22:……本当?
グラウが目を覚ますと、ベッドで寝ているはずのイサネが一緒の毛布に包まって、寄り添って寝ていた。
「……イサネ」
「ん……あ……おはようございますグラウ様……寒くなかったですか?」
暖房を焚くほどではないが、少し肌寒い【ウェスト】の朝。野宿をした時にその寒さを知ったイサネは、グラウを心配して、結局一緒のソファで眠りについていた。
「……室内だから……平気だ……」
「そうですか?私はベッドでしたけどなぜか寒かったですし……やっぱりグラウ様を差し置いて上等な寝床に入るのは気になっちゃって寝れなかったんですよねぇ」
「……ありがとう……おかげでよく……眠れた」
「ならよかったです!」
ググっと伸びをして……今度は安全になったであろうルームサービスをもう一度注文し、部屋でくつろいでいると、なぜか窓からコンコンっとノックをする音が聞こえてきた。
「ど、どうも……昨晩宿の人に見つかって不審者扱いされて……前から入りにくくて……」
「……今も十分不審者ですけども」
「グルルルルルゥ……」
狼らしく威嚇をするグラウ……来いと言ったのは自分であったはずなのに、バイパーの進入を拒む。苦笑いしながらイサネはバイパーを招き入れ、離れた場所に椅子を置いて座らせた。
「――という感じで……ちょっと目が合っただけなんですがそこからいいように使われていました」
「まぁあなたの性格ならそうなるでしょうね……これまでは国の重要人物のみに術が掛けられていたみたいですけど……【ウェスト】は自分の縄張りだーー!っと言わんばかりに広げてるみたいですね」
「……そのようだな……もう帰っていいよ……」
「ええ?!お詫びに護衛しますよ!!王都まで!……いや!させてください!」
バイパーが見つめる先には、イサネがいた。
「そんなに王都までは危険なんです?」
「そりゃもう!僕より強い刺客が出てくるかもしれません!」
「お前より強いなら……お前はいらないだろう」
その通り過ぎてイサネは吹き出して笑ってしまった。
「イサネも弱くはない……もちろん……守るべき存在ではあるが……」
「ご、ごめんねヴぁ……ブフッ!んん……バイパー君の気持ちは嬉しいけど、大丈夫だから」
「う……うぅ……じゃ、じゃあ……ひとつだけ……」
すっと立ち上がり、ポケットからなにかを取り出し、イサネの手に握らせるバイパー。
「僕らの種族に伝わる気付け薬です。もしもの場合に役立ってくれるかと……使い方によっては毒にもなってしまうものですが、貴女なら正しく使ってくれると……僕がしてしまった間違いを、どうか」
「うん、わかった……あなたの気持ち受け取ります」
「それと……」
膝をついたバイパー、イサネの手の甲に口づけをした。グラウはそれをみて、ギョッとして固まった。
「もし無事に旅を終えたら、僕とデートしてください!」
「え……あー……あはは……考えておくねぇ?」
昨晩同様、いつの間にかバイパーの後ろに立っていたグラウ。今度はドアではなく窓に向かい、ポイっとバイパーを投げて部屋から追い出した。
「おたっしゃで~~」と……虚しい声が響いていた。
「あはは……魔女さん、人選ミスでしたたね」
「ある意味では……正解だったな……」
「そうですか?まぁでも悪い子ではなさそうでしたしねぇ……自分の本能に忠実という面で素直でしたし……」
バイパーに口づけされた手を見て複雑そうな顔しているイサネ。その姿を見て、グラウはいつもより低い声でイサネに聞いた。
「考えておく……というのは……本当?」
「あれですか?女性からの『考えておく』という返事は大体『ごめんなさい』って意味なんですよ……旅が終わったら……なんてどうなるかまだわからないですし、相手もこの返答ならそこまで傷つかないというか……グラウ様?聞いてます?」
ポンポンっとイサネの頭を撫で出立の準備をし始めるグラウ。
「……変なグラウ様……それにしても朝食おそいですね?そんな頼みましたっけ?」
「また……お昼寝……する?」
「しませんしません!私も手伝います……足りないものはっと――」
隣で荷物の整理を手伝ってくれる、イサネのころころ変わる表情を静かに見つめ……グラウはやっと……表情をゆるませた。
先程までの苛立ちはどこかへ……バイパーの事は忘れて、王都へ向かう気持ちに切り替えた。
荷物整理終えたところでイサネに手を洗わせています。
そりゃもうごっつり洗わせてます。




