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音を頼りにナビに提示されたルートを通ってやってきたのはエレベーターホール。そこに至るまでの道にあった扉を開ける手間があったので、到着までに少々時間がかかった。けれどそれでも2~3分。入口からそっとエレベーターホールを覗くとそこには数体のセキュリティーワーカーらしきドラム缶型機械が集まっていた。
「あれはセキュリティーワーカーで間違いない?」
「はい。そのようですが、問題はなぜ今動き出したのかということでしょう」
「だね。というか、あれは何をしているんだろ?」
セキュリティーワーカー。このラビュリントス9が稼働していた当時。様々な施設において危機管理は全自動化し、人間の管理官がついてはいるものの実際の警備作業はこの自立型機械が行うようになっていたらしい。鈍い銀色のドラム缶の足元に一対のタイヤを付けたような姿をしており、前後左右にある小さな赤いレンズで周囲を確認しているので死角は存在しない。蛇腹間接になっている2本の腕の先端部は電磁警棒にもなっており、不審者などへの対応も可能。
道中聞いていた情報通りの姿はいっそ愛嬌があるとも言えるようなものだが、数体……ひのふのみのよの……10体が隊列を組むように並んでいるとそれはなかなかの迫力だった。
「明らかになにかの指令を受けて行動しているように見えます。……通信してどのような指令を受けているのか確認することも出来ますが、私の存在、ひいては装着者がいることも知られてしまいます。どうなさいますか?」
「こっそりとはいかない?」
「残念ですが私にそのような機能はありません」
「だよね」
「……申し訳ありません」
「いやいや、別にラビが謝ることじゃないよ」
ちょっとした軽口のつもりだったのだけど、神妙に謝られてしまいちょっと焦った。なんだろうね、やけに人間くさいというかなんというか、技術の進歩って凄いわ。
頭を一掻きして気分を変え、とりあえず現状をどうするか考える。
そうこうしている間にセキュリティーワーカーは隊列を変え、2台ごと組になっている。思うにこれから施設内の捜索に出るのかな?
「見つかってもいいよ、何の為に動きだしたのか調べておくれ」
「よろしいのですか? もう少し待てばバラバラに動き出すようです。それからのほうが安全なのでは?」
「んー、なんというか、迫力あるのは認めるけどね。なんでかアレを見ても怖くはないんだ。もし戦うことになってもどうとでもなる気がする」
「非常に感覚的な感想であり、論理的ではありません」
「そうかもね、でも事実だから仕方ない」
「危険です」
「一般的にはね。でも、僕なら問題なく勝てるよ」
自分でも不思議だが、目の前の機械程度なら何台いようが問題にならない自信がある。そこには虚栄心も慢心もないのが分かった。ただそれが事実なのだろう。……眠る前の、記憶がある頃の自分は何者だったのかね?
「……承知しました。セキュリティーワーカーへの指令を確認、解析します」
「ん、ありがとう」
僕の態度をどうとったのか、ラビが折れてくれた。ここまでも何度か見た赤い光線をセキュリティーワーカーへ向けて飛ばすと、即座に結果を報告してくれる。
「研究対象の逃亡により、捕縛指令が発令されています。なお、対象の危険度がSランクの為、対象の生死は問わず。指令の発信者はラビュリントス9の中央指令室です」
「生死問わずって、ずいぶんヒドイ扱いだね」
「危険度Sランクは軍事的な武装集団に相当します。当然の措置です。それと」
「それと?」
「気付かれました。来ます!」
顔を上げるとそこにはこちらを見つめているらしい10個の赤いレンズ。鈍い鉄色に輝くドラム缶の胴体から伸びた一対の腕の先には電撃が舞っている。
僕は隠れていた入口から室内に入るとぐるりと両腕を回し一回屈伸、準備運動の時間はないが問題はなさそうだ。
「おっけー、そんじゃまぁ……有言実行といこうか!」
一斉にこちらに向かってくる敵に対して、一気にこちらからも駆けだした。悠長にやるのは趣味じゃない、攻撃は最大の防御なりってね!




