↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力0の伯爵令嬢、すいへーりーべーで領地開拓!〜研究費を稼いでいたら領地が発展しました〜  作者: 大福


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/31

第5話 魔法の仕組み

 翌日。


「では本日は、昨日の続きをいたしましょう。」


「はい!」


 ココアは机へ向かい、


 羽根ペンを握った。


 目の前には、


 王立学院の教材。


 その隣には、


 昨日自分で書いた紙が置かれている。


『魔法』


『魔力が必要』


『属性がある』


『魔法と元素――関係ある?』


 そして、


 もう一枚。


 セバスが帰ったあと、


 こっそり行った実験記録。


『普通の火――燃焼』


『結合一本――切断』


『火――消えない』


『反応――継続』


『どうすれば燃焼を止められる?』


 こちらは、


 教材の下へ隠してある。


 セバスには見せていない。


「ココア様。」


「はい!」


「昨日は、魔力と属性についてお話しいたしました。」


「うん。」


「本日は、もう少し踏み込んで。」


「実際に魔法がどのように使われるのかをお話しいたしましょう。」


 ココアの羽根ペンが、


 すぐに動き始める。


『魔法の使い方』


「まず。」


 セバスは教材を開いた。


「魔法を使うには、自らの魔力を感じる必要がございます。」


「感じる?」


「はい。」


「体内に存在する魔力を意識し、それを外へ放出する。」


「そして。」


「使いたい魔法を、頭の中で明確に思い描きます。」


 ココアの手が止まった。


「思い描く?」


「左様でございます。」


「火を出したいのであれば火を。」


「水を生み出したいのであれば水を。」


「頭の中で、どのような現象を起こしたいのかを明確にすることが重要とされております。」


 ココアは紙へ書く。


『魔力』


『外へ出す』


『使いたいものを想像』


「それで、火が出るの?」


「基本的には。」


「基本的には?」


「魔力量。」


「属性。」


「魔力を扱う技術。」


「そして、想像する力。」


「それらによって、同じ魔法でも結果は変わります。」


「同じ火でも?」


「ええ。」


 セバスは右手を上げた。


「昨日お見せしたものを覚えておられますか?」


「うん!」


「では。」


 人差し指を立てる。


 ポッ。


 小さな炎が灯った。


 ココアの目が、


 すぐに炎へ向かう。


 昨日と同じ。


 魔力が働いた瞬間、


 周囲の元素が動く。


 結合が変化する。


「こちらは、ごく小さな火でございます。」


 炎が消える。


「ですが、より多くの魔力を使い。」


「より大きな炎を明確に思い描けば――」


 セバスは手のひらを上へ向ける。


「少し離れてください。」


「うん。」


 ココアが椅子を引く。


 セバスが集中する。


 次の瞬間。


 ボッ。


「わっ!」


 先ほどより大きな炎が、


 手のひらの上へ浮かび上がった。


 ココアの瞳が見開かれる。


「……。」


 大きい。


 それだけではない。


 動いている元素の量も、


 先ほどとは違う。


 周囲で起きている変化も、


 ずっと大きい。


「同じ火属性の魔法でございます。」


 セバスが炎を消す。


「ですが、込める魔力と術者の技量によって規模は変わります。」


 ココアは急いで書く。


『魔力量が増える』


『火が大きくなる』


 そこで、


 羽根ペンが止まった。


「先生。」


「はい。」


「魔力が、火になったの?」


「……。」


 セバスが僅かに考える。


「魔力によって火を生み出した、と考えられております。」


「魔力が変わったの?」


「変わった?」


「魔力が火になったなら。」


「魔力が何かに変わって、火になったんだよね?」


 セバスは答えない。


 ココアは続ける。


「それとも。」


「魔力が何かを動かして、火を作ったの?」


「……。」


 今度は、


 セバスが黙る番だった。


「一般的な魔法学では。」


 慎重に言葉を選ぶ。


「魔力を消費し、魔法という現象を生み出す。」


「そのように教えられております。」


「どうやって?」


「……そこまでは。」


「分からない?」


「はい。」


 ココアの顔が、


 ぱっと明るくなった。


「先生も分からないんだ!」


「随分と嬉しそうでございますね。」


「うん!」


「……そうでございますか。」


 セバスは苦笑する。


 ココアは紙へ書く。


『魔力を使う』


    ↓


『?』


    ↓


『魔法が起きる』


「ここが分からないんだ。」


「そのようですね。」


 ココアは、


 じっと大きな「?」を見つめた。


     ◇


「では、もう一つ。」


「魔法を扱う上で重要なものがございます。」


「なに?」


「詠唱でございます。」


「えいしょう?」


「魔法を使う際に唱える言葉です。」


 セバスは教材の一節を指差す。


「魔法を学び始めた者は、詠唱を用いることで、使用する魔法を明確に思い描きます。」


「言葉を言うと魔法が出るの?」


「正確には。」


「言葉そのものに力があるわけではない、とされております。」


