異界(バグ)にて喰らう
──視界が反転し続ける。
どこまでも暗い。
色も、重力も、言葉も──
すべてが“定義されていない”世界。
これは“空間”じゃない。
“バグ”だ。
──何かが、ぶつぶつとささやいている。
言葉じゃない。
記号でもない。
感情の残滓のような、“音”だけが届く。
(……俺はどこにいる?)
答えはない。
けれど──
一つだけ確信していた。
これは“裏十傑”が造った世界。
あの断罪者ハリエットが、俺に向けて用意した
“理解不能の牢獄”だ。
──ガキィン!!
何かが落ちてきた。
二本脚。人型。
けれど目がない。口もない。指だけが異様に多い。
そしてそいつは、
“お前は喰う側じゃない”とでも言いたげに、
俺の胸に爪を突き立ててきた。
(チッ……)
その瞬間、
心臓に“恐怖”のような衝動が走る。
だが──
「──誰が、喰われる側だって?」
【神気鎧装】【跳躍強化】【強化骨格】【断裂跳躍】
俺はまとめて全展開し、
異形の胸を貫いた。
ズドォォン!!
爆裂。
異形は正体不明の液体を吐きながら、
バラバラに砕けて消えた。
【スキル:空間干渉耐性(微)】を獲得しました。
【スキル:情動感知・初級】を獲得しました。
──つまりここは、
喰える。
「この空間ごと──食卓ってわけだな」
異界の空に、もう一つ、何かが落ちてくる。
次は“異形の神官”。
その背には剣のような十字架。
喉が4つに裂けていて、
絶え間なく“祈り”を流し続けている。
言葉じゃない。
概念そのものを“刷り込む”祈り。
(効くかよ)
俺は、
異形の祈りを真正面から浴びたまま──
喰らう準備をした。
◇
「やれやれ……本当に、面白い子だ」
どこか遠くで、
仮面の声が笑っていた。
断罪者ハリエット。
裏十傑・第六位。
これは彼女の“眷属”──
その一部であり、思考であり、試験である。
(つまり──)
この異界すべてが、
“喰える相手”だってことだ。
「落としたなら──這い上がるだけだろ?」
拳を握る。
「喰って、這い上がって──
あんたらの“上”に立ってやるよ」
暗闇が、蠢いた。
異形たちが、数を増やして這い寄ってくる。
俺は笑った。
「全員、残さず──いただきます」




