この力は、まだ始まりにすぎない
──あの日。
神に見捨てられた世界で、
俺はすべてを失った。
家族も、居場所も、
生きる意味さえも──
けれど今、
この手には“すべてを奪い返す力”がある。
──【奪取】(だっしゅ)──
スキルも、ステータスも、魔法も、存在すらも。
喰らい、奪い、俺のモノにする。
だからもう──
止まらない。
止まる理由がない。
◇
奪ったのは、神の加護を受けた聖騎士のスキル。
“神気鎧装”──
神の力を身に宿し、己の肉体ごと聖なる武装へと昇華する超位スキル。
それを、俺が喰らった。
神から見捨てられたはずの俺が。
神の寵愛を、力ごと奪い取った。
「……なるほど。こいつが“神の力”か」
全身に満ちる、
澄みきったようで、どこか異物めいた魔力。
浄化属性──それは、本来“俺のような存在”を焼き尽くすはずの力。
けれど俺は逆だ。
飲み込んで、染めて、我が物とした。
「お前らの神の加護、全部こうして喰らってやるよ」
そう呟いた瞬間、
周囲にいた聖騎士団の残党たちは戦意を喪失していた。
神気鎧装を纏って暴れていた“主”を、
目の前で喰われたんだ。無理もない。
だが──
「震えてるだけじゃ許さねえぞ」
俺の眼前で震える者たちに、
一歩ずつ近づく。
「お前ら全員──あの時、見てたよな?」
あの瞬間。
俺が“生贄”にされていた時、
誰も止めようとしなかった。
誰も見ようとしなかった。
傍観した者も、笑っていた者も、
全員、同罪だ。
──だから喰らう。
一人残らず。
◇
数分後。
あたりは静寂に包まれていた。
誰一人として立っていない。
そこにいた全員、
俺の“糧”になった。
【神気鎧装】──
浄化属性
高位結界耐性
対魔抗性(高)
取得完了。
そして。
もう一つ、通知が現れる。
──【神性値:1】を獲得しました。
「……なんだこれは」
聞き慣れない文言。
神性値?
これは、まさか……
(“神”に近づくための、指標か?)
自分が“神”から切り捨てられた側なら、
いっそ──
“神”を奪ってやる。
(その頂に、俺が立つ)
ゆっくりと、
空を見上げた。
「次は……神殿街だな」
神に選ばれし都市。
神の加護が最も色濃く残る場所。
そこには、
次の“獲物”がいる。
──【神官長アグラ】
神聖魔法の権化。神の代理人を名乗る存在。
そいつを喰らう。
その権威ごと、全部──喰らいつくす。




