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012:温泉は遠い

気になって近づこうとしたら、首根っこをつかまれて猫の子の様に持ち上げられました。



「また勝手にお前は、何してる? 大人しくできないなら、宿屋に帰るぞ。」


飽きれたような、面白がるような口調で問いかけるシン。



「違うよ。あそこに女の子がいるんだもん。何か探してるみたいだから、手伝ってあげようかなって言う親切心だもん。」



そう言って彼女がいる方角を指さすと、メニラさんがチラリと視線をよこしたあと、


「あぁ、あいつはこの辺りに住んでるドロテアって娘だよ。確か16になるかならないかじゃなかったか? 母親と二人暮らしみたいだが、その母親が働けなくてちょっとした仕事をしながら、生活しているんだが苦しいらしい。この辺の食べられる野草を摘んでるらしいが、まぁ、あんまり関わるなよ。」



そう言ってさっさと(きびす)を返してしまった。


「そう言う事みたいなので、坊ちゃん行きますよ。」


シンもわざとらしい口調で私にそう言うと、首をつかんだままメニラに付いて行こうとするので少し暴れるそぶりをすると耳元で、



「そろそろじいさんが戻って来るみたいだぞ。」



この言葉に私の動きはピタッと止まった。ぐぬぅぬぅ…… どんどん扱いがうまくなっている。喉の奥でクツクツ笑うシンを恨めしく睨みつけながら私はその場を後にした。






 


「山じぃ、あんたにお客さん。」


思ったより早めに帰ってきていたらしい。だいぶ小柄なご老人で、70代ぐらい? 好好爺ってこんな感じかなというおじいちゃんだった。



「初めまして、ウルといいます。おじいさんに訪ねたいことがありまして」


「はい、こんにちは。ミングクと言うが、皆は山じぃゆうで好きな方で呼べばいい。ほっほっほ、こんな老いぼれに何の用かいね?お嬢さん。」


「お嬢さんじゃないんだけど、それなら山じぃ、この辺でまだ活動してる山はある? 」



「おぉ、あるよ~。ここからじぃの足で2時間ぐらいかね~。」



思いのほか近い?これで温泉当てられるかも。なんて思っていたら落とし穴…。



「じぃの足で2時間って大人の男で3~4時間ってことかや? 遠いっちゃ。」


メニラさんが横から返事をしていた。どういう事かと言う顔をしていたのだろう。シンが、


「山道歩かせたら、誰もこのじいさんに勝てないんだよ。そのくらい歩くのが早い。」



マジか、明日の昼過ぎまでに何とかなる問題ではなかったらしいので、計画の練り直しだな。帰ってからもう一度、父様とも話し合わないと。



大体の場所を地図を書いて教えてもらい、その日は解散してシンと宿に帰ることにした。思った以上に収穫もあったが、日ごろの運動不足がたたっているみたいだ。そろそろ足が限界――。



そう思っていた時、ひょいッと抱えあげられた。慌てて目の前のものにしがみ付く。

文句を言おうと口を開きかけたその時、


「お前の足に合わせてたら日が沈む。もうすぐそこだから、このまま行くぞ。」



確かにさっきよりスピードが速い。今まで私の歩幅に合わせて、歩いてくれていたらしいと言う事に、気づいてちょっと申し訳なく思った。身を(ゆだ)ねているといつのまにか寝ていたらしい。目が覚めると、自分の宿屋の布団の中だった。



外はまだ暗かったがスッキリ目覚めてしまった。そして主張する腹の虫グゥ~キュルキュル

布団から起き出し、宿屋の一階を目指す。静かに階段を下りていくと、明かりが漏れている部屋が一つ。



デジャヴ? そっと近づいて中を覗き込むと、お酒を飲みながら話している男性二人の後ろ姿。シンとメニラだ。


「お前がこの町に帰ってきた日、ジンが帰ってきたのかと錯覚するぐらい、お前がそっくりだったっておふくろが言ってたよ。」



「ろくでなしの血は、やっぱりろくでなしだったって?」


「シン、お前の親父さんだって好きでお前たちを置いて行ったわけじゃない。」


「それでも、結果はこの(ざま)だ。待ち続けたおふくろは体を壊して、あっけなく行っちまって俺たちはスラム落ち。あの方に救い上げてもらえてなかったら、落ちるとこまで落ちてただろうさ。」



「お前は親父さんとは違うよ。優しい男だ。」


そう言ってメニラはシンの肩をグイっと寄せてお酒をあおる様に飲んだ。



「お前、それは俺のグラスだ。たくっ、おばん!おかわり。」


お互い解っているような掛け合いだった。私は少し寂しい気持ちになりながらその場を後にしようとしたが、お腹が許してくれなかった。

ぎゅるるるる~きゅる~・・・



後ろを見ると2人とバッチリ目が合った後、大笑いされ先ほどの空気は完全に払しょくされた。

恥ずかしくて、顔が赤くなっているとはわかっているが、背に腹は代えられないと食堂の扉を開けて席につきメラさんの作ってくれたおいしい夕食を堪能してその日は終了した。



お風呂は、よっぽどお金持ちか高級宿にしか備わってないので、クリーンの魔法で清めてから寝るらしい。


物理的にはキレイになってるの分かっているけど、やっぱりお湯につかりたい~。

絶対、数か月この町に滞在できるように、父様との交渉を胸に誓い眠りについた。


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