武官イルーガの狂気
アルシュの街ケイガンで子供達を追い、赤龍と青龍に驚き逃げだした男達。パルバク王国に潜んでおりましたが、あえなく捕まります。そして、イルーガ武官のところまで連れ戻されます。
「お前達、自分のしたことはわかっているな!」
哀れな男達、痛めつけられ顔を下に向けます。
「二度と逃げられぬよう、片足の筋を切落としてやるか・・・」
「ま、待ってください」
青くなる男達・・・、
「じ、自分たちは、その、パルバク王国に、そう、情報収集に出かけていたのです・・・」
「ほう、どんな情報だ? 内容によっては、片足の代金にしてやろう」
イルーガ殿の脅しに震えながら、男が答えます。
「そ、その、ザルード大公が隠居届を出し、娘婿が跡を継ぐとか。任命式には例の孫夫婦も参列して王に謁見するそうです・・・」
「・・・ほう!」
イルーガ殿、その話を聞いた途端、背中で黒い影が蠢き始めます・・・。
・・・・・・・・・・
ここは、若手将校が集まるアルシュ軍部の一室です・・・・。
「陛下に、国王の座を降りていただく!」
「イルーガ殿、それはあまりに不遜です」
あまりに過激な計画!
イルーガ殿からその言葉を聞いた若手将校たち、口々に諫めます。
「諸君、既に動き出したのだ。この部屋にいる時点で、君たちはもう同罪だ!」
「どういう意味だ? まだ遅くない。今からでも考え直せ!」
突然、扉が乱暴に開かれ、ザムの軍事顧問たちが部屋に押し入って来ました。
そして、武器を若手将校たちに突きつける・・・。
「諸君、私の言う通り動いてもらおうか!」
・・・・・・・・・
今から半月程前、武官イルーガとザムの将軍殿は密談をしていました。
「魔兵の事は、お詫びします。だが、まさかあれ程使えないとは。武術大会で見た者とは雲泥の差だった、と物見から報告が上がっています」
将軍殿、髭を撫でつけながら、その言葉に苦い顔です。
「だが、死体で返されては話にならぬ。こちらも賠償を求めざるを得ん!」
「次は、まとまった数を用意していただきたい」
「君、無礼だぞ。分をわきまえよ!」
イルーガ殿の遠慮せぬ物言いに、思わず怒鳴る将軍。
「パルバク王国への侵攻を手伝って頂きたい。見返りにアルシュへの貴軍の駐留を許可する、と言ったら?」
「ふむ、面白い話ではある。しかし、本当に実現可能なのか・・・?」
将軍殿、疑わし気な様子ながら素早く胸算用を行います。窓の外は、あいにくの曇り空、暗雲が低くたれこめていました・・・。




