↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/17

#05. 営巣

引き続き

虫注意。

人体っぽいもの破壊注意。

絶え間ない痛覚が、時間の感覚を麻痺させる。

窓からの日差しで日を数えていたのも初めのうちだけ。今では時間も意味をなすことはないのだが。

檻が据えられたのは、ビル最上階の社長室、敵の中枢と言っていいだろう。そのインテリアとして、何も知らない社員や社長の客人から鑑賞される有様だ。


1日目にして理解したのは、あの虫がエサを食べる順序だ。

コピー体の活きがいいうちは手足から、もう持たないコピー体だけが頭や胴体を齧られる。そうやってエサを長持ちさせているのだろう。

ヒトの痛覚受容器は、顔面を除けば手のひらと足の裏に多いそうだ。手足をヤスリがけされるような痛みが伝わってくる。

潜伏のためとはいえ、ヒトの身体を模倣しすぎたと後悔した。


異変は3日目。やたらと這い回る虫が増え始めた。表面から内側へ。コピー体とコピー体の隙間、身体の穴という穴から頭を突っ込み潜り込んでくる。肉を食べるわけではない。

「エサにもよるけど、3日で卵から成体に」あの日に聞かされた、ヤツの言葉が脳裏に浮かぶ。卵と成体。子供と、親。

不吉な予感の答え合わせはヤツの声かしてくれた。

「ほとんどの虫は回収したよ。残ったやつは、そろそろ繁殖の時間だ。」俺の体内で、か?

「そう。でも大丈夫。小さいうちに中から出てくるから、大した傷にはならない。」出てくる?

「それに胃や腸に残した卵は栄養満点だ。コピー体もすぐに回復するよ。」そんな、回復なんて、されたら。

「まさに、リサイクルだね」う、あ。


ココに据えられて1週間後、システムのユニットがひとつ完成したそうだ。生命維持装置を付けたからコピー体の活きは保証するよなんて、言われなくとも分かった。

恐ろしくクリアな激痛が、末端から拡がっていく。

その2時間後、そこで痛みは止まった。脊髄ブロック。傷が無くなったわけではない。

痛みのかわりに感じたのは、肌を引っ掻く爪の感触。肩から腹から顔に近づいてくる。万が一のために頭はカバーされている。マウスピースでこじ開けられた口以外は。

繁殖とコピー体のリサイクルは、システムにも採用されていた。

孵った子虫が、すっかりもとに戻った手足を齧りだしたのは、およそ3日後。その間に、ユニットは次々と完成し、その度に痛みのインターバルが短くなった。

3日は72時間。2時間の苦痛が、36台のユニットで完全に連続する。その体制になるのに、大した時間はかからなかった。コレがお仕置きということか。


「そうだよ。次はお礼も用意しないとね」檻の外にヤツが見える。

「お友達を、連れてきてあげよう」やめろ!

「ふふ。やっぱり感情に起伏があるのか。」せめて俺だけに····。

「感情の起伏がね、エネルギーになるんだよ。その水晶が起点。そして、この星の救済につながるのさ」救済だと?それをお前がいうか!

「キミの身体が育てたあの虫を使って、実現させてみせよう。そのためのシステム稼働エネルギーさ」なら、ここで。俺が生きることを、諦めれば。

「まだ2人、残ってるね。ふふ。」·····っ。

「サブシステムがあると安心だから、連れてくることに変わりはないよ」そう言い残してヤツは消えた。

頼む。逃げ切ってくれ。




「やれやれ」

ドアを閉めて一息つく。


「意外と彼も情緒不安定だね。心が壊れても困るし、使えそうな記憶を引きずり出して、セルフケアでもしてもらおうか。うーん、他にも楔が必要かなぁ。」



第1プラントの稼働を開始しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。