武官イルーガ
舞台は、昨日の夕方、アルシュ国に戻ります・・・。
こちら、ケイガンの街。探していた子供達を見つけたものの、赤龍と青龍に脅かされて逃げ出した男達。そのまま、街の反対側まで走り続けました。
「ま、まさか、追ってこないだろうな?」
「バ、バカ言え! 龍に睨まれたら終わりだぞ!」
「お、俺は、もう抜ける・・・。あんな化け物がいるとは聞いてない・・・」
肩で息をしながら、男達はその意見に賛成する・・・。
「だが、イルーガ様になんて報告する?」
「龍が出たなんて、下手な言い訳にもならねえ・・・」
「何も言わずに、逃げるか・・・?」
「・・・」
男達は、無言で頷きます・・・。
・・・・・・・・・・
その頃イルーガ殿、ザムの軍事顧問と共に、変わり果てた姿になった魔兵達を見ていました。国境近くの峡谷に打ち捨てられていたのを回収してきたとのこと。
物見の報告では、赤い騎士になす術なくやられたらしい・・・。
「さて、魔兵とはこれほどまでに弱い者でしたか?」
偽物だったのでは? と軍事顧問殿に仄めかすイルーガ殿。
「何を! そちらこそ、この者たちの補償をきっちりしてもらいます!」
「おや、何の冗談ですか? 魔兵とやらは確かに返しましたぞ! 死因をよく検分なされよ!」
騒いでいる軍事顧問殿を置いて、イルーガ殿、その場所を後にします。
赤い騎士は、その後ザルード大公と親しく会話をしていたとか。さては、ザルード家のお抱え騎士か・・・。
部屋に戻ると、ザルード家とグラナート家の婚姻は捨て置くように、という親書が陛下の名前で届いていました。
「大国に挟まれた小国の生きる道は、パルバクとユミルが争い続ける事こそ重要なのに、それが分からないとは愚かな・・・」
それにしても岳父殿よ、ザルードの娘にうつつを抜かし、妻と義母殿を置いてアルシュを出奔した後、俺がどれだけ大変な思いをしたか?
術師に魔物を用意させ、魔兵達に息子の花嫁を襲わせたのに、それをかいくぐったか! まあいい、15年前の恨みはいつかきっちり帰してやる・・・!
それから気になる報告がまだあった。ルドラが数年ぶりに宮殿に現れたという。これは聞き捨てならん・・・。一体奴は何を企んでいる?
「花嫁一行に接触したと思われるガキはどうした?」
「は、そちらはまだ連絡がありません」
魔兵といい、使えない奴らばかりだ。そう呟くイルーガ殿・・・。
夕日を受けて長く伸びるその影は、部屋の中でゆらゆらと生き物のように蠢いているのでした・・・。




