這い上がる者
血に濡れた地面に膝をつきながら、
俺は、なおも拳を握りしめた。
ズキズキと痛む体。
流れる血。
途切れかける意識。
だが──
(まだだ……)
心だけは折れていなかった。
(こんなところで、終わるわけがねぇ……!)
俺は、世界を壊すためにここまで来た。
偽りの信仰を、腐った支配を、
全部叩き潰すために。
──そのために。
俺には、この手に宿るスキルがある。
≪スキル【強奪】≫
今まで奪ってきた力。
無数の命と、無数のスキルと、無数の想い。
(……全部、俺の中にある)
なら。
ここで終わるわけがない。
──
ギリッ、と歯を食いしばる。
拳を地面に叩きつけ、立ち上がる。
そして、
心の底から、叫んだ。
「全部──奪い尽くしてやるよ!!!」
瞬間。
俺の中で、何かが弾けた。
ズズズズズズッ……!!
今までの【強奪】とは違う。
暴力的なまでの吸収欲求。
無差別なまでの侵食。
──覚醒。
【強奪・進化系統:《完全吸収》発動】
周囲の空間そのものが、
俺の支配下に置かれる。
──
目の前の使者が、初めてわずかに動揺した。
「……っ」
無機質な声に、わずかな焦りが滲む。
(……そうだ)
俺はゆっくりと、踏み出した。
重力すらもねじ曲げるような、圧倒的な吸引力を纏って。
「──今度は、俺の番だ」
ズズズズズッ!!!
一歩進むごとに、
使者の周囲の空間が軋み、引き寄せられていく。
(もう、止まらねぇ)
あの日、絶望の淵で誓った。
何もかも奪い取り、
この世界すべてをぶち壊すと。
──
次回、管理機構使者との決戦。
這い上がった者の、逆襲が始まる。




