第27話 家を出る
それから。
三日が経った。
◇
「……。」
アルヴェイン伯爵は、
窓の外を見ていた。
領都。
自分が治める街。
朝になれば。
店が開き。
荷馬車が行き交い。
職人が働き。
人々が暮らす。
いつもと変わらない。
そのはずだった。
「伯爵様。」
背後から。
セバスの声。
「王都への返書。」
「整っております。」
「ああ。」
伯爵は、
振り返らなかった。
「領内は。」
「大きな混乱はございません。」
「大きな、か。」
「はい。」
つまり。
小さなものはある。
「市場では。」
「未だ噂が続いております。」
「……。」
「伯爵家が事実を隠している。」
「魔力を持たない者には何かある。」
「ココア様がお生まれになってから。」
「不作の年があったのは――」
「くだらん。」
低い声が遮った。
「六年も遡れば。」
「何でもあの子のせいにできる。」
「左様でございます。」
「雨が降っても。」
「雪が降っても。」
「病人が出ても。」
「ココアのせいか。」
「そう考える者も。」
「出るかもしれません。」
「……。」
伯爵の手が、
強く握られた。
理屈ではない。
だからこそ。
厄介だった。
「眼鏡は。」
「変わらず売れております。」
「マヨネーズは。」
「注文がございます。」
「……そうか。」
伯爵が、
ようやく振り返った。
「作った物は使う。」
「はい。」
「だが。」
「作った娘は不吉だと言う。」
「……。」
「随分と。」
「都合のいい話だ。」
セバスは、
否定しなかった。
伯爵は。
机へ戻る。
その上には。
王都からの書状。
親族からの手紙。
領内から届いた報告。
そして。
一枚の地図。
「セバス。」
「はい。」
「決めた。」
伯爵の指が。
地図の一点へ触れる。
領都から離れた場所。
アルヴェイン領の中でも。
長く。
大きな開発が行われていない土地。
「ここを。」
「あの子へ与える。」
「……。」
「屋敷が一つ。」
「残っていたな。」
「ございます。」
「古い建物ではございますが。」
「手を入れれば使用できます。」
「周囲の土地は。」
「伯爵家の直轄地でございます。」
「人口は。」
「領都と比べれば。」
「かなり少のうございます。」
「産業は。」
「農業が中心でございます。」
「それ以外には。」
「これといって大きなものはございません。」
「そうか。」
伯爵は。
地図を見る。
そして。
僅かに口元を緩めた。
「なら。」
「丁度いい。」
「……丁度いい、とは?」
「何もないのだろう?」
「何もない、とまでは申しませんが。」
「似たようなものだ。」
「……。」
セバスが。
眼鏡を押し上げた。
「伯爵様。」
「なんだ。」
「まさか。」
「楽しんでおられますか?」
「何をだ。」
「あの土地へ。」
「ココア様を送ることを。」
「馬鹿を言え。」
即答だった。
だが。
伯爵は。
地図から目を離さなかった。
「ただ。」
「……。」
「あの子なら。」
「どこへ置いても。」
「やることは変わらん。」
セバスが。
伯爵を見る。
「分からなければ調べる。」
「はい。」
「作れなければ。」
「作れる者を探す。」
「はい。」
「それでもなければ。」
「自分で試す。」
「……はい。」
「そして。」
「周りを巻き込む。」
「それは。」
「間違いございませんな。」
「だろう。」
伯爵は。
小さく息を吐いた。
「領都にいようが。」
「辺境にいようが。」
「あの子は。」
「あの子だ。」
「……。」
「だから。」
「土地を与える。」
「左様でございますか。」
「ただし。」
伯爵の声が。
少し変わった。
「土地を動かすとなれば。」
「研究だけでは済まん。」
「……はい。」
「金が要る。」
「はい。」
「人を雇うこともある。」
「はい。」
「税も。」
「仕入れも。」
「生産も。」
