戦いの後
深夜、パルバク侵攻失敗の報がアルシュ宮殿に伝わります。アルシュ若手将校、駐留ザム軍も浮足立ちます。
アルシュに駐在していた将軍、髭を撫でつけながらその報告を聞くと、ザム軍1万を率いて即座に撤退します。その鮮やかな引き際、あっけにとられる程です・・・。
武官イルーガ殿、逃げ惑う人々を叱咤して、宮殿に立てこもりを図ろうとします。しかし、翌朝には誰もいなくなってしまいます。
無人の宮殿、王の間に佇む武官イルーガ殿・・・。踵を返し出て行こうとする彼に、一人の人物が声を掛けます、
「あら、随分とあっけなかったわね。僅か3日天下かしら?」
「・・・」
「国王陛下の安全は確保したわ。目を瞑ってあげるから、ザムにでも逃げなさい・・・」
「何故だ?」
武官イルーガ殿は力なく尋ねます。
「あら、大事な甥っ子なのよ。情けぐらい掛けるわよ」
「俺が、苦労している間、うまく立ち回りやがった癖に!」
「そうね、時流の見極めが上手くいったからかしら。でも過去を引きずるのは良くないわね・・・」
藩王ルドラ殿、静かに部屋を出ていきます。崩れ落ち小刻みに体を震わせるイルーガ殿を残して・・・。
・・・・・・・・・
一方、こちらザムとユミルの北西国境にある険しい山々。その一角、高くそびえたつ岩棚に小さな神殿があります。ビュービューと冷たい風が吹きすさぶなか、その前に突然立っている私・・・。
「おお、お待ちしておりました。必ずやお見えになると言われ半信半疑でしたが・・・」
そう言って、迎えてくれたのは白いローブを着た三人の男達、真ん中の男は禿頭です。
「ここは何処ですか?」
「ザムとユミルの国境にある、神殿の修行道場ですよ。龍巫女様・・・」
石室で龍の浮彫に指輪を当てたら、私はこんなところ迄飛ばされてきたのね。それにしてもこの方達、どうして私の事を知っているのかしら?
「残念ながら、貴方様の探している方は、先日旅立ちになられたばかりでして・・・」
貴方様によろしく伝えて欲しいと言伝を預かっています・・・。
(探している方? 誰の事?)
そこへ、見覚えのある二人の巫女が、私の前に跪きました。
「龍巫女様、ここにいる巫女達で歓迎させていただきます」
こちらへ、と案内された洞窟の入り口の上には、龍の浮彫が飾られていました。山向こうには雪に覆われ白く輝く山、どこかで見た事がある風景です・・・。
洞窟で私が体験した出来事、いずれ語るときが来ると思います。でも、今はこれにて・・・。




