ルグシャ1
翌日、裏庭の大穴埋め戻し監視役を、リムさんに代わってもらいました。それだけで、胸のつかえがすっと取れた気がします。リムさんに不満でもあったのかしら・・・?
私は、賑わう街道を東に向け急ぎ足で出発します。
そして、バーキルで方向を転じ、旧街道を北上しました。1本の道標は、常にルグシャの方向を指し示しています。そうして、ルグシャに入ったのは、もう年の瀬。
こっちでいいのよね・・・?
私は、道標に導かれるまま、ルグシャの東のはずれ、荒れ地を進みます。そして、ようやく猿族の街が見えてきます。こんな寂しい場所にあったなんて・・・。
やがて、道標は一軒の粗末な家の前で終わりを告げます。
「こんにちは、誰かいらっしゃいますか?」
その声に、周りからたくさんの猿族の人達が寄ってきます。
えっと、囲まれるとちょっと怖いかも・・・。
「どうぞ、お入りください・・・」
中から声がするので、ホッとして入ります。すると中には猿王さん、加減が悪いのか包帯を巻いて寝床から起き上がります・・・。
「こんな様子で申し訳ない・・・」
「いいえ、私の方こそ急にお邪魔してすみません」
人を呼べるような家ではないので、お茶もお出しできない、とおっしゃる猿王さん。家具もないあばら家。何故か、胸が押しつぶされそうな気持に・・・。
無理に座ろうとするのを、そのままでどうぞ、と押しとどめ、訪問の理由をお伝えします。すると猿王さん、知っている事で良ければ、と助言を下さいます、
「北の土着神と手打ちをして、井戸を掘る手伝いをなされよ・・・」
「・・・はい?」
「その昔、ユミルはアルシュとの戦に勝利しました。その時、土着神を封じるようアルシュに迫り、地下に追いやったのです。北の土着神は、井戸を掘る技術を持っております・・・」
「・・・?」
もちろん、ただの井戸ではありませんぞ、と力なく笑う猿王さん・・・。
「その井戸は、地主神の館に通じ、そこから女神様のいる天空に繋がっている、と言われています。土着神が井戸を掘り、その周りで貴方が舞えば、願いは天に必ず通じます」
「はい・・・」
「女神様を通じて、祈りを大地に届けてもらえば、豊かな土地が甦りましょう」
さすれば、飢えの心配もなくなります。猿王さん、静かに語り終えました・・・。
「ご助言ありがとうございます。私、猿王さんにしてあげられる事ありますか?」
「では、ひとつ頼めますかな?」
そう言って、そこの包みを藩王ルドラさんに届けて欲しい、とおっしゃいます。
私は、これからルドラさんに会うのです、と言って喜んで荷物を引き受けました。




