#01. 邂逅
青と緑と白、恒星にはない複雑な美しさを見せつける小さな惑星。そこにヤツの気配を感じた。仲間とともに、最も気配の強い地点を探る。ある程度は絞れたが、現地の住人まで巻き込むのは得策ではないし、何より壊してしまうには惜しい星、そう思わせる美しさだったのだ。
仕方ない。と、潜伏捜査に切り替えた。現地の知的生物の姿を真似、荒事も想定して探索に必要な能力を持たせた身体を作る。
打ち捨てられたような四角い灰色の建造物があるので、拠点とすべく、見た目と過去を偽装して、周りと同調させた。
よろず探し物承りますーーー探偵と呼ばれる都合の良い隠れ蓑ーーーそれがここでの立ち位置となった。
疑われない、そのための掃除をしていると、まれに客がくる。口コミというらしい限定的な生物間コミュニケーションでも、意外と情報は伝播するものだ。
料金設定が甘かったか、幼い子供を中心に失せ物探しの依頼が舞い込んでくる。ペット探しの流れで、最近は犬の散歩にまで業務拡大してしまった。
「看板、掛けかえるかー。こういうの、便利屋とかいうらしいぞ」大柄で金髪、厳つい見た目を選択したコイツは、荒事担当。軽いノリで子供には懐かれるそうだ。
「下手な路線変更は、悪目立ちします。このまま潜伏して探索を続けましょう。」探索班の頭脳派がもっともなことを言う。メガネと束ねた長髪で、見た目も頭脳派を装ったとかで、くーる?な見た目の割に優しいと、年齢問わず反応が良いらしい。
そう言う俺が、この探索班のリーダーを拝命している。目立たないように作ったつもりだったが、バランス重視で組み立てた見た目が現地民の嗜好に合ってしまったらしい。おかげで「引きこもりの所長」の立ち位置を確立している。
引きこもりも、深夜なれば外に出る。不眠不休にも耐える身体を活かし、「ヤツ」の探索、可能ならば捕縛して本部に連行するまでが、本命である。
夜な夜なビル街を文字通り飛び回ってヤツの痕跡を探すも、今のところ有力な手がかりは得られていなかった。
「すみません!猫、猫を見つけてください!」そう言って一人の少女が飛び込んできた。走って来たのだろう、息を切らせ上気した頬を汗が伝う。
「まだ子猫なんです。ミルクも卒業できてないから、昨日から何も食べてない···」そう呟いて泣き出してしまった。
いつもなら、こういう時は金髪の出番。なのだが、何故か身体が動いてしまった。部屋にあったものを洗っておいたタオルを渡し「行こう」と言って手を引く。
聞けば自分の飼い猫ではないという。キジトラで額に目のような模様があるという、視覚的に探索可能な特徴を聞いてから、視力を拡大する。いた。公園の一番奥、背の高い木の上だ。逃げないようにそっと近づき、掬うように捕まえて彼女に渡す。
「ありがとう!」子猫を抱きしめてうれしそうに告げる。「友人の猫なんです。猫は好きだけど自分では飼えないから。」
友人の飼い猫が産んだ子猫で、里親募集中なのだとか。産まれた兄弟では一番やんちゃで中々貰い手が決まらないそうだ。で、そのやんちゃ坊主が逃げ出した、と。
依頼達成ということで、規定の料金をいただいて、それで終わりのはずだった。
「あのっ、ここでバイトってできませんか」何故か忘れられなかった、彼女がいた。
「掃除とか洗い物とか、1日ちょっとの時間でいいんです。その代わり、この子をお願いしたくて」差し出されたのは見覚えのある猫。ひと月の間にだいぶ育って、もう子猫とは呼びづらいサイズになっていた。
「結局貰い手がつかなくて。ここなら里親探しか、飼ってもらったりできないかなって」理性的に考えれば、お断りの案件。だが。
「学校行ってるよね、その後の1時間だけ。それなら」言ってしまった。メガネが右手で顔を覆っている。すまん。給与体系は任せた。
彼女との繋がりを失いたくない、そんな衝動に翻弄される。
「オレは構わないぜー」すでに猫をじゃらしながら金髪が茶化す。
こうして一人と一匹、メンバーが増えた。それだけのはずだったのに。歯車はかみ合ってしまった
星渡りの追跡者 御一行様
リーダー: 一人称「俺」独白では「自分」も。
メガネ: 一人称「私」
金髪: 一人称「オレ」
現地人その1
「彼女」= 探偵事務所の依頼人、のちバイト。猫好き。