「販売も。」
「ございます。」
「そして。」
「この国の制度を。」
「あの子はまだ知らん。」
「……。」
セバスの目が。
僅かに細くなる。
「だから。」
「お前も行け。」
「……。」
今度は。
セバスが。
完全に黙った。
「聞こえなかったか。」
「聞こえております。」
「なら返事をしろ。」
「伯爵様。」
セバスが。
眼鏡を押し上げる。
「私は。」
「アルヴェイン伯爵家の家令補佐でございます。」
「知っている。」
「財務にも。」
「関わっております。」
「知っている。」
「私を出せば。」
「伯爵様がお困りになります。」
「代わりは育てた。」
「まだ私ほどではございません。」
「自分で言うか。」
「事実でございますので。」
「……。」
伯爵の口元が。
ほんの僅かに動いた。
「セバス。」
「はい。」
「私は。」
「あの子の世話をしろと。」
「言っているのではない。」
「……。」
「領地を運営するなら。」
「財務を知る者が必要だ。」
「はい。」
「この国の制度を知る者も。」
「必要になる。」
「はい。」
「そして。」
「あの子が。」
「何かを始めれば。」
一度。
言葉を切る。
「止める者も必要だ。」
「……。」
「伯爵様。」
「なんだ。」
「最後が。」
「最も重要なのでは?」
「否定はせん。」
「左様でございますか。」
「お前なら。」
「もう慣れているだろう。」
「慣れたくは。」
「ございませんでしたが。」
「もう遅い。」
「……。」
セバスは。
小さく息を吐いた。
そして。
深く。
頭を下げた。
「承知いたしました。」
◇
「ココア。」
「はい。」
その日の午後。
ココアは、
父の執務室へ呼ばれた。
父。
セバス。
ヒルダ。
そして。
机の上には。
一枚の地図。
「座りなさい。」
「うん。」
椅子へ座る。
足は。
まだ。
床へ届かない。
「……。」
父が。
すぐには話さない。
珍しい。
「お父様?」
「ココア。」
「はい。」
「お前には。」
「この屋敷を出てもらう。」
「……。」
ココアは。
父を見る。
聞き間違えたとは。
思わなかった。
「いつ?」
「準備が整い次第だ。」
「……そっか。」
それだけ。
答えた。
「理由は。」
「分かる。」
ココアが言った。
「王都から。」
「言われたから?」
「それだけではない。」
「領民?」
「……ああ。」
「私を。」
「怖がってる人がいるから?」
「いる。」
父は。
誤魔化さなかった。
「だから。」
「私を。」
「ここから出す?」
「ああ。」
「……。」
ココアが。
膝の上の手を見る。
六年間。
暮らした家。
自分の部屋。
庭。
厨房。
書庫。
セバスと勉強した部屋。
ヒルダと過ごした部屋。
家族。
全部。
ここにある。
「……追放?」
「違う。」
父が。
はっきり答えた。
「お前を。」
「アルヴェイン家から外すつもりはない。」
「じゃあ?」
「領内の土地を。」
「一つ与える。」
父が。
地図をココアの前へ置く。
「ここだ。」
「……。」
ココアが。
地図を見る。
領都から。
かなり離れている。
「ここに。」
「住むの?」
「ああ。」
「一人で?」
「違う。」
ココアが。
最初に。
ヒルダを見る。
「ヒルダは?」
「参ります。」
即答だった。
「……。」
「まだ。」
「お父様に聞いてない。」
「伯爵様が何と仰られましても。」
「参ります。」
「ヒルダ。」
「はい。」
「それ。」
「護衛として大丈夫?」
「その場合は。」
「解雇された後に参ります。」
「……。」
ココアが。
父を見る。
「だって。」
「聞こえている。」
父が。
小さく息を吐いた。
「ヒルダには。」
「最初から同行を命じるつもりだ。」
「……よかった。」
ぽつり。
その一言だけ。
ココアの声が。
少しだけ。
六歳の子供に戻った。
そして。