 ココアの羽根ペンが止まった。


「じゃあ、言わなくてもいい?」


「熟練した魔術師であれば。」


「詠唱を短縮したり、使わずに発動したりすることも可能です。」


「じゃあ。」


「どうして言うの?」


「先ほど申し上げた通り。」


「頭の中で起こしたい現象を、より明確にするためでございます。」


「……。」


 ココアは少し考える。


「頭の中を整理するため?」


 セバスが僅かに目を見開いた。


「ええ。」


「その理解が近いでしょう。」


「ふーん……。」


 ココアは紙へ書く。


『詠唱――魔法を思い描くため』


『言葉そのものに力はない?』


 そこで、


 ふと手が止まった。


「……。」


 頭の中へ、


 ある言葉が浮かぶ。


 すいへー。


 りーべー。


 ぼくのふね。


 元素を順番に思い出す時。


 前の世界で、


 何度も何度も繰り返していた言葉。


「……同じ?」


「何がでございますか?」


「ううん。」


 ココアは首を振った。


 似ている。


 でも。


 似ているだけで、


 同じだとは限らない。


 紙の端へ、


 小さく書き込む。


『言葉――考えを整理する』


 そして、


 その隣へ。


『すいへーりーべー……?』


 最後には、


 やはり「?」を付けた。


     ◇


「では、魔法が実際にどのように使われているのかも、お話しいたしましょう。」


「はい!」


「魔法は戦いのためだけのものではございません。」


「火属性ならば、暖房や鍛冶。」


「水属性ならば、生活用水や農業。」


「風属性は、船や製粉。」


「土属性は、建築や街道整備などにも利用されております。」


 ココアの手が止まった。


「……。」


「ココア様?」


「もう一回。」


「はい?」


「今の、もう一回言って。」


「火属性ならば、暖房や鍛冶――」


「そこから!」


 羽根ペンが猛烈な勢いで走り始める。


『火――熱』


『水――生活・農業』


『風――船・製粉』


『土――建築・道』


「魔法って。」


 ココアは紙を見つめる。


「戦うためだけじゃないんだ。」


「もちろんでございます。」


「火で鉄を熱くする。」


「水を畑へ運ぶ。」


「風で物を動かす。」


「土で道を作る……。」


 ココアの目が、


 少しずつ輝いていく。


 だが。


 その視線は、


 魔法そのものではなく。


 紙の上に並んだ現象へ向いていた。


「先生。」


「はい。」


「火じゃなくても、鉄は熱くできるよね?」


「……え?」


「風じゃなくても、物を動かせる。」


「水も、魔法じゃなくても運べる。」


 セバスが黙る。


「つまり。」


 ココアは紙へ視線を落とした。


「魔法って。」


「やりたいことをするための、方法の一つなんだ。」


「……。」


 セバスは、


 すぐには答えなかった。


「左様でございますね。」


「少なくとも。」


「そのように考えることは出来るでしょう。」


「そっか。」


 ココアは、


 また一つ書き加える。


『魔法――方法の一つ』


 そして。


 その文字を、


 じっと見つめた。


     ◇


「本日はここまでにいたしましょう。」


「はい!」


 セバスが教材を閉じる。


 机の上には、


 今日だけで何枚もの紙が増えていた。


 魔力。


 想像。


 詠唱。


 魔法。


 生活。


 そして、


 疑問。


 ココアは一枚の紙を手に取る。


『魔力を使う』


    ↓


『?』


    ↓


『魔法が起きる』


 その「?」を、


 指先でなぞった。


「先生。」


「はい。」


「魔力を使ったら、どうして火が出るんだろう。」


「……。」


「水は、どこから来るんだろう。」


「風は、何を動かしてるんだろう。」


「土は?」


 一つ口にするたび、


 また疑問が増える。


「全部、魔力を使うのに。」


「どうして違うものになるんだろう。」


 セバスは、


 そんなココアを静かに見つめる。


「また。」


「分からないことが増えましたね。」


「うん!」


 ココアは満面の笑みを浮かべた。


「だから。」


 羽根ペンを握る。


「調べる!」


 紙の中央。


 大きな「?」の横へ、


 新しい文字を書いた。


『魔力とは何?』


 ココアは、


 その一文をじっと見つめる。


 昨日は、


 どうすれば燃焼を止められるのか分からなかった。


 今日は、


 魔力そのものが分からなくなった。


 知れば知るほど、


 分からないものが増えていく。


 けれど。


 そのたびに、


 世界は少しだけ広くなる。


 ココアの口元が、


 ゆっくりと緩んだ。


「……面白い。」


 机の端。


 教材の下へ隠された紙を、


 そっと引き出す。


『どうすれば燃焼を止められる?』


 その隣へ、


 今日の紙を並べた。


『魔力とは何?』


 二つの問い。


 どちらにも、


 まだ答えはない。


 ココアはしばらく見比べる。


 そして、


 新しい紙を一枚取り出した。


 羽根ペンを握る。


「どっちから調べようかな。」


 迷っているはずなのに、


 その顔は、


 楽しそうに笑っていた。


第5話 終

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。