、それでもOKな子だろうな?」
「性格はいい子ですけど……王室のことちゃんとわかってるかは正直疑問が残る」
「うーん、やっぱり俺が直接、見定めよう!」
その時のジョニーの冷たい目線を俺は見なかったことにした。だって風呂上がりなのに寒いのやだもん。