もう一人を見る。
「先生は?」
「私も。」
「同行いたします。」
「……え?」
ココアが。
目を瞬かせる。
「先生も?」
「はい。」
「でも。」
「先生は。」
「お父様の仕事があるでしょ?」
「ございます。」
「じゃあ――」
「私が命じた。」
父が言った。
「……お父様が?」
「ああ。」
「なんで?」
「お前の世話をさせるためではない。」
「……。」
「お前なら。」
「場所が変わっても。」
「今までと同じように。」
「勝手に調べ。」
「勝手に考え。」
「勝手に何かを始めるだろう。」
「……。」
ココアが。
少し考える。
「勝手に?」
「そこだけ拾うな。」
「でも。」
「勝手にはしてないよ。」
「先生に相談してる。」
「なら。」
「その相談相手が必要だろう。」
「……あ。」
「土地を動かすには。」
「金が要る。」
「うん。」
「人も必要になる。」
「うん。」
「この国の制度も。」
「領地の運営も。」
「お前の知らないことは多い。」
「……うん。」
それは。
分かっている。
前世で。
大人として生きた。
研究職として。
社会の中でも働いた。
金。
人件費。
需要。
利益。
物流。
予算。
そうした概念を。
知らないわけではない。
だが。
この世界の税制は知らない。
貴族社会も。
商習慣も。
魔法を前提とした産業も。
この領地で。
何がどれだけ作れるのかも。
知らない。
「だから。」
「セバスを付ける。」
「先生。」
「はい。」
「大変だね。」
「どなたのせいでございましょうな。」
「お父様?」
「ココア様でございます。」
「まだ何もしてないよ?」
「これからなさるのでしょう?」
「……。」
否定できなかった。
◇
「お父様。」
「なんだ。」
「私。」
「ここには。」
「もう住めないんだね。」
「……ああ。」
「そっか。」
ココアは。
小さく頷いた。
理解はできる。
王都。
領民。
貴族。
伯爵としての責任。
父が。
自分を嫌いになったわけではないことも。
分かる。
それでも。
理解できることと。
寂しくないことは。
同じではなかった。
「……寂しいな。」
誰に言うでもなく。
口から出た。
「……。」
父の手が。
僅かに動く。
けれど。
ココアの頭を撫でることも。
抱き締めることも。
しなかった。
代わりに。
まっすぐ。
娘を見る。
「ココア。」
「はい。」
「私は。」
「お前が。」
「向こうで暮らしていけるかどうかを。」
「心配してはいない。」
「……。」
ココアが。
父を見る。
「お前は。」
「ここでも。」
「工房へ行った。」
「うん。」
「農家へも行った。」
「うん。」
「知らないことを。」
「自分で聞いた。」
「うん。」
「失敗して。」
「また試した。」
「うん。」
「なら。」
「場所が変わったところで。」
「同じだ。」
「……。」
「向こうにも。」
「人がいる。」
「はい。」
「職人も。」
「農民も。」
「はい。」
「お前が知らないことを。」
「知っている者もいる。」
「……うん。」
「だから。」
「分からなければ。」
「聞け。」
「うん。」
「見たことがなければ。」
「見に行け。」
「うん。」
「必要なら。」
「一緒にやる者を探せ。」
「うん。」
「お前は。」
「今まで。」
「そうしてきただろう。」
「……うん。」
ココアが。
少しだけ笑った。
「それなら。」
「できる。」
「知っている。」
「……。」
その言葉に。
ココアの目が。
少しだけ大きくなった。
頑張れ。
ではなかった。
大丈夫だ。
でもなかった。
『知っている』
父は。
ココアができることを。
もう。
知っていた。
「ただし。」
「はい。」
「無茶はするな。」
「……。」
「なぜ黙る。」
「無茶の範囲を――」
「考えるな。」
「まだ最後まで言ってない。」
「分かる。」
