ルグシャ2
私は、猿王さんの家を午後に辞します。外には、子供を抱えた猿族のお母さん、猿王さんのように、未だ包帯をしている猿族の方も多くいます。私、この方達に出来ることを思いつきました・・・。
急ぎ足で、荒れ地を戻ります。そしてアルシュ南北街道にでる分かれ道を、前回同様 ”間違った方” に進みます。すっかり暗くなった山道を急ぎ進み、なんとか癒しの水場にたどり着きました。
「間に合ったかしら? まだ年は明けてないわよね・・・?」
焚火をおこし、水場の前で供物を捧げ魔法陣を描き、四魔慰撫を行います。
「古の盟約に従い地に住まう地主神よ、時を告げる四魔の大いなる働きにより、この1年、日巡りが乱れることなく無事過ごせたこと、感謝を申し上げます。来年もまた、新たなる日巡りのもと、大いなる働きが続きますよう、お願い申し上げます・・・」
そう唱え、私は、えい! と気合を入れ、
ざぱ~ん! ひぃ~!
清めのため、癒しの水を頭から被ります。
「こ、これから、ま、舞、を奉納、させて、いただきます・・・」
さ、寒い・・・。水被ったのは失敗だったかしら~!
・・・・・・・・・
私は、舞を行わず、ずぶ濡れの体でただ立って待ち続けます。まだよ、さ、寒い・・・。まだ、我慢。う~っ、まだ・・・、来た!
それは、ザルード家で寿ぎの舞を行ったときに出会った、小さな喜びの玉、それが僅かですが水場から顔を覗かせます・・・。
「奉納舞、ご照覧あれ!」
気を取り直し、自分の体を繋ぎ変えて、小さな喜びの玉を誘うように舞い始めます。最初はおっかなびっくり顔を出していた者たちも、舞が進むにつれ次々と水場から飛び出してきます。
(今日は、夜通し舞うのよ! 皆、よろしく・・・)
私は、猿王さんをはじめ、先ほどの街でみた多くの猿たち、そして、この水場の先に続く古戦場に思いを馳せ、足の動き、手の動きを丁寧に感じます。
やがて、踵から押し上げる勢いが生まれ、足から腰へ、そして腕から手へ。そして、夜空へと勢いを伝えていきます。
一足ごとに、足は軽くなり、まるで綿毛のよう。もう私の足ではないみたい。
体は、小さな喜びの玉に包まれ、目に見えない流れを捉えると、ただその流れに自分の動きを添わせます。
次第に、肘先や両脇から翼が生えたように感じます。もはや自分の形が、人なのか鳥なのか分かりません。舞を続けながら、ただ思いを馳せます・・・。
喜びの玉よ、癒しの水よ、必要な方の所に届いて欲しい、それが我が願い・・・。地主神、天空の神々、龍神よ、どうか、聞し召し給へ・・・。
気が付くと、空がしらじらとしてきます。一晩舞続けたのね・・・。
へなへなと崩れる私でした・・・。




