後日譚: re-birth
「だから言ったじゃないか」分かっていた。
「個に執着するのはいただけないな、って」理解していたつもりだった。
「だいたいこの星の生き物は、儚いから」時間軸が違いすぎたのだ。
「すぐに会えなくなるんだ。」彼女は、もういない。
「大往生だったそうだよ」そう言うヤツの姿も以前とは違う。新しい端末に代替わりしたのだ。
この星の時間で80年。まだ檻の中だ。
「事業は完全に軌道に乗った。虫も雑食種に切り替えたし、新しいエネルギー産業も始まった。もう痛くないだろう?」コピーも俺も不要と言うことか。
「そうなるね。今さら連行されたくないし、そこからは出してあげられないけど」他の2人は?
「見えてなかったか。20年ほどで檻ごと砕けて逝ったよ」そうか。
「寂しいかい?」まあ、な。
「すっかり感情的になっちゃって。」誰のせいだと。
「そんなキミに朗報。」なんだよ。
「大往生ということは?」あ···。
「魂が肉体を離れたってことだ」そう言ってヤツは人差し指を立てた。指先が光る。
「連れてきたよ。時間も記憶も、戻してある」懐かしい、日の光の色。
「さあ、どうする?」俺はここから出られないんだろ?
「だね、そこで一緒になるか、解放するか。」放してあげてくれ。
「いいの?」ああ。終わりの見えない監禁に、付き合わせる気はない。
「ふぅん。」振られた指先から、光が飛び立つ。
「ま、この星には輪廻転生ってのがあるから」今はこちらが見えるのか、檻を撫でるように漂って。
「もしかしたら、ね。」すぅ、と虚空に消えた。
「さて、次の社長は、優秀なだけのただの人間だ。僕は星の観察に戻るとするよ」
そう言って、ヤツも姿を消した。
またそれから何年も。
部屋の主はコロコロと代わり。
ある日、初めて部屋の外に出された。流石に建物が老朽化したらしい。そのままトラックに積まれて、移動する。
と、衝撃。
貴重品として梱包されてはいたが、ガードレールを突き破っての崖ダイブは想定外。
(あーあ、出てきちゃったか。)勝てるとは思ってないさ。
(帰るのかい?)いや。
散々削られた俺の精神体は、この星の人間の魂と変わらないサイズ。これでは帰還は望めない。
だから。試してみたいことがあった。精神が、時空を超えられるか。戻れるものなら。
(分かった。じゃあ、最後のお礼だ)今さらなんだ。
(手伝おう)なにを。
(楔だ、って言ったろ?今度は一緒に生きたら良い。)目の前に、光の渦。
(騙されたと思って、行ってみなよ。仲間も何もかも奪ってしまったからね。それは悪かったと思ってるのさ。)
精神体が、もはや魂とも呼べるそれが、期待に震える。
(サヨナラ、また会おう)遠ざかるその声を聞きながら。
懐かしい、日の光の色した魂の元へ。