「お父様まで。」
「ヒルダみたいになってる。」
「六年も。」
「お前の父親をしているからな。」
「……そっか。」
◇
ココアの目が。
もう一度。
地図へ向く。
「お父様。」
「なんだ。」
「この土地。」
「何があるの?」
「知らん。」
「……。」
「詳しくは。」
「セバスに聞け。」
「先生。」
「はい。」
「何があるの?」
「資料はございます。」
「でも。」
セバスが。
先に続ける。
「ご自身で。」
「ご覧になるのでしょう?」
「……うん。」
「でしたら。」
「資料は馬車の中で。」
「お渡しいたします。」
「全部?」
「まずは概要だけです。」
「全部読みたい。」
「現地へ着くまでに。」
「酔われても存じませんぞ。」
「大丈夫。」
「前回も。」
「同じことを仰いました。」
「……。」
「そして酔われました。」
「今回は大丈夫。」
「何を根拠に?」
「六歳になった。」
「関係ございません。」
「むぅ……。」
ヒルダが。
僅かに笑った。
父も。
ほんの少しだけ。
口元を緩めた。
ココアは。
地図を見る。
知らない土地。
どんな土なのか。
どんな水なのか。
何を作っているのか。
どんな人が暮らしているのか。
何が足りないのか。
何が余っているのか。
何を運び。
何を売っているのか。
何も知らない。
「……。」
寂しい。
それは。
消えていない。
でも。
知らない。
その言葉は。
研究者にとって。
少しだけ。
特別だった。
◇
その夜。
ココアの部屋。
「こちらは?」
「持っていく。」
「こちらも?」
「持っていく。」
「こちらは?」
「それも。」
「ココア様。」
「なに?」
「すべて持っていくことになります。」
「……。」
ココアが。
荷物を見る。
本。
服。
玩具。
研究道具。
紙。
試作品。
六年間で。
随分と増えた。
「減らす。」
「何から?」
「……。」
ココアが考える。
そして。
最初に手へ取った。
一冊の帳面。
「これは持っていく。」
「研究帳でございますね。」
「うん。」
次。
眼鏡についての記録。
「これも。」
ガラス。
研磨。
規格。
失敗。
成功。
全部。
書いてある。
その次。
マヨネーズ。
卵。
保存。
容器。
販売。
需要。
「これも。」
「……。」
ヒルダが。
そんなココアを見ていた。
「ココア様。」
「なに?」
「寂しくは。」
「ございませんか?」
「……。」
ココアの手が。
止まった。
「寂しいよ。」
「……。」
「だって。」
「ここ。」
部屋を見る。
「私の部屋だもん。」
「はい。」
「ずっと。」
「ここで寝てた。」
「はい。」
「ヒルダに。」
「朝起こされて。」
「はい。」
「先生に。」
「勉強させられて。」
「……させられて?」
「教えてもらって。」
「訂正が早うございますね。」
「聞こえてた?」
「もちろんでございます。」
「むぅ。」
少し。
笑った。
そして。
また。
部屋を見る。
「寂しい。」
「……はい。」
「でも。」
ココアが。
研究帳を抱える。
「あそこ。」
「はい。」
「知らない土地なんだよね?」
「左様でございます。」
「どんな土かも?」
「存じません。」
「水は?」
「現地でご確認くださいませ。」
「何を作ってるかは?」
「資料にはございます。」
「じゃあ読む。」
「その後は?」
「自分で見る。」
「左様でございますか。」
「うん。」
ココアは。
研究帳を荷物へ入れた。
「お父様が。」
「できるって。」
「はい。」
「頑張れじゃなくて。」
「できるって。」
「……はい。」
「だから。」
少しだけ。
笑う。
「やってみる。」
◇
翌朝。
伯爵邸の前。
一台。
また一台。
荷馬車へ。
荷物が積まれていく。
使用人たちが。
少し離れたところから。
その様子を見ていた。
「ココア様。」
料理長が。
