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電撃をまとった腕が伸びてくるのを掻い潜りその中ほどを掴むと突進してきた勢いも利用して胴体ごと思い切り振りまわす。おそらく100kgはあるだろうドラム缶のような体を軽々と宙に浮かせ、挟みこむように僕の後ろに回り込んでいたもう一体にぶち当て、さらに蹴りを叩きこむと二体まとめて吹き飛んで壁に激突、煙を噴いて動きを止めた。
「これで終わりかな?」
エレベーターホールには無数のセキュリティーワーカーが残骸になり転がっている。ほとんど本能のままに戦っていたが今倒したので10体目だったはず。
「はい、セキュリティーワーカー10体の行動不能を確認しました。現状で行動可能な敵性個体は存在しません」
「あ、そういうのも確認してくれるんだ。助かるよ」
「いえ、ナビゲーションシステムは装着者の安全に対する責任がありますので当然の行動です。……しかし、本当に素手で、いえそれどころか裸で勝ってしまいましたね」
「あー、まあ我ながら呆れるほど強かったね」
なにしろやたら堅そうなセキュリティーワーカーを蹴ったり殴ったりしても怪我ひとつしていないのだから驚くべきことなのだろうが、。
「そのことなのですが、ゼロの戦闘を観察していた結果、どうやらゼロは自己強化魔術を常時展開している状態のようです」
「……じこきょうか、まじゅつ?」
「はい」
「あー……なんと言うか」
「どうしました?」
聞き慣れない言葉に何と言うべきか迷う僕になんでもないことのように話すラビ。
がりがりと頭を掻き気を落ちつけ、ラビから出来るだけ詳しい話を聞くことにする。
「いや、あのさ、どうせなんらかの怪しげな実験でもされているのかなと思ってはいたしさ、強化はよいとして……まじゅつって何? え? 魔術なの? あの火を出したり、RPGで魔法使いが使ったり、魔法少女がリリカルマジかるしちゃうアレなの?」
「いささかの偏見は感じられますが、概ねその認識で合っていると思われます」
え、なにそれ怖い。やっぱり落ち着くなんて無理だ。そもそもなんでAIが魔術について冷静に語ってるのさ? SFとファンタジーがごっちゃになってるよ?
「ちょっと待った、悪いけど一から話を聞きたい。どこか落ちつける場所に移ろう」
エレベーターホールでは今も煙を噴いて、異音を鳴らす残骸達が転がっている。どうやらエレベーターも動いていないようだけど、安全なのかどうかもわからない。ゆっくり話す環境じゃあない。
「承知いたしました。では、ゼロが目覚めた部屋に戻ってみるというのはいかがでしょうか?」
あの部屋か、あの部屋なら妙な装置もカプセル以外には無さそうだし、落ち着くには良いかもしれない。
「うん、それで良いや。あとは、この残骸を放っておいて良いのかってことだけど」
「後の為にも処理だけはしておいたほうが良いと思われます」
「処理?」
「はい、構造上爆発するようなことはありませんので、解体して有益な部品はいただいておきましょう」
「解体って言っても道具もなんにもないよ?」
「ゼロなら必要ありません。手順を説明しますのでまずは外装を剥いでしまってください」
結果、確かに道具は必要なかった。まさか鉄板を素手でバナナみたいに剥けるとは、我ながら末恐ろしいね。




