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十傑のひとり、喰らえるか?

──地下区画、第十三層。


リードに案内された先は、

腐臭と魔素が入り混じる薄暗い回廊だった。


壁が脈動している。

床には魔術式と呪詛の痕。

ここは明らかに“都市の表面”とは違う。


「ここが裏十傑の一角が陣取る区画──“歪牢わいろう”だ」


リードがつぶやく。


「奴はめったに人前に姿を見せねぇ。

でもお前が現れたことで、少しだけ興味を持ったらしい」


(……監視されてたか)


当然だ。

あの魔獣を潰した時点で、

この街の“下”に響かないわけがない。


 



 


扉が音もなく開いた。


中にいたのは、

玉座のような椅子に斜めに座る一人の人物。


──全身を黒布で包み、

顔は仮面。

片手にはカップ、もう片手には杖。


喋らない。動かない。

ただ、こちらを“見ている”。


 


(……こいつが?)


リードが小声で言う。


「“断罪者だんざいしゃハリエット”。裏十傑・第六位。

罪を喰らい、呪いを喰らい、今や何を喰っても飢えが満たされねぇ」


 


沈黙が落ちる。


やがて──


ハリエットが口を開いた。


 


「……“喰らう者”、リュカ」


「お前の名前、聞いてないが?」


仮面の奥から

カラカラとした笑い声。


「私たちの世界には、名前の届く範囲がある。

“喰らった痕跡”が多すぎて、君の名はもう、ここまで届いてきたのさ」


 


「──それで? 会いに来たのは俺だが、あんたは何がしたい」


 


「試すだけだよ。

 君が“こっち側”の怪物になれるのか、ね」


 


その瞬間。


空間が歪んだ。


呪詛。封印。再生。毒。精神干渉──

あらゆる属性の“スキル”が、部屋中に重なって襲いかかる。


 


(ッ──!)


俺は右手をかざし、

魔素吸収を展開。


一部は喰らい、一部は跳躍で躱し、

強化骨格で突破。


だが、全部は対処できない。


視界が、揺らぐ。


 


「──そうそう、君はまだ“まとも”だった」


ハリエットの声が遠くなる。


「だから、“こっち側”に来るには……もう一段、喰らわないとね」


 


ズズズ……


床が消える。

世界が反転する。


俺の身体は、

重力も空間も無視して、黒い底へ落ちていった。


 


(落ちる──?)


違う。

これは“落とされた”んじゃない。


 


──“試されてる”。


こっから先が、“裏十傑”の世界だ。


まともな奴なんて、一人もいない。


 


(面白ぇ)


 


落下しながら、俺は拳を握った。


「なら──その底ごと、喰らってやるよ」


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