包みを一つ持ってくる。
「これを。」
「なに?」
「道中のお食事でございます。」
「ありがとう。」
「それから。」
「?」
「向こうの厨房が。」
「どのような状態か分かりませんので。」
「はい。」
「必要なものがございましたら。」
「必ず。」
「お知らせくださいませ。」
「うん。」
「マヨネーズも。」
「料理長?」
「まだ。」
「完成したとは思っておりません。」
「……。」
ココアが。
少し笑う。
「私も。」
「左様でございますか。」
「うん。」
「では。」
「続きは。」
「いつか。」
「うん。」
料理長が。
深く頭を下げた。
「お嬢。」
「?」
聞き覚えのある声。
「ガレス?」
「よお。」
「なんでいるの?」
「出てくって聞いたからな。」
「……。」
「これ。」
小さな箱を渡す。
「なに?」
「工具だ。」
「工具?」
「向こうで。」
「また変なもん作りたくなるだろ。」
「変じゃないよ。」
「はいはい。」
「ガレス。」
「なんだ?」
「ありがとう。」
「礼はいらねえ。」
「でも。」
「いいから。」
ガレスは。
ココアの頭へ。
手を伸ばしかけた。
止めた。
「……。」
ココアが。
一歩前へ出た。
頭を。
その手の下へ入れた。
「……お嬢。」
「なに?」
「そういうの。」
「ずるいぞ。」
「何が?」
「なんでもねえ。」
大きな手が。
ココアの頭を。
一度だけ。
くしゃりと撫でた。
「必要なもんがあったら。」
「言え。」
「うん。」
「作れるもんなら。」
「作ってやる。」
「うん。」
「作れねえもんなら。」
「?」
「一緒に考えてやる。」
「……。」
ココアが。
笑った。
「うん!」
◇
「ココア。」
最後に。
父が来た。
「お父様。」
「忘れ物は。」
「たぶんない。」
「たぶんか。」
「忘れてたら。」
「送って。」
「分かった。」
「お父様。」
「なんだ。」
「行ってきます。」
「……。」
一瞬。
父の顔が。
止まった。
「行ってきます、か。」
「だって。」
ココアが。
屋敷を見る。
「ここ。」
「私の家なんでしょ?」
「……。」
「お父様が。」
「言ったよ。」
『ここは。』
『お前の家だ。』
「だから。」
「さよならじゃなくて。」
「行ってきます。」
「……。」
父は。
しばらく。
何も言わなかった。
そして。
「そうか。」
一言。
ココアの頭へ。
大きな手を置いた。
「行ってこい。」
「うん。」
ココアが。
馬車へ乗る。
ヒルダ。
セバス。
続いて乗る。
扉が閉まる。
馬が。
ゆっくり歩き始める。
「……。」
窓から。
屋敷が見える。
父。
料理長。
ガレス。
使用人たち。
少しずつ。
小さくなる。
ココアは。
手を振った。
誰かが。
振り返した。
誰なのかは。
もう。
よく見えなかった。
◇
馬車の中。
ココアの膝には。
一冊の研究帳がある。
最初の空白へ。
羽根ペンを走らせた。
『新しい領地』
少し考える。
その下へ。
『まず知る』
「……よし。」
「ココア様。」
「なに?」
「まだ。」
「到着しておりませんぞ。」
「分かってる。」
「でしたら。」
「まずは景色をご覧になってはいかがですか。」
「見てるよ。」
「帳面しか。」
「ご覧になっておりませんが。」
「今から見る。」
ココアが。
窓へ顔を向ける。
知らない道。
知らない土地。
知らない人。
知らない暮らし。
領都を離れても。
魔力がなくても。
ココア・フォン・アルヴェインが。
昨日まで積み上げてきたものは。
何一つ。
失われてはいない。
そして。
父は。
それを知っていた。
だから。
新しい土地を与えた。
何もないから。
終わる場所ではない。
何があるのか。
これから知る場所。
六歳。
魔力量。
零。
ココア・フォン・アルヴェインの。
本当の領地開拓は。
ここから。
始まる。




