後日譚: re-lease
後日譚:re-birth 補完SS-2
解放の時
「プロテインパウダー生産の過程で排出される、殻や爪の件ですが」
すっかり秘書業が板に着いた彼女が報告する。
「良質なキチン、キトサンの原料として、医療方面に展開中です。傷の治りが良いと、ガーゼ類が高評価を得ています。」
「それは僥倖。余ってもいいから増産しましょう。医療用品の備蓄を増やさないと」
「承知しました。何かあるんですか?」
「んー。引退前のひと仕事ね。人道支援も大事だけど、この国も災害大国だし。」
「コロナの時、マスクとか足りませんでしたしね」
「そういうことだから、手配、お願いね」
「はい、では失礼します。」
ドアが閉まるのを待って、独りごちる。
「言えないよなー。大地震なんて。」あと1年くらいか。
「キリもいいし、事業整理するかな」
そして1年。
「そろそろだと思う。」
今日のお供は、先輩秘書。信奉者とも言える、気心しれた本当の内部関係者。
「避難されますか?」
「僕は、やることがあるからココにいる。揺れが収まったら、備蓄のサプリと医療用品を放出しよう。」
「承知いたしました。」
「外からも避難してくると思う。街全体を想定して備蓄したから大丈夫とは思うけど。」
「在庫確認を徹底いたします。」
「頼んだよ。パニックは避けたい。」
「はい。」
「では、引き続き報告を。」
「第2、第3プラントは、雑食種飼育エリアとして順調に稼働中です。先に稼働停止させた旧ユニットはいかがします?」
「中身を出して、第1プラントの予備かなあ。あっちはまだ必要だから。」
そう言いながら、ロックを外す。
デスクに置いていたスマホが、けたたましく鳴り響いた。聞きたくなかった耳障りな不協和音。
来た。
「打ち合わせどおりお願い。」
「はい!」走り去る秘書。
ぞん。大きな縦揺れ。
ご、ごん。横揺れが混ざる。立っているのも大変。
徐々に強くなる揺れに、ロックを外したアメジストが大きく傾いだ。
ぱき、ぱきん。
3つの結晶の真ん中を残して。2つが床に叩きつけられる。
ぱん
倒れてきたキャビネットが2つを叩き割った。
揺れが収まる。 「ふぅ。」
(わざと、割っただろ)
「よくわかったね?」
(私たちのコピー体も、もうないでしょう?)
「そうだよ、お役御免。」
((なぜ))
「キミたち2人には、強い楔を用意してあげられなかった。心のケアもなしに、20年だ。申し訳ない。」
(こんなに削られたら、この星から出られない。)
「うん、だから、アフターケア。悪いようにはしない。決して。」
外を見る。
「キミたちが使ってた廃ビル、土地ごと買い取ったよ。」
(今さら使えって?)
「いや。この地震でもうだめだろう。だから、思い出せるものを作っておくよ。」
猫がやってくる。額が割れる。
金色の瞳がせり出して、宙に浮いた。
パタリ。
「そっちが本体だからね」
(目玉じゃないのか?)
「僕の一部。今回はそれが水先案内になるよ」
(おい!何すんだよ!)
「ちょっと遠回りなんだけどね、」
(うわ、引っ張られる)
「まずは2人で、寄る辺を見つけてきて」
3つの光が、ガラス窓をすり抜けて、空へ消える。
「巡り巡ったその先で、どうか心安く過ごせますように。」
旧第2、第3プラント機能停止しました。




