#06. 日常
後半に虫と人体っぽいものの破壊があります。
「おはようございまーす!」
ノックもなしに勢いよくドアを開けるのは、最近雇ったバイトだ。近くに住んでいるからか、皆勤賞である。流石に探索には行かせられないが、掃除、時に接客とよく働いてくれている。猫の世話の対価があるとはいえ、大した依頼もないこの事務所で、それほど渡せていないのが申し訳ないほどだ。
この狭いオフィスの唯一の長所、南向きの窓からビルの谷間をすり抜けた陽光が、室内を照らす。眩しそうに眇められた瞳が見つめるのは、暖かく明るい窓か、それとも自分なのか。自分なら良いのに、と、かつてならあり得なかった執着が心地よい。
このまま、この関係性のままで構わない。せめて事が片付くまででいいから、この心地よさに浸らせてもらえれば。
だが知っている。コレが続かないことも。
事が片付くことさえないことも。
ああ、戻ってくる。胸を腹を首元をカサコソと。ザリザリとズルズルと、血が肉が骨が。
不快な感触、千切れるような痛み、動かすこともできないこの身体で受け止める時間ガ始まっタのカ。
どれだけ血を流そうと、クローン培養されたとかいう新鮮な血液が人工心肺のラインから追加される。食い尽くされたはずの手足も、何時の間にか元通りだ。
とりわけ良く育った長虫が、マウスピースで固定された口から潜り込んでくる。1mは下らないその末端、入り切らなかったのだろうか、口元に引っ掻くような感覚が残る。どれだけのサイズであろうと、末端まで呑み込まされることはわかっているのだ。
入り込んだ頭が下腹部に至る感触とともに、暴力的な巣作りが始まる。
生命の神秘、繁殖。それが自分に叶えられるとは考えもしなかった。
育った長虫の腹は、今日も卵で一杯なのだろう。
生命維持できる程度に魂の欠片を残したいくつもの身体から、槍のような感覚の暴風雨がとめどなく降り注ぐ。
第1プラントの稼働サイクルが安定しました。




