代償
ここは、パルバク王国、王国軍と猿王率いる猿族が侵攻軍を退けた戦場です・・・。
キーッ、キーッ、キーッ!
夕日に染まった戦場、ひと際大きな猿の叫び声が響きます・・・。
それを合図に、散らばっていた猿族兵士たち、帰り支度を始めます。中には傷を負ったもの、仲間に背負われている者も多くいます。
「あ、待ってくれないか・・・」
せめて礼を言わせて欲しい、と声を掛けるザルード元大公達。しかし、猿族兵士たち、その声が耳に届かないのか、動きを止めようとはしません。やがて、波が引くように撤退していきます。
「指揮官殿は何処?」
確か、大軍の先頭に立ち龍爪の旗を持った者がいたはずだ。ザルード元大公、周囲を見渡します・・・。
「義祖父様、あれを・・・」
孫の嫁御に指摘された方を見ると、遠くで数人の猿族兵士、布を被せた戸板を運んでいます・・・。
「まさか・・・」
ザルード元大公、思わず駆け寄ります。その前を横切る戸板、血染めの龍爪の旗に体を覆われた猿王、大丈夫です、まだ生きていました・・・。
「御身の怪我の具合は?」
「なに、少し不覚を取っただけ。これから、国元へ兵士達を帰さねばならぬ。無礼を許されよ・・・」
そう答えながら運ばれていく姿に、片膝着きで首を垂れます。それに続く、ザルード家一行。そして、王国軍兵士達。最後の一人が戦場を離れるまで。
戦場の夕日、去り行く者に寄り添うように色を落としていました・・・。
・・・・・・・
こちら南北街道。隣国から、ユミル国境へ避難民が溢れかえっています・・・。
「避難されて来た方、こちらにどうぞ・・・」
街道脇にいくつもの簡易振る舞い小屋。大鍋で作った暖かい食事が出されます。荷物を運んできた者、着の身着のままで逃げてきた者、家族連れ・・・、皆ほっと一安心です。
猿王殿から、あらかじめ警告を受けていた宰相殿と大臣殿。国境付近の警戒を強めつつ、避難民の対処をしつつ戦況報告を待ちます。
そして、まだ夜が明けきらぬ頃、ようやくアサラ宮殿に、侵攻軍撤退の連絡が届きました・・・。
「よし、まずは勝利だ! しかし、避難民も押し寄せている。隣国から食料援助の要請もくるだろう。来年の作付けにも影響が出る。心して、これを乗り切らねば・・・!」
隣国との交渉、どう進めるか? 宰相殿と大臣殿、早朝に打ち合わせを重ねます。
その数日後、アサラ宮殿に、猿王殿の負傷が伝えられました・・・。
次回、後始末、です。




