011:まずは水下さい。
本日晴天なり。
今日から本格的に調査開始だ。と言っても、明日の昼過ぎにはいったん帰らないと父様が許さないらしい。
時間が限られているので朝食をはやばや済ませて、さっそく鉱山に出発した。
ちなみに、鉱山とは鉱物が取れる山の事を言ってるんだと最初は思ってたんだけど、実は、鉱物が取れるように開拓した場所や作業ができるようにしている事業場を鉱山って言うらしい……
鉱山ってどんな山なんですか?って聞いたら、きょとん顔されて、説明聞いた後、すごい恥ずかしかったのはいい思い出だ。
宿を出て馬車に揺られる事40分。採掘場についた。ここはまだ現役の採掘場らしく、朝からみんな大忙しそうだった。
「それはそっちじゃねぇって言っただろうが、バカ野郎が、思いから慎重に運べよ。怪我したら承知しねぇからな。」
言葉は荒いけど優しいな~。顔も怖いけど、
「おはようございます。ちょっと聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
忙しい時にすみませんと醸し出しながら声をかけたのだが、
「バカ野郎、誰だ採掘場にガキ連れ込んだ奴はぁ!あぶねぇから、隅の方で見てろぃ。あと10分したらいったん休憩だ。わかったかぁ。」
強面おにぃちゃんはそう言うと10分後にちゃんと時間を取ってくれた。追い出されなくてよかった。
「で? どういう了見で、こんな危ないとこに子どもなんぞ連れ込んでんだ。シン‼」
知り合いですかそうですか。早く教えて欲しかった。
「久しぶりだな、メニラ。まだこんな、しみったれた町にいたのかよ。」
「この町から出て行ったお前に、どうこう言われる筋合いはない。」
あらあら? 険悪な感じ? 同郷なんだから仲良くしようよ。
2人の間に不穏な空気が漂い出したのでここで本題。
「ごめんなさい。忙しいところ、本来ならしっかり連絡を入れてくる予定だったんですがお詫びします。」
「まぁ、来ちまったもんはしょうがない。で? 用件は?」
「お尋ねしたいことがありまして、採掘場の中に水溜りが出来ているところはありませんか? 出来てたら、その水、持って帰ってもいいですか? それから、この辺の地形に詳しい人紹介してください。」
「おッ、おう、水なら雨が降るたびに中に入ってきて一か所、水だらけの場所があるから、好きなだけ持って行け。あとで案内する。この辺の地形だったか? それならこの辺りの山を散歩コースにしてる爺さんがいるが、今日はちょうど昨日から登りに出かけてて、帰ってくるのは夕方じゃなかったか?」
夕方までに帰ってくるのなら、まだいいだろう。先に水の分析などをしていれば最高のタイミングかもしれない。先に水を汲みに行かせてもらおう。
「で、嬢ちゃんどのくらいの量、水がいるんだ? あそこは滑りやすいし、水溜りって言っても池ぐらいの量はある。あぶねぇーから、何なら俺が取ってきてやる。だから、待っときな。」
やっぱり優しい親方さんだね~
「申し出はありがたいけど、欲しい水の量が20万ℓだから無理だと思う。」
となりで聞いてたシンも口をあんぐりと開けていた。だからこそ、ここに来る前に一生懸命、水を持って帰れる魔法陣を開発したのだ。
親方さん事メニラさんは、宿屋のメラさんの息子さんだった。筋骨隆々だったため、宿の仕事よりこちらの方が性に合ってたらしい。シンより少し年上の28歳だ。
昔はシンと一緒にやんちゃくれしてたらしいのだが、みんなが出て行く中、ここに残る選択をしたらしい。
「俺は、この町に人に育ててもらったから、恩返しがしたいんだ。これしか思いつかなかったから、残ってるって言うだけの話だ。」
採掘の穴を下へ下へと下りていく。棒の先にダイヤを加工した明かりを手にしていた。
ダイヤの中の魔力がなくなると明かりは消えるが、また補充すれば何度も使える再生エネルギーだ。
数に限りがあるとはいえ、この世界はダイヤでエネルギーを回しているみたいだ。プリモールが開発した蒸気機関の燃料もダイヤで動いている。もちろんそれなりの魔力を補充しなければならないが、半永久に動く。街の明かりから、冷暖房の原動力、街を走る馬車の動力もダイヤだった。ダイヤモンド万能かよ。
ただ一つだけ、コンロの燃料には使えなかった。炭素だからね!燃やしたら燃えてなくなります。
それ以外の動力にダイヤは欠かせない、それなのに資源は有限。無限に湧く訳ではない。
魔法がある世界は科学が発達しない。もしかしたら、私の元居た世界は科学が発達したから魔法が無くなったのか? なんてね~。
そんなことを考えているうちに、到着したらしい。
地底湖と言ってもいいくらいの水が溜まっていた。シンにお願いしてまずは少量水を掬ってもらった。
「どうするつもりだ?」
興味津々に二人してのぞき込んでくる。ちょっと面白い
「コホン、それでは、ここにありますのは旅の時に重宝する水袋。何の変哲もないただの水袋ですが、これに今からこの水を少し入れます。そうすると何が起こるかはお楽しみ。ただ注意事項が、身を乗り出すのはおやめ下さい。それではご両人とくとご覧あれ」
そういってシンに掬ってもらった水を水袋の中に入れると、あらあら不思議。湖の水が勝手に袋の中へ入ってくる。
「ウル、これどうなってる。」
「フフフ、これ呼水って言ってこの水袋には同じ成分の水を呼び込む魔法陣を刻んだあるんだよ。それから、重量軽減、亜空間にも繋いだかな。均衡を保たせるのに苦労しました。でも、持ち運びに便利でしょう。」
そういった私に2人の顔が引きつっていたような気がする。気のせいか?
水を飲みこむのに時間がかかったので次は転移の紋様を刻んで時間短縮を図ろう。次の課題ができたな。でもとりあえず、ミッションは完了したと言う事でまた三人で元来た道を帰っていった。
地上につくと、夕方に差し掛かろうという時間だった。意外とかかったな~と思いながらふっと目線の端に何か動くものを捉えた。何だろうと気になりそちらに向かうと、しゃがみ込みながら
「ぶつぶつ……、これも食べられない。あッ… 違った、これもダメ、」
その辺に生えている草を、触っては食べられない、これはダメと言ってる女の子がいた。良い例えをするとスレンダー、しかしあまりにも痩せすぎている少女。
彼女の名前は【ドロテア】、後にわかるのだが、彼女はこの再生計画に、なくてはならない人物になるのだが、この時の私はまだ知らない。




