#04. 虫喰
虫注意。
人体っぽいもの破壊注意。
(う····)アレからどれだけ時間が経ったのか。ゆっくりと身体の感覚が戻ってくる。
「おっ、気が付いたね!」どこからともなく声が響く。
「新月の夜なら、星辰の動向に敏感なキミたちを釣れると思ったんだよね。」水を通したようなくぐもった声が。
「大当たり!キミたちが探している個たちは、ここにいる」突然の告白に、意識が鮮明になる。
「キミが来てくれたなら、彼らはお役御免だよ。」その言葉は死刑宣告か!、、、助けに、、、
「心配要らない。五体満足で帰すよ。ちょっとここのことを忘れてもらうだけ。」明かりを目指して這いずれば、そこには見えない壁があった。
「その結晶はね、この星で見つけたんだよ。アメジストとか紫水晶とか呼ばれてる。きれいだろ。その大きさでそこまで澄んだものは希少なんだ。」え。
「ああ、キミはその中だよ。」は。
「キミがこの星で使ってた身体ね、その中で再現してあげたんだ。具合はどう?」ようやく動いた足で床らしき足場を蹴る。
「このあとのお仕置きもお礼も、身体があってこそだからね。」見えない壁に弾かれて床に転がる。
「なに、時間はたっぷりあるんだ。楽しんでいってくれ」痛い。感覚がある。
「さて、キミを飾る場所は決まってるんだけど、そこに据えるまえに種明かしでもしておこう」なんだ?工場?何かの生産ラインか。
「見えたかい。今まではね、この星の住人で試したんだ」奥に容器が見える。中身は···人?
「アレで増やせるんだよ。さっきの個もそれで作ったの。あの個本体には手を出してないよ?」先の見えない恐怖を、その言葉が和らげる。あの子は無事。安堵が身体の感覚を取り戻させる。
「でもアレで増やしてもねぇ、持ちは悪いし、生きてれば暴れ回るし、難しいものさ。」明瞭になった視界のさき。あ、れは。
「そこでキミの身体の出番」俺だ。
「キミ、器用だね。身体が死なない程度に魂の欠片を残したでしょ」何人も俺がいる。
「それごとコピーしたんだ。魂の繋がりを感じないかい?」ある。いくつもに分岐した、欠片の繋がりが。まさか。
「生きているけれど目覚めない、それでいて頑強。礼を言わないとね、最高の資源だよ。」まさか。まさか。
「お仕置きもお礼も、全部のコピー体にプレゼントだ」あの全部から、体感を。
「コピー体は絶賛増産中。すでにちょっと感じてるんじゃないかな?」ぞわり。悪寒が背中を走った。
「ちょっと遠いかな。」不可視の檻ごと運ばれているのか、視界が動く。「こいつも見ておいてもらおう。永く付き合う相手になるしね。」
どん、と音を立てて置かれた目の前に、透明な容器があった。
「こいつは傑作なんだ。水陸両用。エ サ に も よ る け ど、3日もあれば卵から成体になる。」容器を満たす液体の中で無数の足をざわめかせて。
「構成成分としては、この星のどの生き物の養分としても最上級でね、乾かして粉にすると使い勝手が良い。」節だらけの長い体をのたくらせて。
「色にもこだわったんだ。白くてきれいだろ?真珠の色艶を目指したんだよね」艷やかな頭には、小さいけれど硬そうな顎。エサ、という言葉が頭をよぎる。間違いなく肉食だ。
「キミの身体も、増やして使ってみたよ。最高だったね。」カチカチカチ。ザリザリザリ。顎を鳴らして肉をこそげる音が、繋がりから耳に直接届いた。
「コピー作りはね、失敗もあるんだ。まずはそれを、ちょっとね。今なら分かるかな?」ああ嗚呼。這い回っている、齧られている。身体のいたるところを。一度感じてしまったら、もう意識を逸らすことはできない。
「システムが出来上がったら、もっとスマートに感じてもらえると思う。」身をよじろうとも、発信源はコピー体の上だ、不快な感触を振り払うことすら叶わない。コレを、永く、楽しめと。
「本体のキミにも、イイもの用意してあるよ。お楽しみに」
未来を理解させられた俺の、絶望の叫びがこだました。
「かみさま」は、ヒト1個体を「個」と呼びます。誤変換ではないです。




