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010:宝石の役割

お互い案内された部屋でしばらくの間、腰を落ち着けたあと、今日はあまり遠くまではいけないので宿屋の近所を散策することにした。その間、シンは夜までには帰ると言って出かけて行った。



馬車が通る程度はどの町も舗装されている。基本的にはアスファルトなどないのでレンガだ。


土魔法が得意な人間がレンガ職人になり、風魔法が得意な人たちが並べる。

魔力はいるが人力はあまり必要ないので便利そうだが、もっと色々ありそうな気がするのは、現代の便利さを知っているからだろうな~と考える。



あてもなくフラフラしていると、大きな広場に出た。昔は賑わっていたであろう名残がそこかしこに(うかが)える。シャッター街だ。



よく見てみると、一軒だけ開いていた。宝石の原石を扱っているお店みたいだ。中へ入ってみた。少し埃っぽかったが、いろいろな原石が置いてある。もちろん削りださないといけないのだろうが、原石には原石の美しさがあった。一番多く置いてあるのは、ダイヤモンドだ。




夢中で眺めていたため、人がいることに気づかなかった。びっくりして、思わず


「勝手にごめんなさい。」


というと店主は、


「ここは店なんだから、物取りじゃなければ好きなだけ見て行けばいい。」


そんな風にぶっきらぼうに言葉が返ってきた。それでは遠慮なくとまた原石を眺め出す。


「質問してもいいですか?」


「わしで解ることならな。」


「どうして、ここは原石しか置いてないんですか?」


「自分たちで加工して使いたいという魔法使いが買いに来るからだよ。」


「わざわざ自分たちで加工しなくてもお願いして削ってもらった方がよくないですか?」


「削りだす時に出る粉をインクに溶いて、魔法陣を書く時の触媒にするから、できる人間は自分で加工した方が無駄がない。」



えっ! 触媒? 私の宝石の概念と違った。



「なら削り出した宝石の方も装飾品じゃなくて別の意味があるの?」



「ほぼ御貴族様が使うことが多いからな、宝石は魔法陣を刻んだり、その効果のある魔力を込めたりして護身用に皆、身に着ける装飾品として持っているが…… お前さん、あれらを皆がお洒落で持っていると思っていたのかい? 」




誰でも知っているのにみたいな空気がいたたまれなかったが、開き直るしかない。知らなかったんだもん。



でも、私の知ってる宝石、特にダイヤモンドは何かほかの物質が入り込む構造してないんだけど、どうしよう…。


そんな感じで頭を抱え込んでいると、店の奥からおじさんが箱を抱えながら出てきた。



「こっちにおいで、」



おじさんの居るカウンターのところまで足を運ぶと、そこには加工されている宝石がきれいに、正方形の枠に種類別に納められていた。



「キレイ、職人技だね~。」



瓶に入っている粉末も持ってきてくれた。



「ここいらも若いのがいなくなったから、子どもの数が減った。昔はお前さんみたいにみんなキラキラした目で眺めていたものだよ。好きなだけ見ていきなさい。わしは奥にいるから何かあったら呼びなさい。」



そういっておじさんは奥に引っ込んだ。



さっそくいろいろな角度から宝石を眺めたが、見た目には何ら変わらない宝石だ。私は自分の瞳に魔力を集中させて変換させた。



これ、覚えるまで本当に大変だった。成分の分析機能、俗にいう鑑定だ。初めの頃は使うとすべてが鑑定されて情報過多で目を回していた。気分は悪くなるし、頭痛はするしでここまで持って行くまでの苦労は語りだしたらすごいことになりそうなので、割愛しよう。



純粋なダイアモンドらしきものに標準を当ててみる。

名称:【ダイヤモンド 小 】

成分:【C+?】

効果:【特になし】



ダイヤモンドの成分は炭素。そこに【+?】があると言う事はこれが魔力なのかな?

私の鑑定は、基本 知っている成分が入っている時には表示されるが、未知の場合【?】で表示される。



あとは、自分で実験しながら【?】が何の成分なのか検証していくしかない。地道な作業だが、私にはこれがたまらないのだ。効果が特にないと言う事はまだ何の魔力も入れていない純粋なダイヤと言う事だろうか?あぁ、知りたい。



他の宝石も全部鑑定にかけて、メモしていく。思いのほか時間がたっていたみたいだ。窓から見える外が暗くなり始めている。シンに怒られる。



「おじさん、ありがとうございました。」



店の奥に向かって声をかけるとおじさんが出てきた。



「もういいのか?」


「はい、連れがいるのであんまり遅くなると怒られそうです。」


そう言うと、おじさんは粉末の入った瓶を私に手渡した。


「これはそんなに高いものではないから、お前さんが持って行きなさい。こんな古び店で朽ちていくより活用してもらった方がいいだろう。」



「それならお金払います。」



そういった私に、おじさんは首を横に振り。久しぶりの客が嬉しかったのだと言った。魔法使いたちは必要な物だけ買ったらすぐに帰っていく。子供も巣立って奥さんに先立たれて、こんなに話したのは久しぶりだった。ありがとうの気持ちだから持って行きなさいと言った。




気持ちを無下にすることはできないので私は遠慮なくもらうことにした。その代わりおじさんに宣言する。



「おじさん、ちょっと待っててね。おじさんがびっくりするぐらいこの町を賑わせるから。」


「期待しないで待ってるよ。」



その言葉を背に私は店を後にした。見てろよ~。目ん玉飛び出るぐらい、忙しくさせてやる。

決意を胸に宿屋に帰った私を待っていたのは超特大な雷だった。


何故だ解せぬ‼

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